情熱大陸「イチロー特集」を観て考えたこと
先週情熱大陸で2日連続イチロー特集という企画が放送されました。
この放送で僕の周りで話題になったのが、イチローと松井秀喜が「現代の野球」について言及した箇所でした。
松井がイチローに「今のメジャー見ているとストレスたまりません?」と語り、イチローが「たまる、たまる。めちゃめちゃたまるよ!退屈な野球」と答え、松井が「打順の意味とか、そういうのがなんか薄れちゃってますよね」というやりとりが放送され、その後イチローが母校愛工大名電で指導した時にも「データ」について語っていました。
頭を使わないと野球は上手くならない
僕はイチローが引退した後にこんなnoteを書きました。
僕がイチローに同意したのは、イチローがデータを盲目的に信用する人が増え、「個別最適化」ではなく個体の特徴を考慮しない「均一化」が進むことを危惧したからでした。
実際ビジネスの世界ではAIを導入したことによって作業の時間短縮が進んだ一方で、AIに答えさせると似て非なる課題でも同じ用に答えるので、同じようなサービスや課題解決のアプローチをとる言説や企業が増えたと感じたときもありました。大学でも「AIにレポートを書かせている学生が増えた」という話を聞くので、イチローの話していることをすべて否定する気にはなれません。
一方でイチローが危惧していた「頭を使わない野球」については、そうとも言い切れないのではないかと思います。データを効果的に使い、トレーニングの効率性を高め、素早く問題を解決し、凄いスピードで進化を遂げるアスリートが現れています。2023年に横浜DeNAベイスターズでプレーしたトレバー・バウアーはそんな選手です。
そして、何よりそんな選手のトレンドの最先端は大谷翔平だと思います。大谷こそ現代の「頭を使う」「データも使う」トレンドの最先端を猛スピードで走り続けている選手です。
イチローは「考える」を分解できていない
「考える」という行為は、「観察」「判断」「実行」「分析」で成り立っていると思ってまして、イチローの「考える」は主に「観察」と「判断」の部分を語っているのだと思います。
イチローは「どこを見るか」「どう判断するのか」ということが重要だと語っていて、これは同意です。データを基に提示された解決策だけ盲目的に実行するのではなく、重要なのは自分で目標や取り組むべき課題を設定し、何を優先するかを判断すること。イチローが記事で語っていることは「データでは分からない」ではなく、「データをどう使って判断するか分からない」なのです。だから、判断するための基準だったり、優先順位を伝える必要があるし、データを使うならデータの使い方を教える必要がある。イチローはこの点については言葉足らずだなと思った次第です。
なお、MLBはデータ量も多く、ドライブラインのように外部でパフォーマンスを最適化出来る施設も登場しているので、「知の高速道路」のスピードはどんどん上がっています。「実行」「分析」のスピードの速さは現場の人でもついていけていないのかもしれません。
最近僕が書いていることは「頭を使わないとサッカーは出来ないスポーツになりつつある」ということです。
取得できるデータが増え、選択肢が増えたなかで、どんな問いを与え、どんな判断基準で意思決定させるのか。そこを伝えるのが監督やコーチの役割です。データを使えるうえでデータを否定するのではなく、データを使えないからデータを否定する。番組を観ていると、イチローがそんな人に見えたのは少し悲しかったです。
MLBは頭を使って1点を奪いにいくという考えがない?
イチローの言葉ほど放送後あまり話題になりませんでしたが、松井が語っていた「打順の意味とか、そういうのがなんか薄れちゃってますよね」という言葉には、僕も同意します。
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