書き順は「いろいろな人たちが漢字を長い間使い続ける中で「書きやすい」「覚えやすい」ように考え出されたものです」と言われる。この1文が〈どれだけ重いのか!〉を言うために書きます。否定するつもりはないし,批判のつもりもありません。だから,日本で学校漢字の教育を受けた人ならば,〈あなたの覚えた書き順で良いのです〉となります。もう先を読む必要はありません。しかし,本当に何も知らない人を相手に〈書きやすい〉〈覚えやすい〉を説明するために一度はきちんと説明してみます。
「口」を書くときに,左の縦線「丨」と右の縦線「丨」のどちらを先に書いた方が書きやすいだろうか?
かん字が作られた頃は,パソコンのキーボードやタブレットもなかった。多くの人は右手に筆記具を持って書いた。右を先に書くと左を書くときに自分自身の手先が影となるので書く位置や長さの調整がしにくい。これはやはり左を先に書いておいた方が,長さやバランスをとるのに良い。書きやすさの点から〈左から右〉となる。なので,これが書き順の原則になる。
同様に,上の「一」と下の「一」のどちらを先に書いたほうが書きやすいだろうか?
下を先に書くと上を書くときに自分自身の手先が影となるので長さの調整がしにくくなる。やはり,上を先に書いておいたほうがそれを頼りに下の線も長さやバランスがとれる。書きやすさの点から,〈上から下〉となる。これが書き順の原則になる。
ここからは,引用文となる。「口」全体の書き順については久米公『新漢字表による筆順指導総覧』(みつる教育図書出版,1977年)に詳しく紹介されていたからだ。
もともと,松本仁志『筆順のはなし』(中央公論社,2012年)を読んで知ったことだ。
と言うことで,現在の「口」の書き順となる。
私が付け加えるなら,「とりわけ左の型が都合がよい」と言う根拠は縦書きを基本としてきた漢字文化があったからだろう。左の方が全体的に上から下に向かっている。もし,西洋のように横書き文化であったなら,右のほうが都合よかったと思う。
「書きやすい」は説明できたとして,「覚えやすい」はどうするか?
これについては前の話「2-6-2 書き順ルールに画素の→↓↙↘○を利用する」で良いと思う。