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元自衛官が語る自衛隊と憲法 —国防の任務を妨げる憲法(「日本の息吹」令和5年8月号より)

日本会議地方議員連盟 幹事長代理 
菊地崇良 仙台市議会議員
日本会議地方議員連盟 幹事 
大山孝夫 那覇市議会議員
日本会議地方議員連盟 幹事 
白石勝士 北斗市議会議員

陸海空それぞれの自衛官経験を持つ3名の地方議員が、憲法と自衛隊、自衛隊と国民、そしていま日本が置かれた状況を現場の目線から語り合う

自衛隊が直面する課題


— 今回は、元自衛官の地方議員の先生方にお集まりいただきました。元自衛官という立場から考える憲法改正について、お話いただきたいと思います。まず、今日の自衛隊が直面している課題について、先生方のご体験からお話しください。

菊地
 自衛官というのは、例えば歩幅が何センチなどと、その行動は法令や法規で定められています。行動根拠の最上位にある日本国憲法で、「自衛隊は違憲である」などと言われてしまうのは、国や国民のために命を懸ける上で、非常に複雑なものがあります。私もそうでした。
 昨今、自然災害のみならず、武力攻撃などの蓋然性も高まっています。そういう中で、自衛官の力となるのは、家族と郷土への愛、そして国民からの信頼です。最高法規である憲法で、自衛隊の存在をきちんと定め、国民の皆さんが、名実ともに「やっぱり自衛隊は私たちの国の守りだ」ということを認識できるようにしてほしいと切に願っています。

自衛隊は抑止力になり得るのか

大山
 私は沖縄に住んでいるので、特に尖閣諸島や台湾に対する中国の動向は気になります。仮に台湾有事が起ったり尖閣諸島に中国人が上陸したりしても、自衛隊が行動を起こすきっかけはなかなかできないと思っています。中国が沖縄本島と宮古島の間の海峡を戦闘機で通過しても、日本は何もできない。それを見た中国は、日本は法律上、何もできない、ということを知っているわけです。これで台湾有事が起きたとしても、自衛隊は出てこれない、と考えるわけです。
 尖閣諸島も同じで、例えば中国人が上陸しても、軍隊じゃなく漁民ですと。台風で流れ着きましたとか、難民です、でも銃はもっています、などという状況になった時に、果たして自衛隊は出動できるのか、という問題があります。
 日米安保条約の第5条があるから米軍が戦ってくれるんじゃないか、という人もいますが、自衛隊が出動することが前提です。
 自衛隊がどんなに良い武器を持ったとしても、出動できなければ、自衛隊は抑止力となるのか、というのは疑問です。

菊地
 対外的に見て、抑止力にならないというのは、本当に大きな問題です。憲法に、我が国には自衛隊が存在し、国を守るためには行動する、という国家意志を示し、書き表すことが必要だと思っています。

白井
 日本国憲法の前文や9条では、戦争とは何か、どのような戦争を拒否するのか、といったことが曖昧です。ロシアとウクライナの戦争を見ていてもわかりますが、侵攻する側と防衛する側があるわけです。どちらも一括りで「戦争」と捉えることはできないと思うんですね。国を守るための「防衛戦争」は当たり前に認められるものですから、「侵略戦争はやりませんよ」と謳えばよいはずです。
 集団的自衛権についても、国連憲章で十分に認められているものなのに、「保有すれども行使せず」とか言っている。じゃあどうやって軍事同盟結ぶんだと思うわけです。
 先ほど尖閣や台湾有事の話も出ましたが、憲法改正されるまでの間でもきちんと対応できるように、例えば安全保障基本法みたいな、憲法に準じるような法律を整備すべきだと考えています。

— 自衛隊が抑止力としてきちんと機能することは、今日の国際情勢を見ても、喫緊の課題ですね。

自衛隊への正しい理解を

菊地
 そのとおりだと思います。だからこそ、関連法制と必要な防衛力を整備するとともに、十分とは言えない自衛官の処遇を改善し、しっかりと任務にあたることができる体制の見直しを急ぐべきなのです。
 一方で、自衛隊を様々な分野で守る、ということも考えなくてはなりません。一例として、過日の新聞に、中国からきた研究者が、流体力学実験分野の情報を自国に持ち帰って極超音速ミサイル関連の装置開発に寄与したという報道がありました。
 日本の最先端技術が、中国の兵器開発に利用され、我が国の防衛と自衛官の命が脅かされることのないよう、流出を食い止めるための、しっかりとした法整備も必要です。

白井
 もう一つ、自衛隊に必要なのは、若い隊員をどう確保するか、という問題ではないでしょうか。
 私は海自出身ですが、海自に入隊する自衛官のうち、ほとんどが艦艇勤務を希望しないんですね。ほかにも、教官をやっている知人がいますが、「最近の隊員はどうか」と聞くと、「ちょっと強く指導すると、下向いてボロボロ涙流して泣くんだぞ」と。
 自衛官の待遇改善は必要だと思いますが、果たしてそれだけで自衛官が増えるのか、というとそれも疑問です。

大山
 自分の経験からも、自衛隊は肉体的にも精神的にもやっぱりきついんです。じゃあそれを緩めればよいかというと、いざというときに戦場で戦力にならないと意味がない。ある程度不条理な現実を受け止める力を持たないといけないわけです。
 それから私は航空救難団のパイロットでしたが、そこにはメディックと呼ばれる救難員が同乗しています。看護師資格は持っていますが、法律上、医者の診断がなければ、注射を打てないんですね。
 要は戦場で怪我人が出ても、すぐに鎮痛剤などの注射を打てないんです。もちろん訓練でも打てません。一事が万事で、他にも実戦に近くない訓練をしているところがあります。私たちは本番の一発勝負で負けるわけにもいきませんから、訓練の練度を上げることが必要なのです。

白井
 私はそれらは、憲法で軍隊とは何か、戦争とは何か、ということがきちんと定められていないことが要因ではないかと思っています。自衛隊を応援してくれる人の中に、自衛隊は人を傷つけない聖人君子のような存在だと思っている方が時々います。かつて共産党が「自衛隊は人殺しの訓練をしている」と批判したことがありました。その表現が的確かどうかは別として、いざ武力で我が国を攻撃する者があれば、我々も武器を取って、相手に反撃するわけです。時には人命を奪うこともあるかもしれませんが、自衛隊は国家国民と国益のために行動するわけです。
 軍事組織というものを正しく理解できず、自衛隊は聖人君子の集まりだ、みたいな極端な期待は、有事の際に却って足かせになってしまいます。法の整備と同時に、自衛隊がどのような組織なのかということへの正しい理解が広まっていってほしいと思っています。

(令和5年6月14日インタビュー)

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