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おいしいもの 2025年2月

by noriko


 バレンタインデーにチョコレートケーキを焼いてみた。残念ながら「バレンタイン」という言葉によるときめきは失われつつあり、どちらかというと年中行事のひとつとしてとらえているので、それを口実にお菓子を焼いて楽しもう、といった具合である。
 今回のレシピは、前回作ったのがいつだったかわからなくなるくらいの、たぶん昔の雑誌か何かの切り抜きをスクラップブックに貼り付けてあったものだった。
 スクラップブックはいつでも手に届く範囲のところにあるし、ケーキのレシピが貼り付けてあることもわかっていた。そして、チョコレートケーキを焼いて食べたときの食感も味にも覚えがあった。軽くて、やわらかくて、甘さもほどよく、おやつにうってつけの、ほんとうは度々登場してもいいはずの、好みのお菓子のはずだった。
 なのにどうして何十年もリピートされずにいたのだろう。そう、何十年も。それくらい世の中には、お菓子のレシピもあふれている。
 それをまた、作ってみようと思い出したのも不思議だ。特に理由もなく、突然に、このレシピでチョコレートケーキを作ろうか、と。
 素朴なケーキだ。材料も、仕上がりも。使うチョコレートを、初めて板チョコでやってみた。お菓子作りに板チョコを使うということをしたことがなかったが、チョコレートの値段もどんどん高くなるし、製菓用だっていつも時期的に手に入りにくかったりするので、投げやりというわけでもないが、あまりこだわらなくてもいいのでは?という結論に達したのだ。
 出来上がったものは、ふんわりやわらかという想像に反して表面はわずかに硬め、中はやわらか、だった。板チョコのせいかどうかわからない。ただ、レシピ通りに作ったが、生地の量のわりには大きな型を使うことになっていると思いはしたものの、その通りの型を使ったため、随分少なめの生地だとは感じた。
 フォークを入れたときのサクッという感覚と、中のやわらかな生地。思いがけず手に入れた味わいは、けっこうお気に入りのものとなった。


by reiko


 コージーコーナー。
 昔、東京で暮らしていた頃は、最寄駅だった中野駅前のアーケードの並びにあり、ジャンボシュークリームを買うのが日常だった。100円ちょっとで、中にカスタードクリームがたっぷりつまったシュークリームを買えるのが、何でもない日々の中の楽しみだった。
 甘いものが食べたい。けど、これが食べたいといったはっきりした欲求がない時にもまた、コージーコーナーに寄った。甘いものが食べたいという小さな気持ちを満たすのに、本当にちょうどいいのである。
 カットが大きいケーキはたまにの贅沢で、大体はジャンボシューが目当て。そんな習慣も、私が地元に戻った時に途切れた。
 地元にコージーコーナーがないというわけではないけれど、家からは少し遠い。バスと電車を乗り継がないといけない。中野にいた頃は家から徒歩10分だった。その立地による手軽さが理由で、あの頻度で通ったていたのだと実感した。
 そんなわけで、以前ほどは頻繁に通わなくなり、他のケーキ屋さんを利用することもあったわけだが、どうも最近、またコージーコーナーが恋しくなってきている。というのも、個人店の濃厚で凝った味のケーキが食べ疲れるようになってきたのである。
 そうなると、コージーコーナーのシュークリームは食べやすい。ケーキも。複雑ではない味が美味しく食べられる。
 水戸駅ビル内あるコージーコーナーはすぐ近くにイートインもできる休憩スペースがあって、そこで食べることができる。ケーキを注文する時に頼めば、使い捨てのフォークも買えるから、とても便利だ。
 歩き疲れたら、休憩がてらにケーキを食べて、ほっとする。駅ビルでケーキを食べたら、家へのおみやげにシュークリームも買った。距離の手軽さはなくなったが、それでもたまに恋しくて、今でも求めてしまう味である。これからもどうぞよろしく。

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