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夏に釣れる大型レイクトラウト!?

科学論文を釣り情報へ還元する第21回目の投稿です。

今回のテーマ:大型のレイクトラウトを釣るには?

今回ご紹介するのはこちらの論文です。
Morbey, Y. E., Addison, P., Shuter, B. J., & Vascotto, K. (2006). Within‐population heterogeneity of habitat use by lake trout Salvelinus namaycush. Journal of Fish Biology, 69(6), 1675-1696.

今回は湖に生息するレイクトラウトの夏場の移動に関する研究をご紹介します。

この論文を一言でまとめると、
一般に夏場になると深場へ移動しまうと思われたトラウトも実は積極的に沿岸域に餌を探しに来ている、また、同じ湖に生息する同じ種類のトラウトも主食はそれぞれ違う、というお話でした。

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※写真はWikipediaより

レイクトラウトと言えば、日本国内では中禅寺湖が有名ですよね?レイクトラウトはメーターオーバー(体長1m以上)も多いですし、好きな方も多いのではないでしょうか。今回はカナダのルイーザ湖に生息するレイクトラウトの移動と主食に関する研究です。

レイクトラウトは夏でも沿岸に?

ルイーザ湖で生息にする40~55cmのレイクトラウトに発信機を装着し、夏場の行動を追跡した結果、レイクトラウトが最も好む水温(最適水温)である10℃付近を超える水温の場所へ頻繁へ移動していることがわかりました。

高水温の場所、つまり沿岸域の浅い場所になりますが、特に夜明けと夕暮れを狙って移動していることがわかっています。


釣り好きの方はご存知通り、朝マズメと夕マズメが湖の釣りでは定石ですが、ベストシーズンとされる春や秋ではなく、深い水温帯に生息するとされる夏場ほど顕著になるそうです。

では、なぜ夏ほど深い場所から浅い場所への移動が顕著になるのでしょうか?

ルイーザ湖に生息するレイクトラウトは、湖温の上昇に応じて体温が上昇することでエネルギー消費が活発になりますが、より大型で栄養になる餌(特に沿岸の魚類)を捕らえるために温水の生息地で餌を食べるようになるそうです。

水温の高い沿岸域のへの滞在時間は短いようですが、これはレイクトラウトがなるべくエネルギー消費を抑えるようにしていると考えられます。


また、日が昇って水温が高くなればそれだけエネルギー消費が多くなってしまいますから、夜明けの気温が最も低くなる時間帯に頻繁に餌を食べるに出ることで、エネルギー消費を節約していることが考えられますね。

レイクトラウトの夏場の餌のなんと75%以上が沿岸域の魚類だったとのことですから、夏場ほど積極的に魚類など栄養の高い餌を求めて移動しているのでしょうね!

同じレイクトラウトでも主食は違う?

同じくルイーザ湖に生息するレイクトラウトでも、上記のように積極的に沿岸域の浅場へ出かけるグループと、沿岸域に全く出ないグループがあるそうです。

他の湖のレイクトラウトでも水深の好みによってグループが分化していくことが報告されており、例えば、昆虫を好んで捕食するグループと魚類を好んで捕食するグループに分かれることは往々にして起こっているようです。

沿岸域出てこないグループ、つまり夏場は深場に留まるグループは主に動物プランクトンを主食しているそうで、沿岸域で積極的に魚類を捕食するグループに比べると成長が緩く小型になる可能性があります。

つまり、夏場は沿岸域に出てくるグループは栄養価の高い魚類を捕食し、どんどん大型化していくわけですね。

大型化すれば、もし小型のレイクトラウトが沿岸域に出てこようとしても、それを排除し優先的に魚類を捕食するため、差別化はどんどん進んでいくことになりますよね。

これは我々釣り人にとってこの話は大きな意味をもつわけです。特にオカッパリで釣ろうとするならば、積極的に魚類を捕食しようと大型のレイクトラウトが沿岸域に現れるというのは、なんとも好都合なお話ですよね。

さて、今回は直接釣り情報に還元できるお話でした。
中禅寺湖のレイクトラウト、昔から1回は釣ってみたいなと思っていますが、なかなか難しいそうですね。

ちなみに、この話の中にレイクトラウトの体温が記載されていました。
一般的には10℃前後だそうですが、当然、変温動物なので夏場に沿岸域へ積極的に出てくるレイクトラウトの体温は20℃以上まで上昇し、沿岸域へ出てこない個体と比べても代謝が良いそうですよ。


それではまた次回お会いしましょう。

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