【Venus of TOKYO】各登場人物のイニシャルと名前考察【アーカイブ】
※ふせったーに投稿した過去記事を、アーカイブとしてnoteに投稿しています。
※もう終演した公演ですが、一応ネタバレがありますのでご注意ください。
・富豪と医師の例から、各人物にはギリシア神話に因んだ名前がある(ヴィーナス、黄金の林檎というVoTのメインモチーフにもギリシア神話が強く絡んでいる)
・富豪と医師の例から、ヴィーナス像に手をかざしたときに浮かび上がるアルファベットはその人物の名前のイニシャルを表している
という仮定のもとでの、各登場人物の名前妄想メモ。
きっともうやっている人がいるかもしれませんが、別のバックグラウンドを持つものどうしをつなげて考えたり、何かの背景を想像したりして楽しむのが個人的に好きなのでその一環。パフォーマンスだけから自分なりのキャラ像を持っている・作りたいという人にはあまりおすすめしません。
ギリシア神話の素養はまったくと言っていいほど無かったので、図書館で本を借りるなどして一から勉強した。楽しかった。
参考文献:
・フィリップ・ウィルキンソン『世界の神話大図鑑』(三省堂、2021)
・オード・ゴエミンヌ『ギリシャ神話キャラクター事典』(グラフィック社、2020)
・杉全美帆子『イラストで読むギリシア神話の神々』(河出書房新社、2017)
・バーナード・エヴスリン『ギリシア神話物語事典』(原書房、2005)
・その他ウェブ上の事典類、Wikipedia
VoT公式の人物紹介
https://venus-of-tokyo.com/character
※参考文献の書名からもわかる通り、一般に「ギリシア」と「ギリシャ」の表記揺れが存在する。本テキストでは「ギリシア」に統一。
~前提~
●アプロディーテー ΑΦΡΟΔΙΤΗ - Aphrodītē
愛と豊穣の女神。オリュンポス十二神の一。
息子クロノスに殺されて海に投げ捨てられたウラノスの男性器が変化した泡から生まれた。
他のオリュンポスの神々とは異なり、「欲望をかきたてる」というただ一つの役目を与えられている。
パリスの審判(不和の林檎)において、最も美しい者に贈られる「「黄金の林檎」」を勝ち取った(後述)。
ローマ神話ではウェヌス(Venus、英語読みはヴィーナス)として知られる。
有名な「ミロのヴィーナス」は紀元前2世紀頃の古代ギリシアで制作されたアプロディーテーの像と考えられている。欠けた腕(左腕)には、パリスの審判で得た林檎を手にしていたという俗説が広く伝わっている。
●パリスの審判(不和の林檎)
オリュンポスで最も盛大な祝宴であったある婚姻の宴に招かれなかった女神エリス(不和の女神)。彼女は復讐のため、「最も美しい女神へ」という言葉を刻んだ黄金の林檎を、宴の席に投げ入れた。3人の女神、ヘーラー、アテーナー、アプロディーテーがこの林檎を自らに相応しいものとして要求した。審判を求められた羊飼いのパリスはアプロディーテーを選び、彼女に林檎を与えた。
なお3人の女神はそれぞれパリスに賄賂を渡しており、アプロディーテーは自分と同等の美女の愛を約束していた。しかしパリスが望んだ美女ヘレネーは既婚者であり、それをパリスが強引に誘拐したことがトロイア戦争の引き金となった。
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「欲望をかきたてる」というアプロディーテーの役割、「不和」をもたらす黄金の林檎、まさにVoTの筋書き通り。
ちなみにアプロディーテー(ヴィーナス)が黄金の林檎を手にすることになった直接の原因パリス Πάρις の翻字形は「Paris」。フランスの首都パリ Parisとの関係はないようだが、ショパン絡みでこのParisがしっかり登場し一つの鍵となっていることは、偶然ではないのかもしれない。
それから、開演前の白黒部屋で流れている波のような音(チャプチャプ、時折ザザーという音も)、どうしてこの音が流れているんだろうとずっと思っていた。
これを書きながら、あれはもしかしたらアプロディーテー(ヴィーナス)が生まれる海の音なのかもしれないと思い至った。
ヴィーナスは海の泡から生まれ、それは同時に欲望と不和の誕生でもあった。これからこのオークション会場で各々の欲望が渦巻き交差することを予感させる、同時に此岸と彼岸の波打ち際の存在を暗示する、そんなサウンドなのかもしれない。
それでは以下、各登場人物について。
~確定枠~
【富豪】
