3-0 画からまとまりへ
● ここまでの概要
1部 かん字は直線でできている。直線が変化して直線となる。
2部 画は骨組みで見ると13種類。それらが変化して多数の画を形成している。画の骨組みのことを「画素」と命名する。画素を活用することで書き順のルールも定まる。
3部
画素に分解して,それらを並べるルールがあれば,原理的にはこれですべてのかん字を表記できる。
しかし,画数が増えると急激に面倒くさくなる。
教育かん字で各学年に配当されているかん字の平均画数は次の通りである。(森下による算出)
1年 80字 平均画数 5.0画(最大12画「森」)
2年 160字 平均画数 8.2画(最大18画「顔」「曜」)
3年 200字 平均画数 9.4画(最大18画「題」)
4年 202字 平均画数 9.8画(最大20画「議」「競」
5年 193字 平均画数 10.6画(最大20画「護」)
6年 191字 平均画数 10.6画(最大19画「臓」「警」)
ていねいな書き順指導が行われているのもせいぜい1〜2年までだろう。それ以上となるとある程度のまとまりで見ていく必要がある。
数を数える時にも,「1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11…」と一つずつ数えてもよいが,少し慣れてくれば,「2,4,6,8,10…」と2のまとまりで数えたり,「5,10,15…」とか,「10,20…」とまとまりを意識する。
かん字の場合も画をある程度のまとまりで見ていくと何かと都合が良い。各かん字に共通する形を意識するのだ。
このまとまりのことを昔は「文」と呼んだ。
初めて作られた漢字字典の名前は『説文解字』(許慎,100年頃)と言う。
その本の序文に「文」の説明がされている。
つまり,単独の要素が「文」であり,組み合わされたものが「字」である。両者を合わせて「文字」となるわけだ。書名である『説文解字』も〈文を説明して,字を理解する〉という意味だ。(ついでの話になるが,テストでも「〜字以内で書きなさい」と言う時と「〜文字以内で書きなさい」では意味が異なる。「〜文字以内で書きなさい」の時は句読点も含まれる)
教育関係者も文については名称に苦労している。そのまま使うと
センテンスとしての文と混同してしまう。
時には「部首と言ったらどうですか?」と提案する人がいる。しかし,「部首」はかん字のグループ分けをしたときの区分け規準である。例えば,「時」は「日」と「寺」が組み合わさった字だ。「部首」と言った時は「日」部分であり,「寺」部分は「部首」と言わない。〈かん字の中に何度も共通して使われている形〉としての名前が欲しいのだ。部首で使われている字形ではすべてをカバーできない。
かん字の中には「部首」とはならない形がある。例えば,「青」「麦」「素」「毒」「表」などに使われている上の部分。「生」から「ノ」を取った形だ。これは部首でない。またこういったかん字もない。そのためユニコードでも表示できない形である。こう言ったものがかん字の中にある。(「春」の上半分もそうだ)
(今回の写真は「文様」から検索しました。「文」には〈小さな単位〉という意味が込められています。小さな単位を組み合わせて作れているから「文様・・・模様」となるわけです)