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墓標

前回UPしたように、OVAでは色々と思いが果たせなかったケースがあります。途中降板ならまだいい方で、企画を通すためにさんざ作業した挙げ句、いざ実現すると別の人が脚本書いている、或いは企画そのものが無くなっている。そんなものはざら。
普通ならそういう作品については守秘義務契約があり発信できないはずですが、なにせまともな契約というものが存在しなかったかつてのアニメ界。企画だけ書かせて買い取りのギャラすら払っていただけてないのだから、契約書があるはずもなく。
なので久しぶりにそうしたことどもを思い出して、墓参の代わりにしようか、と。そんな記事です。いつものことですが、本当に書けないことについては触れないと思います。また完全なオリジナル企画(私の原案)の場合はいちいちその内容を説明しないといけなくなるし、そのネタをどっかで使いまわしていることもあるので、紹介はしないかと。そうそう、割と長く関わった企画としては、とある造形会社、後にCGで大きくなった会社が、アメリカ向けにプレゼンしていたTVシリーズがありました。名物的なシャチョさんはご健在のようで、先日もお宝鑑定団に登場していてビックリ。あれについては守秘契約があった気がしますので、タイトルは出さないでおきます。

皆さんもこの墓標に線香手向ける気持ちで、購入なりサポートなりお願いできれば幸いです。

OVAの記事で挙げた中で、自分で最後までやれず残念だったのは「うろつき童子 未来編」ですね。後に魔胎伝となった企画は恵を主役にしたスピンオフというもので、併せて未来編を作ろうということになり、その主人公として「マケモノ」という新しいカテゴリを設定。確か合宿までして全体の構成を作り上げたのですが、私の脚本の方向が受け入れてもらえず、未来編一話の脚本(未使用)までしか作業させてもらえませんでした。この脚本はいつか読んでもらいたいと思っています。同じ頃だったか「キャシャーン」も「ジェノサイバー」も力を入れた割にはうまくすすまず、テレビ「ガイファード」もシリーズ構成まで作ったのに一話の脚本のみでキャンセルをくらい、あの時期は本当にしんどかった記憶しかありません。ちょうど仕事がテレビアニメ中心になる直前の時期ですね。先日誰かが私の昔の脚本をいくつか見つけて集めて同人誌にしていましたが、その中に入っている「スカルマン」も多分この時期だったような。円谷映像で、仮面ライダーのオリジン的な原作を映像化するというワクワクする企画でしたが、当然ながら大人の事情で途中から石森プロの方がいらっしゃらなくなりました(笑)、別の形で実現しただけでも凄いと思います、そっちには関わっていませんけど。

実写の仕事については本当につまづきどおしで、オレはもうこっちでは書けないのかな、と思っていたことが何度も。「アバレンジャー」で東映に復帰するまで、なにをやっても途中でキャンセルを食らうということばかりでした。「ガイファード」もそうですし「WARASHI」の2クール目も頼まれて構成書いたのに、受け付けて貰えなかったという。そもそもずっと企画をやっていた「ガンヘッド」も映画の脚本には関われなかったわけで。「エンジェルコップ」も実写は実現しませんでしたしね。

特撮だけでなく、一般ドラマや映画に呼んでいただけることもありました。日本テレビエンタープライズに、ミステリものが好きなプロデューサーさんがいらして、そこでも随分いろいろと企画を書いたのですが、一度も成立しませんでした。「海都がゆく」という、スーパーマン的キャラクターを主人公にしたオリジナル企画のパイロット台本は、私以外に岡田恵和さんや柏原さん、橋本さんなどが書かれており、実現していれば面白かったと思うのですが。
今は音響監督になられている長崎さんのご紹介で「夜逃げ屋本舗」の最初の企画に関わったこともあるんですが、これは途中で色々と発注が変わり、それに対応する筆力が当時はありませんでした。印象に残っているのは「ゴリラ」、石原プロのTVシリーズです。刑事ドラマよりも飛躍した内容なので、アニメとか書いてる若いヤツに声をかけてみようということで、なぜかうちにも。ちゃんと行きましたよ、石原プロ、あのコマサさんにもお会いしました。ただ渡された台本がどれもなにかの映画のイタダキで、こういうふうに考えないといけないのかと煮詰まってしまい、結局ロクなプロットを出せないままフェイドアウトした気がします。
そう言えば長坂秀佳さんのお誘いで、やはりドラマの立ち上げの会議に呼ばれたことがあります。警察学校の生徒たちがチームで事件を解決する話と、後に「動物通り夢ランド」になった企画。どちらもプロットは出したと思いますが、「特捜」のときと同じく、なかなか採用はされませんでしたね。警察学校の方は長坂さんに褒めて貰えたんですが、企画自体が実現しなかった。まぁこれも単に記憶を美化しているだけかも。
近年では「シャンバラ」を気に入ってくれたプロデューサーのご指名で「デスノート」のスピンオフ映画に参加したことがありました。これはクレジットに「協力」として名前が残っています。かなりタイトなスケジュールで、ほぼオリジナルの一稿をあげなければならず、スケジュール的に破綻してしまい、別の方に代わりました。一応大幅に〆切を破りつつ、最後まで書いた脚本は存在しています。自分では結構気に入っているんですが、さすがにどこにも発表できず残念です(笑)。

