ごめんなさい。
高校一年生の頃でした。私は恋をしていました。きっと、好きだったのはどうしようもなく自分のことだったのだと今になればわかります。
通学前、一緒に電車に乗った彼氏のスマホの画面にあなたからの「おはよう」の通知が来て、全てを悟りました。
私は彼氏の歌う声が好きでした。でも、彼氏の歌う歌は好きになりませんでした。あなたは違いました。彼の歌声も、選曲も、きっと彼の精神性全てが好きだったのでしょう。
あなたと私は誕生月が同じで、あなたの方が私より少し先に誕生日を迎えるみたいで、あなたの誕生日プレゼントを買うために、彼は学校でお昼ご飯を買わずに我慢していました。私はお弁当を彼の分まで作っていたのですが、途中からあなたのために何日も何日もお昼ご飯を我慢している彼の気持ちの強さが私に対するものと違うことに嫉妬して、一緒にご飯を食べなくなりました。
私はいい人ぶっていました。打算的にあなたに近づき、理解のある彼女を演じて、あなたと彼の世界を壊したかった。彼の特別が私以外にいる事が本当に許せなかった。それは、私の自尊心が傷つけられることだからです。
あなたの誕生日プレゼントを彼と一緒に買いに行った時です。私の手は、彼の手のひらの上で遊ばれていました。それは文字通り、上下でハイタッチするように手を叩きながら歩いていました。
私は爪を伸ばしていて、運悪くその時に爪が折れて血が出てきてしまいました。あの時ほど惨めなことはなかったです。彼も悪いと思って、ほかの女の子のプレゼントを彼女を(物理的に)傷つけてまで買うのは最低だ、なんて言っていましたが平気なフリをしました。そういう自分に酔っていたんだと思います。
あなたの誕生日プレゼントを彼と一緒にあなたに渡した私の方が最低です。彼女であることを見せつけ、優越感に浸ることでしか、自尊心を満たせなかったのだと思います。
それなのに、あなたは私に対していつも笑顔で、あなたは私にこころを開いてくれた瞬間があったと私はこれでも分かっているつもりです。
私があなたにこころを開いた瞬間はあったでしょうか。
あの時、私自身がそういう浅ましい自分に気づけていたら、あなたが一番報われない結果にならなかったかもしれません。一番報われないと言いましたが、きっとあなたも、あなたの友達も、私も、彼も、誰も報われてはいないと思うので、一番なんて決められませんが、少なくとも、あそこまで酷い結果にならなかったでしょう。
許してなんて思っていません。私とあなたを繋ぐものなんて彼くらいしかないので、今更会ってどうこうとも思っていません。
どうすれば良かったのでしょう。今でもたまに思い出します。私はあなたに謝罪の念を抱き、幸せを願うことすらおこがましいのでしょうか。
でも、今になって私は私が一番可愛くてどうしようもなくて被害者面した加害者だったことを気づきました。遅すぎると思います。だからこれは一人言です。ごめんなさい。本当にごめんなさい。あなたの上の名前も、もう思い出せません。下の名前をやっと思い出せたくらいです。そうやって記憶が風化してしまう前に、私は私自身のことをちゃんと覚えていようと思います。自分が加害者でもあったことを。
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