愛宕山
by noriko
岩間駅を過ぎたあたりで、車の中からこんもりとした山が見え、おそらく、これが愛宕山だろうとすぐにわかった。
約300メートルの、小高い丘のような山を上っていくと、駐車スペースにカフェを見つけ、登山したわけでもないのにひと息つこうとコーヒーを飲みながら、眼下に広がる景色を眺める。さわやかな風に吹かれていると、時間が経つのも忘れていつまでもこうしていたくなるが、まだここは頂上ではない。
鳥居の向こうに山の頭が見えた。この上に神社があるのだろう。鳥居をくぐり、山に沿った森の中の道をゆっくりと徒歩で登って行く。
コーヒーも香り豊かでおいしかったが、森の匂いと味わいは、また格別のものがある。森に入って変わっていったわずかに湿った空気が、木々の香りをより強くしていた。
登り切ったところに愛宕神社が建っている。創建は806年と言われているらしい。石垣もその頃からのものなのだろうか。さまざまな大きさの石が見事に積み重ねられている。
随分古くから人々を守ってきたのだと知った。防火の神様だとか。この辺に天狗が住んでいたという伝説もあり、天狗が祀られていた。
参拝が済むと、目下に急な階段。その先の景色がまだ見えない。長い階段だ。
気を引き締めて降りないと、危なさそうだ。すべらないように足元を見ることで精一杯だった。
途中、踊り場のようなところで立ち止まって見つけた倒木が、龍のようだと思った瞬間、カサカサッと枯れ葉の擦れる音。見るとヘビがその倒木から抜け出して来たではないか。龍の化身か。
来た時とは別の鳥居があり、それをくぐると視界が開けた。山ぎわのあざみやあじさいに出会いながら、山の散歩が終わっていった。桜の木もたくさんあったので、そんな季節に駅からのハイキングも乙なものかもしれない。
by reiko
両サイドに木々が生い茂る中、舗装された道を車で上ると、やがて大きく視界が開け、広い駐車場に辿り着いた。『あたご天狗の森』と名前が付いたそこは、JR岩間駅近くにこんもりと佇む愛宕山の頂上近くにあり、展望デッキ、カフェ、トイレなどが整備されていて、山からの景色が一望できる。
山の麓から広がる平野と大きな空。気持ちのいい眺め。後ろを振り返れば、天狗のモチーフが飾られている。愛宕山には天狗が住んでいたという伝説があるのだ。
カフェでカフェラテを買ってゆっくり飲みながら、窓ガラス越しにも景色が楽しむ。このロケーションにカフェがあることを贅沢に感じた。
さて、駐車場の一角に白くて大きな鳥居がある。そこをくぐると、カーブする坂道が山の奥に続いていた。上っていくと愛宕神社があるらしい。
どのくらい距離があるのだろうか。道が曲がっているので先がわからない。歩き出すと思ったより勾配がキツめで心配になりつつも、神社を目指すことにする。
車で上がってきた道と同じように、木が深く茂っていた。自分の足で歩くと、緑や土の匂い、時々吹く風、木陰特有の涼しさをじかに感じて、ドライブとはまた違った気持ちよさがある。そしてなにより、普段使われず甘ったれた筋肉が軋み、息が切れる。ハァハァ言いながら、けれどそう長くは歩かずに、神社に辿り着いた。
本殿に行くため石段を登ると、木々の間から地上が見えた。駐車場よりさらに高い位置から見渡す景色は、ずっと向こうの果てまで見えるようで清々しかった。
整えすぎておらず、元々の自然と共存しているかのような神社の敷地全体の佇まいが、心に沁みる風情があって、とても好きだった。
神社をお参りすると、本殿の中を見てもいいというので、上がらせてもらうことにする。
大きい天狗の顔や絵などが、壁面に飾ってあった。その中に、女人登拝解禁と書いてある、女面の奉納物があり、今でこそ当たり前のように女の私もこうして山を登り、拝殿にも上がっているけれど、それが禁じられていた時代もあったんだなあとしみじみ思った。こうして詣うでることが出来る時に生きていて、ありがたいことである。