見出し画像

2-5-6 必要なのか? 4つの基本画素の結合

 学校で教えていることが最新の研究で変わることがある。昔と今で内容が違うわけだ。
 かん字に関しては中央官庁の取り決めで変わる。専門家の意見も聞いているのかもしれないが,最終的には公権力で公布される。それを元に市販の本や辞典は制作される。この「4つの基本画素の結合」についても,中央官庁の取り決めを解釈するために必要となる説明である。
 しかし,私が目指す〈論理的でシンプルな体系〉には「4つの基本画素の結合」は無い。

 小学校でならう漢字の中でもっとも多くの画素が使われているのは,→↙→↙あうあうの結合した「㇋」である。3年生で習う「級」と6年生で習う「吸」で使われている。これで小学校で習う1026字が全部出てきたことになる。
 多くの先生はこれをおかしいと思っていない。子どもが質問できないので,代わりに質問する。
 “「㇋」という画があるのなら,「庭」「健」「建」「延」「誕」で使われる「廴」のときになぜ使わないのですか?”
 調べてきた先生は言うだろう。
 “「級」や「吸」にある「及」では「㇋」を1画で書く。「廴」の時は2画で書きます”
 
 かん字の中には字源が異なっていても,同じ形になってしまったものが多数ある。「灬」は「馬」ならば足だろうし,「魚」ならばヒレになる。「級」や「吸」に使われてる「及」の字源と「庭」「健」「建」「延」「誕」に使われている「廴」の字源とは違うのだ。それが理由になる。
 でも,同じ字形は同じ扱いにした方が初めて学ぶものにとっては,〈論理的でシンプルな体系〉だ。

 「画」による分類が始まったのは1100〜1200年頃となる。それまでの字典は現在の百科事典のように関係のある字を並べるものだった。そのため,次の字はどうなるか予想しにくく,順序を覚えるのがむずかしかった。画数順に漢字を並べるのは字典を扱いやすくするための画期的な工夫だった。
 しかし,画を区別するときに〈昔の形をもとに区別するか?〉〈同じ形は同じ扱いにするか?〉で扱いが変わる。昔のことなんて研究が進んで変わることがある。知らないから字典を引こうとするのに,昔のことを知らないと引けないのだから困る。
 普通の人は同じ形は同じ扱いにした方が便利だ。そのため,昔から「及」でも「廴」と同じように〈フを2回続けて書いてある〉と解釈した字典はある。
 つまり,「及」を「刀又」と見た。そのため,「及󠄁」と言う字はユニコードにもある。

 現在の日本では1958年に定められた『筆順指導の手びき』(文部省)をもとに指導が行われている。

 脱線になるが,「殳」の中に「刀又」の系譜があると思っている。


いいなと思ったら応援しよう!