八村塁の発言から考える日本とNBAのスタンダード
11月13日(日本時間14日)、ロサンゼルスのクリプトドットコム・アリーナでメンフィス・グリズリーズとロサンゼルス・レイカーズが対戦した試合後の会見で八村塁が日本バスケットボール協会(JBA)とトム・ホーバスヘッドコーチについて語ったことが話題になりました。
さらに11月24日、バスケットボール男子日本代表が、グアムでFIBAアジアカップ2025予選の試合を戦っていたのと同じ頃、八村塁は、ロサンゼルス・レイカーズの本拠地、クリプトドットコム・アリーナで、先日語ったことに対する内容を追加で語りました。
詳しい内容はリンク先の宮地陽子さんの記事を参考にしていただくとして、僕は八村が発言した内容は「日本とNBAのスタンダードの違い」のことだなと思うようになりました。
NBAを、八村塁の凄さを理解していなかったのではないか
これは日本のバスケットボールファンの多くがそんな気がしているのですが、Bリーグが急成長したことで、バスケットボール=Bリーグになってしまったような気がしますが、バスケットボールというよりスポーツの世界最高峰のリーグとして存在するNBAで、6シーズン目を迎える八村塁という選手の凄さをきちんと理解していないのではないか。ふとそう思ったのです。
NBAがどんなリーグかという解説は有識者の方々に任せますが、八村塁の$17,000,000という年俸は、NBA全体でも101番目で、所属するレイカーズでも4番目(参考)。NBAで、名門レイカーズで、スターターを務めるにふさわしい契約を手にしています。NBAというリーグはそもそもチームと契約出来るのが10人程度で、リーグ全体でも300人程度しかいません。狭き門に世界中のバスケットボール選手が集まり、日々激烈な競争を繰り広げているのです。
NBAでは契約によってプレーできる条件や契約解除条件なども定められています。河村勇輝がNBAでプレーするようになりましたが、河村がプレーする頻度が増えるほど、当たり前のようにNBAでプレーできる契約を手にし、NBAで活躍し、ヨキッチやヤニス・アデトクンボといったスーパースターたちにマッチアップし、レブロン・ジェームズとプレーする八村がいかに凄いかと思うようになりましたが、そのことがきちんと伝わっていない気がします。なぜならNBAを定期的に取材しているジャーナリストは少なく、NBAのことを取り上げるメディアも少ないからです。
NBAとBリーグはスタンダードが全く違う
少し話はずれますが、今回話題になったエージェンシーの対応も日本とアメリカでは全く違います。アメリカでは選手とエージェンシーが契約していますが、エージェンシーの業務範囲は日本の「契約代理人」に限らず、企業とのコマーシャル契約、スケジュール管理、生活面のケア、トレーニング場所の確保、オフシーズンの取材対応など多岐にわたります。
エージェンシーは選手の価値を高め、よい契約を勝ち取ることが、自分たちのビジネスを成長させることだということをよく理解しています。選手への外部からの連絡をシャットダウンするのもエージェンシーの役割です。悪者になってもいいので、ガード高く守るのもエージェンシーの仕事というわけです。大谷翔平が契約するCAAも同じようなスタンスという認識ですが、日本ではここまで徹底しません。考え方も仕組みも違うのです。
今回八村が契約しているエージェンシーであるワッサーマンが八村との連絡を完全に遮断していたとのことですが、エージェンシーとしては当然の対応です。エージェンシーに否はありません。
繰り返しになりますが、NBAとBリーグは全く違うリーグです。比べるのもおかしいくらい違います。NBAとBリーグのスタンダードが全く違うのですが、日本のメディアはBリーグを多く取材している人が多いので、NBAのスタンダードが分からない人も多いと思います。僕もそんな一人なので、あえて今回は「スタンダードの違いによるミスコミュニケーション事案である」という理解のもと、読み進めていただくと理解が進むと思いまして、書かせて頂きました。
八村はNBAのスタンダードに照らし合わせると、ここがおかしいと発言しているのですが、日本のバスケットボールを基準に考えるJBAや日本のメディアやファン、もしかしたらチームメイトには意図が的確に伝わっていないのではないかと思います。だからこそ、渡邊雄太が補足してくれたことに意味があります。彼は日本のバスケットボールも、NBAも、知っている存在だからです。ただ、キャプテンでもなく、代表期間中でもないタイミングで渡邊雄太が発言しなければならなかったのは、それでよかったのかとは思いますが。
トム・ホーバスのコーチングスタイルは「野球型」
八村が語った内容で話題になったのは、トム・ホーバスヘッドコーチのコーチングについてです。
ここでも語られているのは、NBAと日本のスタンダードの違いです。八村が語っている世界のレベル=NBAと言って相違ないと思います。
僕もトム・ホーバスのコーチングスタイルは以前から気になっていた点がありました。役割と求めるプレーを細かく定めること、長時間の練習を課すこと、監督の指示に従うことを強く求めること、怒って奮起させたあとに優しくするといった緊張のコントロールで人をコントロールしようとするところ、など。特に最後の点は「企業でこれやったらアウトだろうな」と思っていたので、あまりよいスポットの当たり方ではありませんが、このタイミングでトム・ホーバスのコーチングスタイルに注目が集まるのは悪いことばかりではないと思います。
トム・ホーバスのコーチングスタイルと八村が指摘している内容は、以下のスライドがわかりやすいと思います。
トム・ホーバスのコーチングスタイルは「野球型」で、八村が指摘しているスタイルは「サッカー型」なのだと思います。この違いが2人の意見の相違点ではないかと思います。
ここから先は
Amazonギフトカード5,000円分が当たる
この記事が参加している募集
サポートと激励や感想メッセージありがとうございます! サポートで得た収入は、書籍の購入や他の人へのサポート、次回の旅の費用に使わせて頂きます!