レジ袋有料化の話
2020年7月からレジ袋有料化となり、早3年。
当初は戸惑いがあったものの、レジ袋有料化はもはや日常の一部となり、エコバッグを持ち歩く人々も増えつつある気がします。
私たち消費者にとってのレジ袋有料化は、ちょっとした節約と便利さを天秤にかける程度で深く考えることもないですが、環境省と事業者にとってのレジ袋有料化は、戦いの歴史であることを忘れてはなりません。
今回はそんなレジ袋有料化について、少しお話したいと思います。
①容器包装リサイクル法の改正
第27代環境大臣・小泉進次郎氏により主導的に進められたレジ袋有料化は、野党・世論からの逆風を受けながらも「容器包装リサイクル法」の改正により実現しました。
環境負荷に対する代償的な徴収ではなく、有料化を通じて環境意識を国民に広く知らしめることを目的とし、概ね1枚3円程度を消費者が負担しています。
レジ袋の価格とその売上の使途は事業者によって自由に設定してよいとされており、実質的には小売事業者等の副次的な売上に繋がっています。
②レジ袋とは?
ひとえにレジ袋といっても、その定義は厳格に定められております。
それぞれに細かい注釈はつきますが、ざっくり概要を記載すると、下記4項目すべてに該当するものが有料化の対象となります。
◯プラスチック製であること
◯持ち手があること
◯商品を入れる用途であること
◯商品と一体化しておらず、消費者の意志で断ることができること
すべてに該当するのにレジ袋の有料化を行わない事業者は、容器包装リサイクル法に基づいた罰金刑が課せられます。
レジ袋それ自体は「プラスチック製包装容器」とさらに堅い言葉で記述されており、「プラスチック製包装容器(いわゆるレジ袋)」とした表記がなされています。
たかがレジ袋とはいえども、国家公務員や関連団体が調整に調整を重ねて「レジ袋」とはなにか?を真剣に議論していることを考えると、面白さもありますね。
③脱法レジ袋の存在
一部の事業者では、容器包装リサイクル法の法律の目を掻い潜って、なんとか無償でレジ袋を提供しようと試みます。
無償で提供することが他小売事業者と差別化したサービスとなるため、容器包装リサイクル法の驚きの解釈や、「レジ袋の定義から逸脱した袋」を次々生み出します。
有料化初期に現れた、半分プラスチック製のレジ袋(下半分が紙)、あらかじめレジ袋に商品を入れて販売する、店のすぐ外にレジ袋無償配布センターを設置する3店方式などはその最たる例です。
④繰り返される摘発と法改正
公平な商取引を監視する公正取引委員会は、関連団体を通じて違法にレジ袋を無償で提供する業者を摘発し、独占禁止法や容器包装リサイクル法に基づく罰則を課します。
「脱法レジ袋」を取り締まる「プラスチック製包装容器の提供に関する監視協会」、通称「レジ袋Gメン」は、消費者からの情報提供などをもとにして実際に現地店舗で消費活動を行い、違法にレジ袋が無償で提供されていないか確認します。
2020年7月にレジ袋有料化となった直後、福岡県の小売事業者にて、
「持ち手部分はないものの、持ち手に相当する部分に切り取り線を入れ込み、消費者自身で持ち手を作成することができるレジ袋」を作成・無償提供したことでレジ袋Gメンの摘発を受けています。
摘発直後、「レジ袋有料化に関するガイドライン」が制定され、「社会通念上、実質的に持ち手とみなせるものが容易に作成できると認めるもの」が「持ち手があること」の定義に加わり、当レジ袋は有料化の対象となりました。
また、その3ヶ月後、大阪府の地場食品スーパーチェーンにて、
「提供しているのは食品を通じた豊かな食生活に寄与するサービス、役務の提供」であり、レジ袋は商品を包むものではないと主張しレジ袋の無償提供を行います。
当事例は即刻レジ袋Gメンに摘発され、営業業態を鑑みて役務の提供にはあたらないとして、ガイドラインの改正を行うまでもなく罰金刑に処されます。
2022年12月には、香川県の駄菓子店にて行われたレジ袋無償配布キャンペーンが問題視されます。
「レジ袋は商品を入れる目的ではなく、来店の景品として入口で来店者へ無償配布する」といったもので、キャンペーンが行われた期間内に4,300枚のレジ袋が無償配布されました。
当事例においてはレジ袋は商品を入れる目的にはあたらないため、有料化の対象ではないものの
①景品表示法の観点から、期待される売上額に対して来店景品が過大となる点
②独占禁止法の観点から、不当廉売を通じて近隣駄菓子店を排除しようと試みた点
において問題となり、事例発覚後にガイドラインにて注釈が付され、「敷地内で配布されたもので、商品を入れる目的ではないものの、総合的に勘案して消費者がレジ袋だと認識できるもの」は有料化とすることが望ましいと整理されています。
具体的事例をあげるとキリがありませんが、ガイドラインの改正と脱法レジ袋の誕生がイタチごっこのように繰り返され、問題視されています。
⑤正しいレジ袋の使い方
消費者としても、レジ袋の使い方は注意しなければなりません。有料で購入したものを定義通りに使用しない場合や、レジ袋の使い方を誤った場合、提供した事業者が罰せられる可能性があるからです。
例えば、レジ袋を余分に購入し商品を入れないで持ち帰るケースは、商品を入れないものを有償で提供したとして小売業者に罰金が付与される場合があります。
また、スーパーなどに設置されるポリ袋は取っ手がないため「容器包装リサイクル法」のレジ袋にはあたりませんが、これに切り込み等を入れてレジ袋様にした場合は、発覚した際に店舗からレジ袋代を請求されるおそれがあります。
たかがレジ袋かもしれませんが、定期的に「レジ袋有料化に関するガイドライン」を確認し、正しいレジ袋の使い方を確認することで、こころよいお買い物を心がけましょう。