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〈画は10種類〉のルーツについて

 〈画を(10 種類と)示した〉のは宮下久夫さんの本より岡田進さん の本が先になる。そのわりには岡田さんの本の記述は淡々としており,〈画を(10 種類と)示した〉ことの感動がない。宮下さんの方が感動している。
 これが不思議だった。どちらも太郎次郎社の本であり,何らかのつながりがあると思えるのに,宮下さんの本には岡田さんについて書かれていない。まるで無関係と思えない。
 次に10種類の画の名称を挙げてみる。

1)よこ線 2)たて線 3)ななめ線 4)角かぎ 5)ななめかぎ 6)てかぎ 7)つりばり 8)くの字 9)あひる 10)点
同書,33-

岡田進『これなら楽しくできる漢字の教え方』(太郎次郎社,1979 年)33-34ペ

1)よこ線 2)たて線 3)ななめ線 4)かくかぎ 5)ななめかぎ 6)てかぎ 7)つりばり 8)くのじ 9)あひる 10)てん

宮下久夫『分ければ見つかる知っている漢字』(太郎次郎社, 2000 年),40-41ペ

1)よこ線 2)たて線 3)ななめ線 4)点 5)角かぎ 6)ななめかぎ 7)てかぎ 8)つりばり 9)くのじ 10)あひる

宮下久夫・篠崎五六・伊東信夫・浅川満「十の画べえ遊び方」(『漢字がたのしくなる本』教具シリーズ2,太郎次郎社),36-8ペ

 こうして見ると,岡田さんと宮下さんの分類は全く同じだ。「十の画べえ」で「点」の位置が 10 番目から 4 番目に上がったぐらいでその名称も同じだ。
 伊東信夫・宮下久夫『漢字はみんな,カルタで学べる 親と子の漢字学習地図』(太郎次郎社,1994 年)の後書きにその手がかりが あった。

この「漢字がたのしくなる本」のシステムと,“分ければ見つかる,知っている漢字”というメソードを提案したのは,宮下久夫です。宮下は,『にっぽんごシリーズ 7・漢字』(1969 年・麥書房)の著者として,また,その実践的中心メンバーとして,その後三十数年,教育現場で「漢字教育の内容と方法」を一筋に追求してきました。

伊東信夫・宮下久夫『漢字はみんな,カルタで学べる 親と子の漢字学習地図』(太郎次郎社,1994 年),225ぺ

 そうか! その大元は『にっぽんご 7 漢字』(明星学園・国語部,むぎ書房,1969 年 5 月発行,1979 年 2 月 22 刷)だったのか!

 見たらば,ありました。同書「画数と 筆順」の項に 10 種類の画が 出ていました。

1)よこ線 2)たて線 3)ななめ線 4)角かぎ 5)ななめかぎ 6)てかぎ 7)つりばり 8)くの字 9)あひる 10)点

『にっぽんご 7 漢字』(明星学園・国語部,むぎ書房,1969 年 5 月発行,1979 年 2 月 22 刷),76-79ぺ

とその順もまったく同じでした。

 ただ,この『にっぽんご 7 漢字』(明星学園・国語部,むぎ書房)の著者一覧には岡田進さんも宮下久夫さんの名前もない。著者は「遠藤豊・須田清・辻木猪一郎・内藤哲彦・町田熊吉・星正雄・無着成恭」とある。

 Net で拾った情報から
 教育科学研究会の奥田靖雄の講義を受けた明星学園の教師達が『にっぽんご』を作成する。この中に宮下がいたようだ。
 岡田進は数教協出身で『わかるさんすう』(麥書房)の編著者でもある。おそらくこの関係で『にっぽんご』シリーズについても知ったのだろう。1973 年に創刊された『ひと』では,漢字教育について意欲的に発表をしてきた最初の人となる。その成果が『漢字の教え方』(1979 年)である。当時は藤堂明保の考えの影響を受けた。表音に注目をした漢字家族の考えを入れている。
 その後,漢字教育において白川静が著名になる。宮下らは白川の考えを入れた発表をするようになる。代わって岡田の発表がなくなっていく。
奥田靖雄についてはまだ調べていない。

2024/10/04記 一部編集をして公開


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