ミダース Μίδας - Midās【M】
プリギュアの王。触ったもの全てを黄金に変える能力("Midas touch")で広く知られている。童話『王様の耳はロバの耳』で、耳がロバになってしまった王様としても有名。
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まさに富豪、というべき人物。富だけでは飽き足らず、女性に関する美術品を集めているという設定はオリジナルのものか。
【医師】
アスクレーピオス Ἀσκληπιός - Asklēpios【A】
医学の神。賢者ケイローンのもとで育ち、イアーソーンのアルゴー船探検隊(アルゴナウタイ)にも参加した(写真家のところで詳しく)。
医術を極め、アテーナーから授かったメドゥーサの血を使って死者を蘇らせていたところ、これがゼウスの怒りに触れて、雷を落とされ命を落とす。しかし死後功績を認められてへびつかい座として天に迎え入れられ、神に格上げされた。
蛇の巻き付く杖のモチーフは彼のシンボルとなり、WHOのロゴにも使われている。
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医術を極めた医神で「死者を蘇らせることができた」というところ、VoTの医師と一致。医師がヴィーナス像に手をかざしたときに現れるのが(恐らく)血液の映像なのは、彼が用いた蘇生効果を持つ「メドゥーサの血」から来ているのではないだろうか。
現代でも医神として有名であり続けるアスクレーピオス。彼が現代に来て最先端の医療技術を見たら、一体どう思うんだろうな。そんな彼が古代ギリシアへ戻って人々を救う。……なんてのは飛躍しすぎか?
~妄想枠(自信度順)~
【盗賊】
ヘルメース Ἑρμῆς - Hermēs【H】
オリュンポス十二神の一。神々の使い(伝令使)として知られる。いたずら好きで悪賢く、抜け目ない。商売や旅行の守護神であるなど多面的な性格を持つ神だが、ここではとりわけ「泥棒」と「嘘つき」の守護神でもあることを挙げておく。
自身も生まれながらの泥棒であり、生まれたその日にゆりかごを抜け出してアポロンの聖なる牛50頭(!)を盗み出した。そして母親に「泥棒は最高の職業だ。自分は泥棒の神になる」と宣言してゆりかごに戻り、ぐっすり眠ったという。翌日盗みの疑いで問い詰められても、「生まれたばかりの自分にできる訳がない」「嘘のつき方も知らない」などと嘯いた。その抜け目のなさをゼウスに買われて神々のメッセンジャーとしての役目を与えられる。また、死者たちを冥界へ案内する役割も持っていた。
なおヘルメースはアプロディーテー(ヴィーナス)に惚れており、アプロディーテーとアレースの不倫がばれて捕らえられた際には「そういう罰を3度受けてでもアプロディーテーの恋人になってみたい」と言い放ったという。
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Hのイニシャルを持つ抜け目のない泥棒の神、ということでこれはすんなり。
ローマ神話における名はメルクリウス(英語でマーキュリー)だが、盗賊に限らずあくまでギリシア語の翻字形を当てたものがイニシャルになっていると推測。また、一応青年の神だが性別はあまり深く考えなくても良いだろう。
ヴィーナスに惚れていたというのも、最初に林檎を盗み出す盗賊らしいエピソード。
【写真家】
イアーソーン Ἰάσων, Iāsōn【I】
ギリシア神話に登場する代表的な英雄のうちの一人。
アルゴー船に乗ってコルキスにあるという伝説の黄金の羊の毛皮を探索した冒険で知られる。彼が集めた勇者50名の乗組員によるこの一行は「アルゴナウタイ」と呼ばれ、医神アスクレピオス(医師)や音楽家オルペウス(シェフ?)もメンバーに含まれていた。
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黄金の羊毛、ではなく黄金の林檎を求めて東京へやって来た写真家。公式人物紹介「東京の伝説となっている林檎を撮ることが出来れば」の「伝説」という言い回しが個人的にずっと引っ掛かっていて、でもこれはイアーソーンを写真家のモデルとして考えればしっくりくると思った。
さらに、写真家宮川一彦さんが2月4日の公式ブログ内で「冒険家」「旅」という言葉を、故意か偶然か度々使われているのを見て、自分の中で写真家=イアーソーン説はより強まった。
