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常陽史料館

by noriko


 水戸市にある常陽史料館は、京成百貨店の裏手にあり、ここ数年は、その界隈を散歩することが楽しみのひとつとなっている。昼間なのに比較的静かな街並みと、目に飛び込んでくる季節感、そして近くの公園がセットになって、私にやすらぎの時間を提供してくれている。

 入館するとすぐに、下っていく階段があり、期間ごとに入れ替わる芸術作品が展示されているのだが、階段を降りることによる明るさと開放感が、よりその奥にある部屋とのコントラストを生み出し、音楽に例えるならば、第一楽章から第二楽章へと移っていくような味わいがある。
 時々入れ替わる作品(作家さん)によっても違った世界観に浸れるのと、作品数が多すぎず、飽きることなく拝見できることが、次の展覧会にも足を運びたくなる理由だ。

 今回は、松尾桃陽さんの透かし彫りの器や工芸作品などが並んでいた。
 透かし彫りの器は私にとっては、「懐かしい」気持ちだった。ひとつには、焼き物というと土物の方を好んで使う傾向にあることに始まる。たぶん、笠間が近いということもあって、笠間焼になじみがあるからだ。そのため、長い間陶磁器から遠ざかっており、今回「そういえば昔はこのような器が食器棚に並んでいた」という記憶をやっと思い起こさせられた。
 食器棚には透かし彫りの器も並んでいたのだろうか。それともどこかで見て憧れていたのだろうか。それすらも忘れてしまっていた。でも、懐かしいと思ったところをみると、「好み」だったことには間違いないだろう。

 史料館を後にすると、コスモス、ホトトギス、ミズヒキにカラスウリ……。秋の草花を眺めながら西公園を歩いた。たしか大きなイチョウの木があったはずだ。やはり今年の夏は暑さが厳しかったせいか、実はたくさんつけているものの、いまひとつ元気がなさそうだった。
 夕食は鯵の塩焼きにしようと買って帰る。長崎産だった。そういえば作家の松尾さんは、三十年ほど前に長崎から茨城に移住してきたと言っておられた。


by reiko

 
 常陽史料館。
 ここ数年、気に入って、ときどき足を運んでいる施設である。

 水戸市に本社がある地方銀行・常陽銀行が地域貢献を目的に始めた文化事業の一環で建てられた建物で、貨幣ギャラリーや史料ライブラリーがある。

 貨幣ギャラリーは、お金と銀行の歴史についての常設展示で、千両箱と一万円札一億円分の重さ比べができたりして面白い。いい歳して「一億円って重たーい!」とはしゃいだりして楽しかった。
 史料ライブラリーは、茨城の郷土に関係する書籍や、ゆかりのある作家の本、有名画家の作品集などが並べられている。学校の図書室より狭いスペースだが、蔵書の傾向にまとまりがあるので、目的を持って利用しやすい。本を借りることは出来ないが、数時間、茨城のことについて調べるにはちょうど良い場所だ。

 それとは別にこの施設を訪れる理由があって、それが定期的に開かれる『企画展』である。
 史料館の入り口を入ると、真正面に下りの階段ホールがあり、広々とした踊り場に作品が並ぶ。高い天井から外の光が差しこみ、優しい明るさに包まれたギャラリーだ。さらに一番下まで階段を降りると、左手にも展示室があり、そこにも作品が飾られている。
 毎回、県内で活動されているさまざまなアーティストの作品を無料で観賞できるのだ。

 今回展示をされていたのは、松尾桃陽さんという陶芸家さんだった。青白い綺麗な釉薬で作品が作られていて、美しくもあり、愛らしくもあり、見ていて柔らかい気持ちになる陶器が並んでいた。透かし彫りの技法も用いられており、うっすら光を通す器やシェードに心惹かれた。
 飾られているのは陶器に留まらず、写真や真鍮の作品もあった。写真は『サンドイッチをお皿ごと切ってしまった』ようなモチーフや『りんごに取っ手がついている』モチーフなど、ユーモアがあって面白かった。
 真鍮をくり抜いた作品も多数あり、私は森の中にムササビが潜んでいる様子のモチーフが可愛らしくて、とても好きだった。
 陶芸だけに収まりきらない表現が「ああ、アーティストさんなのだなぁ」と感じられて、楽しい展示だった。




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