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掌編小説 土星の環

割引あり

ぼくの先生は麦わら帽子をかぶって、黒板の前に立つ。いや実際には、麦わら帽子はかぶっていなかったかもしれないが、先生を思い出すとき、夏の青い草の葉の香りが一緒に思い出される。チョークのかわりに虫取り網さえ持っていたように記憶しているから不思議だ。日に灼けて黒光りしている顔に、白い歯が主張している。

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3,077字

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