たしかに、写真家が招待客を多数引き連れてあちらこちらとクラブ内を暗躍する姿は、アルゴナウタイを率いる冒険家イアーソーンの物語のイメージにそのまま重なる。
そして、もう一つずっと疑問だった「あれだ、あれが本物だ!」と叫ぶのがなぜ写真家なのか、という点。
なぜ「本物」だと思ったのか、という疑問は未だ解消されていないが、なぜ彼にその役割が与えられたのか、という問いにならば、こう答えることはできる。
伝説とされた黄金の羊毛を探し当て、苦難の末に手に入れたのが、アルゴナウタイの主導者、英雄イアーソーンだったから。
【シェフ】
オルペウス Ὀρφεύς - Orpheus【O】
音楽家、吟遊詩人。ヘルメスが作りアポロンに贈った竪琴を授かり、肌身離さず持っていた。その演奏のあまりの美しさに、森の動物たちばかりでなく木々や岩までもが彼の周りに集まって耳を傾けたと言われる。
また、冥界では甘い旋律で渡し守カローンを魅了し、番犬ケルベロスを眠らせ、非情な冥界の王ハーデスをも感動に打ち震えさせた。彼の演奏を聞いたハーデスは初めての涙、鉄の涙を流したという。
紀元前6世紀ごろに栄えたオルペウス教の創始者ともみなされている。
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「その料理で人の感情を左右するほどの腕前」という公式人物紹介。写真家と同じく少し違和感を持って見ていた。この設定は必要なのか、短い人物紹介に入れ込むほど重要なのかと。
しかしこれもあらゆる人の感情を揺さぶる演奏の腕を持つオルペウスをモデルとして念頭に置くと頷ける。
またシェフが栽培する催眠効果を持つ植物、その効果で催眠状態にされてしまう富豪や護衛の姿を見れば、冥界下りの際に渡し守カローンや番犬ケルベロスをいとも簡単に手懐けて大人しくさせてしまったオルペウスの魔法のような演奏を想起するのは難しくない。護衛のモデルがカローンだとしたら、なおさら。
VoTの物語には、音楽家としてはピアニスト(未来から来た女)がいる。このため聴覚を味覚にずらして、オルペウス的「味の芸術家」が誕生したのではないか。
その他の類似点としては、動物たち。竪琴を演奏するオルペウスの周りには森の動物が集まってきてうっとりと聴き入っていたといい、絵画でもオルペウスはしばしば動物と一緒に描かれる(たとえばセバスチャン・ヴランクス『オルフェウスと動物たち』 https://www.wga.hu/html_m/v/vrancx/orpheus.html )。
シェフのキッチンにも、様々な動物が所狭しと並ぶ。多くの下半身が人間なのはなぜなのか、これはまだわかっていない。舞踏会と少女の食事の際に現れる、上半身が動物の者たちも謎。ただ、オルペウスが始祖したとされる密儀宗教「オルペウス教」にヒントがあるような気がしている。これについては長くなるのでまた機会があれば書きたい。
それから、シェフにはもう一人頭文字【O】を持つモデルがいるのではないかと考えている。それは、
オイノピオーン Οἰνοπίων - Oinopiōn
ディオニューソスとアリアドネーの子。葡萄酒と酩酊の神である父親からぶどう栽培を教えられた。その名前は「豊かな葡萄酒造り」の意。
劇中でのシェフのイメージは、非常にワインに寄っている(公式人物紹介では意外とそうでもない。ワインの先入観を抜け出したところから上記オルペウスに辿り着けた)。
このことから当初シェフは絶対にオリュンポス十二神の一人ディオニューソスがモデルだろうと思っていたが、イニシャルが違う。そう思いつつ調べていたら、ディオニューソスの子どもが【O】の持ち主だった。しかも父親からぶどうの栽培を教わったという。
自分はまだシェフの小箱を開けられていないので、そこにどういう情報が入っているのかわからないが、シェフの植物栽培に親が深く関わっている気配は感じ取っている。そうか、親がディオニューソスでシェフ自身はオイノピオーンなのか!と(早)合点した。
オイノピオーンはギリシア神話の中では比較的マイナーだが、オーリーオーン(オリオン座の人)を盲目にした逸話で知られる。
オイノピオーンの娘メロペーに求婚し無理矢理手込めにしようとしたオーリーオーンに激怒したオイノピオーンは、父ディオニューソスの協力を得て、オーリーオーンに今まで作った中で最も強い葡萄酒を生のまま注ぐ。さしもの巨人オーリーオーンも眠ってしまい、その隙に目玉をくり抜き、運び出して海岸へ捨てた、という話である。
ワインを使って巨人を眠らせ、その間に事を運ぶ……うーん、これはシェフ!
