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結婚式で起きた小さな奇跡

どうも、にっしゃんです。

今日は4年前友人の結婚式で起きた小さな奇跡の話を書きたいと思います。

感動実話です。

こんな大変な時だからこそみなさんにこの話を読んでもらいたいと思います。それではどうぞ。


4年前。

高校時代のラグビー部の同級生が結婚する事になった。
僕を含めたラグビー部の6人は結婚式での余興を頼まれた。

僕たちは友人の結婚式を盛り上げたい、その一心で余興を引き受けた。

引き受けたはいいものの中々やる内容が決まらない。
そもそも6人でやれる余興はあんまりないし、しかも6人で集まれる日はあと1日しかないのである。

みんなが煮詰まった中、1人の男が口を開いた。

「この前会社の結婚式の余興でめっちゃスベったやつあるねんけど、それやらへん?」

常軌を逸した提案である。
一回めちゃくちゃにスベったやつをなぜやるのか。
ちなみに学生時代からの彼のあだ名は「変人」だった。

みんなが冷静な時ならば即却下である。
しかしこの「3万円払った挙句やらなければいけない芸を考える」という悪夢の時間から解放されたい状況では名案の様に思えてしまった。

そして余興は「会社の結婚式の余興でめっちゃスベったやつ」に決まった。

その内容は
「ラッツ&スターのめ組のひとを仮装して全力で踊りながら歌う」
というものだった。
今思えばいかにも危険な香りがする。

ちなみに知らない人のためにラッツ&スターの説明をしたいのだが色々と複雑なのでとりあえずイメージ図を置いておく。

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みんなで唯一集まれる日、動画を見て練習してみた。
しかしみんな上手く踊れない。
当日メイクをちゃんと出来る自信もない。

「はたしてこれでウケるのだろうか?」
全員が不安にかられる中、くわまん役のハゲた男が口を開いた。

「俺、白塗りなろか?」

ラッツ&スターに白塗りはいない。
安易な白塗りは大スベりの元だ。
それでも追い詰められた人間には名案に聞こえてしまう。

「5黒塗り1白塗り」というフォーメーションが誕生した。


結婚式当日。

控え室でメイクする全員が大笑いしていた。
お互いがお互いを見て笑い、空前の盛り上がりをみせていた。
鈴木雅之(さっきの写真の人)役の変人がこの歌の肝である「め!!!」をポーズを決めて叫ぶたびドーンと湧いた。

「出番前、身内で盛り上がってる時は気を付けろ」
昔、孔子が言ったとか言ってないとか。

白塗りが小さいラッパを手に取ってポーズを決めた。
ドーン!!また控え室が湧いた。
白塗りに小さいラッパ、今思えば圧巻のおもんなさである。


そして本番。

それではどうぞー!

意気揚々と舞台に飛び出た6人。

め組のひとの軽快なリズムが鳴り響く。

最初の山場がやってくる。

「渚まで 噂走るよ め!!!」

変人の渾身のめ!!!が決まった。

そして会場は静寂に包まれた。


いくつかのめ!!!を放ち会場に夜の海の様な静けさが訪れた後、白塗りのソロパートがやってきた。

白塗りのハゲが小さいラッパをコミカルに吹いている。
なぜだろうか。
絶妙におもしろくない。

そしてハゲは事前に決めていなかった「各テーブルをまわっていく」という動きを始めた。
この時ほどアドリブという言葉を憎んだ時はない。
僕は感じ取れた。
会場で膨れあがっていく悪意を。


「め!!!」

さいごのめ!!!が放たれ、地獄の5分間は終わりをつげた。
落胆と焦燥、様々な感情の中みんなの頭の中にある歌が流れた。
「違う違う、そうじゃない〜」


僕たちは経験した。

おめでたい場にいる全員の表情が一瞬にして憎悪に変わる。
人を喜ばせようとしたのにである。

こんな事が現実に起こるのだろうか。
これを奇跡と言わずして何と言おうか。

そして新郎のお父さんが出番が終わった僕らの控え室に来てまた奇跡が起こる。

お父さんは部屋に入るなりみんなにこう言った。

「おっ!みんなで反省会か!」

反省会?
「息子のためにありがとう」じゃなくて?
僕らに反省をしろと?

思えば新郎は昔から無神経な奴だった。
この親にしてこの子ありだ。

一肌脱いで大怪我を負った結果、親族に反省を促される。

これは奇跡だ。

こんな事、現実には起こり得ない。

これは奇跡だ。

僕たちは京都の片隅で起きた小さな奇跡を噛みしめた。






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