養殖場から逃げ出したデカいニジマスを釣りたい!
科学論文を釣り情報へ還元する第24回目の投稿です。
今回のテーマ:脱走デカニジを探して
今回はどちらもノルウェーの養殖場から逃げ出したニジマスについて書かれた論文ですが、1本目が逃げ出したニジマスはどこへ行くのか?、2本目は逃げ出したニジマスの食生活について研究したものになります。
脱走したニジマスの行方・・・
さて、今回の論文はノルウェーのフィヨルドの養殖場(養漁場、養鱒場とも言われる)から逃げ出したニジマスを追跡しています。
調べてみたら、北欧のフィヨルドってかなり巨大で入り組んでおり、1つのフィヨルド水系だけで200 km近く、深さは1,000 m近くになるそうです。
※フィヨルドのイメージ
こんな広大な場所ですから、いくつも養殖場があり、ニジマスはアトランティックサーモン(タイセイヨウサケ)と並んで、ノルウェーの水産上、大変重要なサカナになっています。
フィヨルドは基本的には山々から流れ込んだ淡水がベースですが、海水が一部入り込んで表層は汽水のような状態だそうで、ニジマス養殖(この場合はスティールヘッドに近い)にはうってつけみたいです。
今回の研究では、5月と8月にあえて養殖場のニジマスを脱走させて、それを追跡しています。その結果が↓↓のイメージです。
このように、5月放流で3~5km、8月放流え5~10kmと若干の差はあるものの、たいして遠くへ逃げていないということがわかっています。
しかも、一度遠くへ離れても、放流した場所の近くへまた戻ってきています。
今回のニジマスは40~50cmの成魚だそうですが、このサイズくらいになると養殖場からの馴染みのあるニオイや音に反応して、自分の元居た場所へ帰ってくる可能性があるそうです。
(実は音響装置による条件付け(しつけ)で脱走魚を捕獲する方法もあるとか)
脱走ニジマスの食事情?
次の論文では養殖場から脱走したニジマスをなんとか捕まえて胃の内容を分析しています。その結果をまとめると、下のイラストようなイメージです。
脱走してから3か月程度経過して捕獲した、20~30cmのスモルト化(銀毛して海水適応可能な状態)したニジマスでは、主に小魚(シラスやニシンの幼魚など)や虫などを食べ、コンディションも良好だったそうです。
一方で、同様に捕獲された成魚(40~60cm)ではほとんどが空腹で、胃から発見されたのは木の破片や藻のようなものばかりだったそうです。
つまり、小型のニジマスはうまく自然界に適応して様々な餌を食べていたようですが、成魚のニジマスは養殖場で食べていたペレットに似た木の破片などを食べ飢えをしのいでいたということになります。
脱走した当時の成長段階によってここまで自然界への適応能力が違うというのはなかなか驚きですね。
脱走したニジマスを探して・・・
10~20年前くらいの話ですが、私がよく釣りにいくS川の近くにニジマスやヤマメなどを飼育していた養殖場がありました。
この養殖場では台風が来るたびにサカナが脱走していて、その話を聞くたびに、心を躍らせてそのS川へ釣りにいったものです。
というのも、この養殖場の大型ニジマス(50cm~)が飼育されていた池が最もS川のそばにあり、確率的に一番ここのサカナが逃げていたからです。
そして、やっぱり噂通りで、台風の後1カ月は友人たちの中でも大型ニジマスの釣果がたくさん聞くことができました。
私は養殖場産とみられるデカニジは釣り上げることはできなかったのですが、養殖場から数百メートル離れた場所で、伯父が60cmオーバーを釣り上げて自慢してきたことは今でも忘れません。。。
(ちなみに、そのサカナは元気だったので養殖場へ伯父さんと一緒に返しに行きました。すると、お礼に自家製のニジマスの燻製をもらったのですが、それがめちゃくちゃ美味しかったのが今でも記憶に残っています)
その時使っていたのが、コイの餌(練り餌を丸めたもの)で、まさしく養殖場のペレットに似たものだったのです。
今回の論文で説明されたように、実は脱走したニジマスはそんなに遠くへは逃げて行かなかったり、大きいサイズほど他の餌を食べていなかったりすることは、昔の経験からよく理解することができました。
最近の養殖場は大変管理が行き届いており、しょっちゅう逃げ出すことはないみたいですし、それでも逃げ出すような大型の台風自体、来てほしくないですよね。
(とは言え、2003年のある暴風雨で85,000尾のニジマスが脱走した時の研究がこの2本目の論文です。どんだけ逃げんねんって話ですよね)
自然界ではほとんどお目にかかれない大型のニジマスに出会えるチャンスではあり、夢を見ていた少年時代の話でした。
それではまた次回お会いしましょう。
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