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1回釣られたサカナは釣られにくい?

科学論文を釣り情報へ還元する第19回目の投稿です。

今回のテーマ:1回釣られたサカナは釣られにくい?

今回の論文はこちらです。
Meka, J. M. (2004). The influence of hook type, angler experience, and fish size on injury rates and the duration of capture in an Alaskan catch-and-release rainbow trout fishery. North American Journal of Fisheries Management, 24(4), 1309-1321.

今回のポイントは・・・・
①経験者はサカナにやさしい?
②釣り方によってサカナのケガのしやすさは違う?
③1回釣られたサカナは釣られにくい?

今回の論文では、ニジマスを対象とした釣り(ルアー&フライ)に際して、
針の種類や経験の違う釣り人(初心者&ガチ勢)の釣果効率やサカナへのダメージを科学的に検証しています。

針の種類やサカナへのダメージはこれまでも記事でもいくつかご紹介してきましたが、今回は釣り方や釣り人の経験値まで掘り下げて見ていきたいと思います。

①経験者はサカナにやさしい?

さて、今回は初心者とガチ勢(経験者)の比較をしているのが最初の面白い点です。

今回の釣り試験では、人生で初めて釣りをする人から年間100回以上釣りをする経験豊富な釣り人まで、さまざまな人が参加しています。

そこで、人生でサカナを釣った回数が10回以下の人を「初心者」、年間10尾以上サカナを釣る人を「ガチ勢」として分けました。

なお、 初心者には、試験前にレッスンを受けてもらい、サカナの適切な取り扱いとフックの取り外し方について指導を受けてもらいました。

釣れた数やサカナにケガをさせた数を比較したのが下記の表です。

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ものすごい差ですよね。出来たら釣法の差も出してほしいところだったのですが、詳しくは説明がありませんでした。

また、サカナのサイズが大きいほどリリースまでの時間が長いことがわかりましたが、特に経験者の方がリリースまでの時間が長かったそうです。

つまり、初心者に比べてもガチ勢の方が大型のサカナが釣れるということを意味します。

大型のサカナが釣れると写真を撮ったりすのでやはりリリースまでの時間は伸びていきますよね。

そして、初心者は80%近くケガをさせてしまう結果になっています。

ファイト時間やキャッチ後のリリースするまでの時間に釣り人の経験の差は影響しないということでしたが、小型のサカナのケガしやすさが大きく異なっていました。

小型のサカナのフッキング場所は様々で、目や鰓などを貫通しやすく、ケガをしやすいという結果だったため、どちらかというと小型を釣ることの多かった初心者がケガをさせやすかったのかもしれませんね。

②釣り方によってサカナのケガのしやすさは違う?

今回はフライフィッシングではノーマルフックかサークルフック(いわゆるネムリ針)、ルアーはシングルフックのスピナーを使用しているようです。

バーブ(反しあり)とバーブレス(反しなし)の針をそれぞれの釣り方で利用しているので、
フライフィッシングでは4種類
ノーマルフック×バーブ
ノーマルフック×バーブレス
サークルフック×バーブ
サークルフック×バーブレス

スピナーによるルアーフィッシングでは2種類
ノーマルフック×バーブ
ノーマルフック×バーブレス

計6パターンの釣法の比較をしています。

トラウトフィッシングは「ルアーよりもフライの方が釣果が良いとか?」など色々な声を聴きますが、果たして結果はどうなのでしょうか?

結果を下記の表にまとめました。

ルアーはフッキング(針に掛かかる)してもバラしてしまう数(逃げられる数)がちょっと効率が悪いようにみえますね。

初心者や経験者の差は考慮されていない結果なのですが、フライフィッシングの効率は良いようです。


以前の記事では、フライフィッシングの方がバラシが多いと書きましたが、今回の結果は違うようですね。

また、餌釣りの効率の良さについても↓↓の記事にありますが、餌釣りのバラす確率は10~20%程度というのはやはり驚異的な数字かもしれませんね。


次にケガをさせてしまった比率をみてみましょう。

まず驚きなのは、だいたい釣ったサカナの半分にはケガをさせてしまっているということですよね。

以前、バーブ(反し付き)もバーブレスも釣果は変わらないし、死亡率にも差がないという記事も書きましたが、今回のルアーではバーブとバーブレスで20%以上が差があります。


一方でサークルフックはバーブもバーブレスもほぼ同じ結果ということで、しかもケガはノーマルフックよりもさせにくいようにみえます。

しかし、シーバスの記事で書きましたが、サークルフックって顎を貫通させやすく、今回も針の取りはずしの時間がノーマルフックよりもかかるようなので、その点は注意が必要です。


筆者は今回の試験を経て、直接死に至るような傷以外にも、その傷が寄生虫や病原菌による抵抗力の低下などには注意が必要とまとめています。

③1回釣られたサカナは釣られにくい?

今回の試験では、過去に釣られた際の傷(フッキングによる傷)が残っているかどうかを調べています。

大型のサカナほど過去の傷が残っていたことがわかり、44cm以上の大型のサカナの53%、それ以下の小型のサカナの23%に過去の傷が残っていたそうです。

まとめると、釣り上げられたサカナの29%が少なくとも過去に1回は釣り上げられた傷が残っており、そのうち38%は2つ以上の傷がありました。

つまり、(養殖場や管理釣り場ではなく)自然界においても、1回釣られたことのあるサカナでも3尾に1尾は再度釣れる可能性があり、さらにそのうちの約4割は2回釣られてもなお、まだ釣れる可能性があることを意味します。

小さいうちに釣られた経験があっても、大型化してからまた釣られる可能性があるのですね。
そして、大型のサカナをバラしてしまうと凄く落ち込むんでしまいますが、そのサカナといずれまた出会う可能性はちゃんと残っているのです。

ただし、過去の傷跡を調べたところ、アゴやその他成長に影響のない部位にフッキングしたサカナが全体の93%だったので、やはり釣った際に重症にならないようなケアは重要ですし、フッキング位置は気にする必要がありますね。


今回は3つのポイントで論文をご紹介しました。
以前の記事でご紹介した内容でも、釣り環境が変わってくると、結果は大きく変わってきますね。
バーブorバーブレス問題もまだまだ解決までには時間がかかりそうです。

それではまた次回お会いしましょう。

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