笠間 北山公園
by noriko
桜もまだ咲かぬ頃、周りを見渡せば、枯枝だらけの林の中を散歩していた。
笠間市にある北山公園に一度訪れてみたいと思い、出かけたのが、春をまだかまだかと待ちわびる、木枯らしの吹く季節。それでも展望台から見る景色は、山々が連なり、気持ちのいいものだった。
帰りの道すがら見つけたのは、池沿いに長く伸びる藤棚だった。春になってこんなに長い藤の河の下を散歩できたら、どんなに喜びに満たされることだろう、と想像するだけで心が弾んだ。
どうしてもあの藤棚を見てみたいと、桜の季節が終わり、そろそろ藤の咲く頃かと見計らって出かけて行った。
駐車場から降りていくと、小川が流れており、水車が回っていた。大きな切り株があったり、山野草が咲いていたりと、なかなかの風情である。
小路を歩き出すと、念願の藤が見えた。満開には少し早そうだが、美しく咲いている。ただ、冬に想像していたほど、長い藤棚いっぱいに花が咲いている、といったほどではなかった。訪れたのが早かったのか、それとも藤の木が減ってしまったのか。
期待が大きすぎてちょっぴりがっかりしたのだが、うららかな春の日の散歩は、それだけで価値のあるもの。
奥の方へ突き進んでいくと、池の淵の小路を囲みながら木々が芽吹き、その間に燃えるように赤いつつじが次から次へと現れた。
すると今度は、朱色の鳥居と小さなお宮が顔を出し、つつじの花の色と競い合う。
今日はこの「朱色」に会いに来たのだな、と思った。
さらに歩を進めると、同じ池のはずなのに、水面は浅くなり、ひっそりとした森の中に湧き出た泉のように、別の景色が広がった。
目を凝らすと、向こう岸には、藤の花が静かに咲いている。
ここに来られたのは、「藤」が仕掛けた粋な計らいにちがいない。
by reiko
森林の中の散策路を歩いていると、パーンパーンと銃声が響く。おっ、と視線を上げればコンクリートの建物が、木々の上に頭を覗かせている。秘密結社の基地のようだ、と特撮を見て育った私は思う。
笠間市北山公園。
以前近くを通りかかった際に、長く連なる藤棚が見え、シーズンになったら来ようと決めていた。実際に訪れてみると、藤はあまり咲いていなかったのだが(今年は他の場所の藤も花数が少なかったので、気象条件などがそういう年だったのかな? と思っている)、新緑の木々が生い茂り、森林散策にはもってこいの場所だったので、ゆったり歩いてみることにした。
散策路のはじまりには小川が流れ、水車がある。頭上に大きな陸橋があり、自分のいる所が谷間なのだと実感する。あまり葉も花も育っていない藤棚の小さな紫を見つけて歩きながら、自然の濃い方へ入っていく。
広い池に沿って山際があり、その淵に散策路があった。ひょこひょこと芽を出し、花をつけて始めている植物たちが足元にあって可愛らしい。池の水面には木々や空の姿が写っていて、芸術的だ。
こんなに身近にこんなにみずみずしく美しい景色があるとは! と驚いた。北海道の山あたりに入らなければ、こんなに綺麗な水鏡は見られないだろうと、勝手に遠くの場所ばかりに思いを馳せていたのだ。自分の近くのことについて、まったく見ず知らずでいたことを反省した。
歩く道の側には、山つつじの赤い花がたくさん咲いていた。藤棚の藤を見る、という当初の目的とは違ったけれど、満開の山つつじが見られて心が満たされた。予定調和でない散策、次第に心が弾んでくる感覚が楽しい。
木々の間を歩いていると、また、パーンパーンと銃声が聞こえた。
誰かが猟をしているというわけではなく、池の向こうに射撃場があるのである。危険はないとわかっているが、自然に囲まれた場所で聞く銃声、なかなかに臨場感がある。サスペンスドラマみたいだと思った。
そして顔を上げれば、森の上に四角く黒々した建物が見えている。戦隊モノの悪役の基地みたいだ(私の脳内でのざっくりしたイメージである)。散策している時は、あれが射撃場なのだと思っていたのだが、この記事を書くために調べたらよくわからなかった。関係ない建物なのかもしれない。だとしたらなんなのだろう……?と不可思議に思う、そんないで立ちの建物だった。
そんなひと欠片の謎もひっくるめて、ワクワクするレジャー体験だった。