【護衛】
カローン Χάρων - Charōn【C】
冥界の河ステュクス(憎悪)あるいはその支流アケローン川(悲嘆)の渡し守。
櫂を持ちみすぼらしい身なりをした無愛想な老人で、死者の霊を獣皮で縫い合わせた小舟で彼岸へと運んでいる。渡し賃の銀貨を持っていれば船に乗せてもらえるが、一文無しの死者は100年ないし200年の間その周りをさまよってからようやく渡らせてもらえたという。また、カローンは何度かの例外を除いて生者を渡すことを絶対に拒んだ。
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護衛がVoTの物語のラストにおいて果たす最も大きな役割が、冥界の渡し守カローンとダブる。悲嘆の河を「渡らない」場合もある(マルチエンディングである)という点にも、ある種の「命運の担い手」とも言える存在の介在がちらつく。護衛がヴィーナス像に手をかざしたときの映像が、拳銃の発砲される瞬間、というのも、冥界の番人的な役割を暗示しているように思われる。
また、護衛の象徴は「大量の鍵をぶら下げている」(公式人物紹介)こと。鍵は別の空間、別の世界へと通ずる扉を開くことを可能にする。異界を行き来するゲートの番人。これも河の「渡し守」という役目とどこか通ずるものがある。
それから、カローンの主である冥界の神ハーデースには異名がある。「富める者(プルートーン)」という名前。これがローマ神話にも取り入れられ、ラテン語読みでプルートー(Plūtō、冥王星の語源)となった。「富める者」、そう、富豪。富豪に仕える護衛の名として、カローンはぴったりではないだろうか。
《2月22日追記》
富豪部屋の入口、チュートリアルで護衛が立つちょうど真上の位置に、髑髏がある。
単におどろおどろしい雰囲気の演出くらいにしか考えていなかったが、
護衛がカローンで、富豪が冥王ハーデースの側面を持っているとすれば、この髑髏は冥界の入り口であることを示す象徴とも言えるのでは。
富豪が座っているソファにもたしかVOID札髑髏があった。
なぜ富豪部屋が冥界なのか、というのは、別途考察(妄想)したオルペウス教に関係して説明できそう。
輪廻転生を教義として持つオルペウス教は、当時の主流の死生観であった死者の国=冥界を否定した。
富豪と護衛以外の登場人物たちは、多かれ少なかれオルペウス教に影響されていた(時間を超えることを前提とするVoTの物語におけるメインストリームは、そもそもオルペウス教的死生観に下支えされている)。
しかしこのオルペウス教の輪廻転生の輪から外れた異質な者たち、ありていに言えば「俗物たち」が、富豪と護衛である、と考えることができる。
《追記ここまで》
【贋作家】
ダイダロス Δαίδαλος - Daidalos【D】
天才的な技術を持つ古代最大の工匠、発明家。名前のダイダロスとは「巧みに技を凝らした」という意味。古代のレオナルド・ダ・ヴィンチ的人物。
仕えていたミーノース王の怒りを買って息子イーカロスとともに(自らの作った)迷宮ラビュリントスに幽閉された際、蠟でできた翼を作り脱出を試みる。しかし息子イーカロスは父の警告を無視して空高くまで飛翔し、太陽に接近しすぎて翼が溶け、海へ墜落してしまう。
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「D」をイニシャルに持つギリシア神話上の登場人物はたくさんいるが、天才的な技術を持つ工匠ということで、「あらゆるものを精巧に作り上げる技術を身につけ」(公式人物紹介)「何人もの鑑定士の眼を欺いてきた男」(鑑定士の台詞)、贋作家の名前としてはぴったり、ということでダイダロスを挙げる。