アニメに話を移すと、葦プロダクションさんが、家が近かったせいかよく声をかけてくださったんですが実現したものはありませんでした。確か井上敏樹さんが、格闘ゲームのスピンオフで漫画連載していた「DRUM拳」のテレビアニメ化の企画があって、七~八話まで脚本が進んだところで潰れたことも。これは一本だけ参加していました。「チャック・ノリス」という企画もありましたね、あのチャック・ノリスが、彼自身でスーパーヒーローとして活躍する。確かこれ本国で後にちゃんと作られたんじゃなかったかな。そして「覚悟のススメ」、最初はテレビ、それからOVAになり、監督を紹介したり、キャスティングに意見言ったりしたんですが、原作者サイドに「アニメとは子どもが見てわくわくするものでなければならない」という強い思い入れがあり、私のプロットを受け入れていただけず降板しました。

アニメは本当にあちこちから相談されていて「仮面の忍者赤影」をOVAで、という企画のときは存命だった横山先生のお宅まで伺い企画を説明させていただきました。「ギガハート」という仮題で、某有名OVAの新作企画をやっていたこともあり、これが水島監督と最初に作った企画になりましたね、要素はUN-GOに少しだけ残ってます。昔のメモを見ると「朧夜行」とか「キメラ」とか「纏組」とか書いてはあるんですが、今となってはどんな企画だったか、どこまで関わったのか、その後どうなったのか、全てわかりません。そういえば「ニンジャタイフーン」という忍者モノアニメ企画を、秋元康事務所で作ったことも。荒木伸吾さんのキャラデザでパイロットフィルムまで作ったんですが。

基本的に、まとまったお金があると、それ以上仕事しなくなるという、人間としては最低の部類の性格なので、大きな作品のあとはいろいろと不義理をしています。「ナデシコ」のときは、ゲーム・小説・用語辞典、様々な企画が同時進行で動いていたのに、私が作業しないせいで、どれもタイミングを逸して、他の方にご迷惑をおかけすることに。このパターンで一度は発表されたのに、出版されなかった小説は「八犬伝」「グランヒストリア」「南海奇皇」など枚挙に暇がなく、これはもうどれもこれも私が悪い、としか言いようがありません。

TVアニメシリーズに単発のプロットを書いた、出した、けれど成立しなかったというときは、たいていこっちが前のめりになっていて、相手が引いてしまう、というパターンで。旧「ドラえもん」や「鉄腕アトム」「ブラックジャック」、どれも大量のプロットを出して討ち死に。そういえばまだ作業途中だった「カウボーイ・ビバップ」も一度だけプロットを南さんに出してます、鼻にも引っ掛けられなかったみたいですが(笑)。「みなしごハッチ(リメイク)」や「燃える!お兄さん」が一本だけ参加なのは、どちらも手間を掛けすぎて、そこで見切りをつけられたということかと。「お兄さん」はその前に番組終了が決まっていたかもしれません。
ずっと後年ですが「エレメントハンター」という作品に参加したときは、これはちゃんと脚本を書いたのに、設定的な問題でどうしても変更しなければならなくなり、まるまる書き直すぐらいなら、ということで降板したというレアケース。テレビで脚本まるまるボツになったのは、これと「ジェイデッカー」の某話くらいかなあ。「ラーゼフォン」の二本目はプロットを何度書いてもOKが出なかったので、少し違います。

近年でも「シムーン」とか「ディケイド」とか「奥さまは魔法少女」とか、立ち上げでは結構時間を使ったのに……という作品はあったりするんですが、こういうものについてはとりたてて書くエピソードもないんですね。あちらの言い分はまた別でしょうけど。ああ、「ガンパレード・マーチ2」というのを頼まれて、送られてきた大量のゲーム台本をいくら読んでも隔靴掻痒で理解できないので、原作者とメールでやりとりさせていただいて裏設定などに精通して、複層構造の構成を出したらプロデュースサイトから「そこまでのことは頼んでないんです」と首を切られた……あれは珍しいケースでしたね。あとこれはこのままだとテレビにできないから、と原作をマイルドにするように云われて、じゃあいっそ60年代に舞台を移して、とかやってたら「美術設定作るの大変すぎて無理」と云われた「屍姫60年代版」というのもありましたが、これの場合、そのあと一応企画は成立したので。でも多方面にご迷惑をかける結果となってしまって(私としてはスポンサーに云われるがままだったんですが)。

