魚をキャッチしたら2分以内に水へ帰してあげよう
科学論文を釣り情報へ還元する第9回目の投稿です。今回は短めです。
今回のテーマ:魚をキャッチしたら2分以内に水へ帰してあげよう
この論文では、キャッチ&リリースする際、空気へ触れさせることがどのくらい魚にとってダメージとなっているか?を調べた論文です。
アメマスやイワナの仲間のブルックトラウト(カワマス)で研究されています。
この論文を結論を一言でまとめると、
空気中へ60秒放置しても遊泳能力も落ちないし死亡もしない。120秒では遊泳能力が75%低下したが3か月間死亡しなかった、ということでした。
リリース後2分以内に帰してあげよう
この論文では、フッキング後に魚をキャッチするまでを模倣するため、水槽内で30秒間手を突っ込んで魚を追い回しました。
(想像すると、なんか雑ですね。笑)
そのあと捕獲して、0~120秒の間、空気中に放置し、水中へ戻して魚の遊泳能力を調べています。
また、この試験の後3か月間継続して生存を確認しています。遊泳能力は臨界遊泳速度という速度(前回もご紹介)を調べています。
※臨界遊泳速度とは、好気呼吸と嫌気呼吸の境界となる速度
(人間でもダッシュする時は嫌気呼吸といって、酸素を使わずに呼吸します。言うなれば、ジョギングからダッシュに切り替わる速度が臨界遊泳速度になります)
その結果、30~60秒空気中に放置した魚は、遊泳能力に全く影響がなく、その後、死亡もしませんでした。
一方で、120 秒間放置した魚の半数近くは、泳ぎたくない、あるいは全く泳げなくなっていたようです。
空気に晒されることで、魚にどんな影響があるのでしょうか?
過去のニジマスの試験では、疲弊するような運動後60秒間空気に晒されると、空気にさらされなかったニジマスと比較して血中の乳酸濃度がはるかに高いことがわかっています。
ブラックバスを対象とした研究では、空気曝露時間が長い場合(120秒)は、空気曝露がない場合に比べて心臓血管系に長期間障害を与え、細胞内のエネルギー貯蔵が大きく減少することがわかっています。
このように空気への暴露が魚に対して生理的障害を与えてしまうことが多く、短期間では遊泳能力に影響し、場合によっては心臓や細胞内にまで長期間影響を与える可能性があるのです。
今回の研究よりも、さらに苦しい状況で行ったニジマスの試験の例では、運動後の空気暴露30秒で生存率が25%減,60秒で60%減少することも報告されています。
通常の釣りでは、2分間という目安で良いとは思いますが、やはり魚を早く水へ戻してあげたいものですね。
魚の負担を軽減するには?
魚への負担を軽減するために、どうしたらよいでしょうか?
私の過去に書いた記事にありますが、バーブレスやバーブあり、シングルフックかトリプルフックかという問題は、フックを外す効率に違いはありませんでした。
ただし、フッキングの位置は結構重要です。
例えば、深い位置にフッキングした場合、フックの取り外し時間がかなり伸びるだけでなく、魚へのダメージが大きく、その場で死亡する可能性も高まります。
今回の筆者も指摘していますが、餌釣りよりもルアーやフライフィッシングの方がよりフックを外す時間が短いと言われています。特に糸を弛ませボ~と待つ餌釣り(スラックラインフィッシング)は釣り針が魚へ深く食い込む時間が増加するそうで、結果的に魚へのダメージは増加すると言われています。
いずれにしても、キャッチ後のリリースまでは速やかに。
すぐにフックを外し、写真を撮影したら優しく水へ帰してあげたいものですね。
それではまた次回お会いしましょう。