ダイダロスの物語には「糸」という道具が複数回登場する。そのうちの一つは、「糸を引きずりながら歩くことによって迷わずに迷宮を脱出することができる」ことをクレタ王女アリアドネーに教える、というもの。また、息子イーカロスは、ダイダロスがミーノース王の「女奴隷」ナウクラテーとの間に設けた子である。
ちょっと無理があるかもしれないが、贋作家が首から垂らしている赤い糸(紐?)や、妹の奴隷の少女に通ずるモチーフともとれるかな、と思った。
ダイダロスの技術による翼の制作とそれを背負って天高くまで飛び墜落した息子イーカロスの物語は、技術への過信が災いを招く例として現代でも広く用いられる。
VoTにおける技術とは、何だろう。贋作家の精巧な贋作を作り出す技術か、シェフの例の植物栽培技術か、それを用いた医師の装置制作技術か。
~わからん枠~
【鑑定士】
まじでわからん。
【K】の人々(神々)を洗い出して検討したものの、全然しっくりくるものがない。
しいて言うならば未来から来た女つながりで、時間の神クロノス(Χρόνος -Khronos、我が子を喰らうサトゥルヌスじゃない方のクロノス)だが、根拠が弱すぎる。
鑑定士だけ「Kanteishi」のKかな。
《2月22日追記》
ヴィーナスオークションに新規出品される「クロノスの知恵」の存在、および別途オルペウス教について考察(妄想)したことにより、鑑定士はやはり時間の神クロノスではないか、と考えるに至った。
オルペウス教の考察で書いた内容をそのまま貼っておく。
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登場人物名前考察で、鑑定士【K】だけモデルが全然わからない、強いて言えば「未来から来た女」の関係から時間の神クロノス(Χρόνος - Khronos)が近いか……、と書いた。
あまりトーンが上がらなかったのは、時間の神クロノスというのはヘーシオドスの『神統記』などの通常のギリシア神話にはほぼ登場しないマイナーな神だから。
通常のギリシア神話では、「時」は「偶然に現れる」(『オルフェウス教』p.45)のである。
ギリシア神話のメインストリームでほぼ登場しないマイナーな神をわざわざ鑑定士の名前に当てるだろうか……と思ったので、しっくり来ていなかった。
しかし、ヴィーナスオークションの新規出品が発表されたことで、様相は一変。
「クロノスの知恵」。
やはり鑑定士はクロノスなのか……!?そうでなくてもVoTでクロノスは重要なポジションなんだな……!?とクロノスについて改めて調べ始めた。
すると、何度目だというほどまたしても衝撃の事実。
時間神クロノスは、他ならぬオルペウス教神話(に関する文献)に特有の、原初の神だったのだ。
オルペウス教神話における宇宙創成論はギリシア神話の中で独特で、ごく単純化して書くと、まずクロノス(時)があり、クロノスは1個の卵「宇宙卵 Cosmic egg」を産み出した。そこから世界が広がっていった(卵生神話)、というもの。
クロノスは、【原初の「産み出す力」】として非常に重要な役割を与えられている。
考えてみれば、VoTの物語のすべてのはじまりは鑑定士だった、とも言える。
彼のあの一言によって妻は病み、医師が装置をつくり、シェフが植物を提供し、富豪が出資し、贋作家が召喚された。
「時」が動き出し、過去と未来が交錯しはじめた。
そんな鑑定士の名前として、やはり「クロノス」はふさわしいものなのかもしれない。
そしてその説を採るならば、ギリシア神話のメインストリームではなく、異端の密儀宗教オルペウス教を下地として考えないわけにはいかないのではないか。
《追記ここまで》
鑑定士に限らず、これはこうじゃないか、みたいな別の考え・可能性などありましたら、是非是非教えてください~
(2022年2月8日投稿 元記事@ふせったー)