新庄剛志と棚橋弘至-野球とプロレスの再定義-

2024年のプロ野球のシーズンは終わりましたが、北海道日本ハムファイターズへの興味関心は衰えず、関連書籍を調べたり、YouTubeで動画を観たりしています。北海道日本ハムファイターズの野球の面白さについては、こちらに書きました。

この期に及んでそれをやるか

このnoteを書いた後に行われたクライマックスシリーズ・ファイナルは3連敗。ソフトバンク・ホークスに力の差を見せつけられる結果となりましたが、新庄監督らしい采配はいくつかみられました。

特に印象に残ったのは、柳川と福島という2024年シーズンに支配下登録された選手をこのタイミングで起用したことです。池田と山本という実績ある選手がコンディションの問題で投げられなくなったとはいえ、福島は1軍での最後の登板は8月23日、柳川は9月に入ってからは苦しいピッチングが続いていました。

そんな2人をチーム事情があるとはいえクライマックスシリーズ・ファイナルで投げさせる。案の定というべきか、福島はホームランを打たれ、柳川は押出のフォアボールを出し、よい結果は出せませんでした。

しかしそんなことより、新庄監督の起用からは2人に対して「こういう痺れるような場面を経験させてあげたい」という思いが伝わってきました。打たれないのが理想だけど、もし打たれたとしても、2人の将来にとって必ず糧になるはず。そんな思いが感じられた起用でした。

ファンからすると、眼の前にシーズン一番の勝負がかかった試合が行われているので、「この期に及んでそんなことをするのか」と思う人もいたはずです。「やっぱり打たれたじゃないか」「だから負けたんだ」と思う人もいたはずです。

しかし、新庄監督は眼の前の勝負にこだわりつつ、少し先の未来を見ながら監督をやっているように感じます。日本シリーズまで進出したとき、来シーズン以降チームがもっと面白くなるにはどうしたらよいか。そんなことを常に考えながら、少しでも面白くなる可能性を高めようとして、いろいろ考えているんだなということが節々から伝わってきます。

それは若手の起用に限った話ではなく、ファイナル第1戦に9番中島卓也を起用したのも、ファイナル第3戦に1番マルティネス、2番レイエス、3番清宮、4番万波という打順にしたのも、少しでも可能性を追求した結果なのだと思います。特に9番中島は簡単にアウトにならないことが可能性を上げることにつながるのだ、ということを示す起用だなと思いました。とても面白かったです。

2025年シーズンは試合も定期的にチェックしながら、北海道日本ハムファイターズを追いかけていこうと思います。久々に長い時間追いかけて「こういうときどうするのか」を知りたいチームが出てきました。楽しいシーズンになっても、厳しいシーズンになっても、1年追いかけてみたいと思います。とても楽しみです。

2020年の時点で新庄剛志が形にしたい野球のビジョンがあった

最近「アンビシャス　北海道にボールパークを創った男たち」を読み直したのですが、本書のエピローグ書かれている「新庄剛志が監督になる経緯」がとても興味深く、繰り返し読み直しました。

アンビシャス　北海道にボールパークを創った男たち (文春e-book)

エピローグには48歳の新庄が現役復帰を目指してプロ野球のトライアウトを受けたその日、ファイターズのある球団幹部がトライアウトを終えたばかりの新庄に電話をかけ、「大事なお話があります」と告げたうえで日比谷の帝国ホテルで一席を設けます。

料亭のテーブルを挟んだ新庄に球団幹部は「2022年、新庄剛志がファイターズの監督になるためには何をすればいいか。今から一年間かけて考えてください」と告げます。驚いた新庄が「自分のどこを見て、監督にしようというのですか？」と聞くと、球団幹部は新庄のグラブに関するあるエピソードを話します。

このやり取りを読んだとき、新庄がなぜトライアウトを受けたのかを知りたくて、新庄剛志の「もう一度、プロ野球選手になる。」という本を読みました。

もう一度、プロ野球選手になる。

本書が出版されたのは2020年なのですが、本書を読み終えて感じたのはトライアウトどうこうもありますが、新庄という人は2020年の時点で「自分ならこんな野球がやりたい」ということが明確になっており、本書に書かれたことが、2024年の時点で北海道日本ハムファイターズというチームに3年かけてだいぶ浸透している。そのことに唸らされました。新庄という人がどんなことを考えて監督をやっているのか、その答え合わせにとてもよい本です。

新庄という監督が取り組んでいることは大まかにいうと3点あります。