物忘れ日記 ときどき猫とか本とか映画とか:Vol. 22 家庭の味
なんだか疲れたなと思うときに食べたくなるものがある。私の場合は、キャベツと卵のお味噌汁。ザクザクと切ったキャベツに卵をひとつ落としたお味噌汁を食べると元気が出る気がする。友人にその話をしたら、「なんだか目玉焼きとキャベツの千切りをお味噌汁に入れたみたいだね」といわれたこともあった。まだ、母が健在で一人暮らしをしていたころ電話で話をしていたら、「今日はなんだか疲れたので、ばんごはんにキャベツと卵のお味噌汁つくって食べた」と母が言って、家族ってこんなところが同じなんだなと嬉しくなったことがあった。
![](https://assets.st-note.com/img/1728990701-UBY6SThQ28t1vV5rsNDHcdaC.jpg)
その昔、母がお嫁に来て10日ほど経ったころ、同居していた祖母、母にとってはお姑さんから「お嫁に来て、何か食べられないものはあった?」と聞かれ、母は正直に「お味噌汁に茄子と御素麺が入っているのが苦手でした」と答えたところ「あら、それは困ったね」と言われたそうだ。なぜなら、茄子と御素麺のお味噌汁が、父(母にとっては夫、祖母にとっては息子)の一番の好物だったから。
茄子と御素麺のお味噌汁は、実家では定番で、定期的に登場していた。母は嫌いなものを克服したんだろうか。それとも、夫が好きなものならばと用意していたんだろうか。そこまでは詳しく聞いていないけれど、母のお嫁さんとしての来し方を感じて、思い出すたびにほっこりした気持ちになる。
考えてみれば、お味噌汁や鍋の具は家庭によってさまざま。家庭の味には、そのおうちならではのストーリーがあるのかもしれない。
あるとき、友達で集まって「すき焼き」をつくることになり、買い出しに出かけた。牛肉、白菜、焼き豆腐、と材料を買いそろえていくうちに、友達のひとりが「あれ?すき焼きって、じゃがいも入れないの?」と言った。「じゃがいも入れるんだっけ?」と他のみんなも考えたらしく一瞬の間のあとで、別の友達が「じゃがいもなんて入れないよ。じゃがいも入れたら、肉じゃがになっちゃうよ」と言って、大笑い。「じゃがいも」を言い出した友人は、「あ、そうか、肉じゃがになっちゃうか」と言いながらも釈然としない様子。友人にとっては、ある意味カルチャーショックだったのかもしれない。
「じゃがいも」を入れる友人は、大食漢だった。楽しそうに美味しそうにいつまでも食べていたのを覚えている。そして、その友人は3人兄弟だった。すき焼きにじゃがいもを入れるのは、そんな大食漢3兄弟の底知れない食欲へのおかあさんの対応策だったのかな。
キャベツと卵のお味噌汁も茄子と御素麺のお味噌汁もじゃがいも入りのすき焼きもみんな大切な家庭の味。「あれが食べたいな」と思う家庭の味があるのは幸せなことだ。
おかあさん、ありがとう。
![](https://assets.st-note.com/img/1728990949-1XtK9lAf0d3LjNaJy4B5QFZb.jpg)