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2018年5月福島、正西寺

<続き>

踏切を渡り、ホットスポットがあると聞いていた正西寺へ向かう。

モニタリングポストは0.28μSv/h。γ線しか測れないエアカウンターSとほぼ同じ数値だった(つまり低めに出る)。

低めといっても、0.28μSv/hは福島県外では立入禁止で除染の対象となる。それが福島県内では3.8μSv/h(年間20mSv)以下で避難指示解除となり、乳幼児も出入り自由、それどころか生活も可能ということになっている。

浪江町民は昨年3月末に「自主避難者」となった。

廃墟が並ぶ。

緑が美しい。しかしその向こうに見える白い壁の内側には、大量のフレコンバッグが置かれている。

家の中にまで雑草が生い茂る。自然は逞しい。

なんとも痛々しい光景。

見えてきた。

立派なお寺だ。

障子の破れ具合を見てもわかるように、主はまだ戻ってはいないようだ。

墓地付近。高い。しかしもうこの数値では驚かない。

神社の敷地内からフレコンバッグの山を見下ろす。

寺を出てすぐ、目の前の道でスイッチを入れたところ、この数値。

全て枯れた花。

数値はさらに上がる。放射線の感知を知らせるアラーム音は鳴りっぱなしだった。

フレコンバッグの山が築かれる前は、どんな風景だったのだろう。

3μSv/hを超えてもまだ数値は上がる。

結局、3.3μSv/hまで上がった。何度でも書くが、これは帰還困難区域ではなく、避難指示解除された場所だ。

昨年11月の取材では、帰還困難区域内の双葉町、まどか保育園の園庭で4.06μSv/hを記録した。それに近い数値を避難指示解除された場所で目の当たりにし、なんともいたたまれない気持ちになる。

マスクを持参はしていたが、完全にそのことは忘れていた。それどころではなかった。麻痺していた。

<続く>


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鈴木邦弘
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