いつまでもこんなことばかり書いていてもキリがありませんので、シメといたしましょう。古いファイルをつらつら眺めていて、ちょっと鼻の奥がツンとなったのはTV版「吸血姫美夕」に関するものでした。
平野俊弘(俊貴)監督は、「大魔神我」以来、どこの馬の骨ともわからないライターに仕事を任せてくださり、「弾劾凰」「ゼオライマー」そして私の原案で「鋼の鬼」と次々に作品を送り出しました。中でも「吸血姫美夕」は、「スケバン刑事風の少女アクション」というコンセプトだったのを私が勝手に「怪奇大作戦の京都編みたいなシリアスなドラマ」と言い出し、垣野内さんの耽美的な方向性、森木さんの全くオリジナルな怪異表現、と集まったメンバーの想いが結集することで、どこにもない作品となったと自負しています。
そんな平野さんから久しぶりに声がかかったのが「美夕をテレビでやる」という企画でした。ファイルを見ると、最初の原稿は95年の12月に提出していますから、まだナデシコにかかる前。漫画原作で生活はなんとかなっていたものの、実写の企画は呼ばれる度に失敗し、テレビアニメでもメインはない。ある意味鬱々としていた時期でした。
結論から言えば皆さんご承知の通り、TV版には私の名前はありません。企画書も第一話の脚本も何度も書いたのですが、最終的にはキャンセルされました(脚本料のみ支払われたかと)。私が提示した方向性が監督のそれと食い違っていたためですが、一番の原因は監督と垣野内さんはOVA以来ずっと「美夕」の物語をコミックで続けておられ、今回はそのテイストでやりたいという意図があったのに、私はそこを理解していなかった。むしろコミック版とは違う、OVAの初期の空気を発展させたいとこだわってしまった(美夕の設定が学園を渡り歩く、というスケバン刑事テイストになっているのもその名残です)、ということだったのだろうと思います。当時平野監督と私の間にあることないこと吹き込む人があり、色々と人間関係の行き違いもあり、結局監督とは疎遠となり、その後「覚悟のススメ」でもご一緒できず、唯一「奇鋼仙女ロウラン」ではプロデューサーの「イクサー1みたいなパワーのあるアニメをもう一度観たい」という要望からタッグを組みましたが、お互いモチベーションに欠けていて、結局それが今の所最後の共作になってしまいました。
それでも私にとって、平野監督と作り上げた初期のOVAはどれも胸を張って代表作と言えるものばかりですし、自分の脚本が絵になって動くことの喜びを、本当の意味で教えてくれた恩人だと思っています。AICが私の著作権を認めないことで、旧作に対して引いた立場をとるしかない現状は心苦しいですが。

そう言えば、自分でもすっかり忘れていたのですが、「美夕」のコミックが掲載されていた「サスペリア」で一度、垣野内さんの挿画でホラーのショートショートを書いたことがあります。秋田書店さんとはそれが最初で最後の仕事で、どうもお互いにうまくいかない‥というか、当時からコミック版美夕的な世界観は、うまく表現できなかったのではないかと。

データが残っていたので、読みやすいようにレイアウトを整えて、私が書いたTV用美夕一話初稿を掲載します。いま読むとコミック版寄りとかそういうこと以前に、かなり厳しい出来ですね。初稿なので長いのは仕方ないのですが、当時Jホラーの勃興期で、漫画や小説もオカルトもの流行りであり、また実際に起きた猟奇的事件との関係が取りざたされるような状況の中で、なんとかフィクションで現実を感じさせたいという思いばかりが先走ったものになっています。
ちなみにライバルキャラ・冷羽はまだ登場していませんが、そのネーミングは私によるものです。というのも直前の仕事の「勇者警察ジェイデッカー」で「影狼カゲロウ」となっているゲストキャラが元々は「零羽レイハ」という名前で、それをスライドさせて使用したものだからです。
PDFに起こした関係で日付が今年になっていますが、実際の執筆は96年7月、作業的にはナデシコの二話と並行しています。


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ちなみにこの書式で、平成ライダーなら30頁ちょっとでまとめることを要求されます(笑)。
さてこのあとはオマケ。まずこのTV版美夕の企画の最初の段階で私が提出したストーリー案集。当時「WARASHI」や「ガイファード」などのために作った大量のボツ設定があったため、それを注ぎ込んだものとなっています。もう今後リサイクルすることもないかな、と(笑)。

もう一つ。実は平野さん、森木さんとはOVAと並行して、テレビアニメの企画を某社で進めたことがありました。「星矢」が一大ブームとなり、各社が装甲フィギュアものを狙っていたころで、私達はB社にプレゼンしていました。しかし同じ会社で先にT社の「侍」ものが通ってしまい、我々の企画は中止となります。87年10月の日付がありますので、鋼の鬼以外のシリーズの仕事はまだ継続していた頃でした。こちらのファイルも掲載しようと思ったのですが、容量の問題か、アップロードできませんでした。興味がある方がいたら、また別のnoteで。しかしこれは相当に恥ずかしいです。


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