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釣られやすい魚の性質は?

今回のテーマ:釣られやすい魚の性質は?

今回ご紹介するのは、下記の論文です。
Härkönen, L., Hyvärinen, P., Paappanen, J., & Vainikka, A. (2014). Explorative behavior increases vulnerability to angling in hatchery-reared brown trout (Salmo trutta). Canadian Journal of Fisheries and Aquatic Sciences, 71(12), 1900-1909.
https://www.nrcresearchpress.com/doi/full/10.1139/cjfas-2014-0221

この論文では、養殖施設(孵化場)で飼育されているブラウントラウトを2つのグループに分け、(①標準的な飼育環境で飼育されたブラウントラウト、②過密な環境で飼育されたブラウントラウト)
飼育池内の行動の違いやフライフィッシングに対する釣られやすさを評価しています。

結論を一言でまとめると、
標準飼育された場合は探求心が旺盛な個体が多く、体サイズに関係なく、よく動き回るブラウントラウトほど釣られやすい。
また、近くに仲間の魚が多いと釣られやすい可能性もあるようです。

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釣れるやつほどよく動く**

この試験ではまず最初に飼育池の中でのブラウントラウトとの行動を観察して、行動量をチェックしています。その後、釣り試験用の池に移しています。その結果、そもそも釣られやすい魚は事前飼育段階でかなり活発な活動をしていたようです。

これは過密飼育よりも密度の低い標準的な飼育魚に多くみられた傾向でした。ただし、過密飼育の中でもよく動く魚は同様に釣られやすいようです。

これはあくまで性格的なものであり、遊泳能力が問題ではありません。
つまり、フライフィッシングでフライを垂らした際に、積極的に餌を探索する大胆な性格を持つ魚ほど釣られやすいと言えるようです。
では、なぜ探求心旺盛な性格の魚ほど釣られやすくなるのでしょうか?

基本的に養殖施設で育つ魚は、餌や環境をしっかり管理しているので、野生魚(天然魚)より成長が格段に早くなるのは皆さんご存じのことでしょう。
成長が早い場合、(養殖場の定期的な餌だけでは)空腹になりやすく、もともと自然に落ちてくる餌(虫など)を積極的に餌を探しまわる性格になりやすいそうです。
その結果、今回の研究では釣られやすいという見え方になったものと考えられます。

釣りする際に私たちも気にする「活性の高さ」は、養殖場ではこういったモチベーションで行動に現れているのかもしれませんね。

魚影が濃いほど釣れる理由

私たちが釣りをする際は、やはり魚影の濃さを基準に釣り場を選択しますよね。
湖や海では回遊経路になる岬の先端や、川では複雑な地形から形成されたプールなどの「居着き」の場所がそれにあたります。
これが養殖場産魚の場合は、成長が早くなおかつ過密飼育ほど養殖場ほど餌の競争が激しくなるため、漁獲率が上がる可能性もあると言えます。

なので、管理釣り場(釣り堀)にも同じようなことが言えるのではないでしょうか。
例えば同じような数が放流されている池なら狭い方を選び、なおかつ(成長が早い)大型魚がたくさんいる池を選ぶ方が釣果が期待できるのかもしれませんね。

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フライフィッシングのフッキング効率はいかほど**

前回は餌釣り、前々回はルアーで投稿したように、この研究ではフライフィッシング試験でのフッキング率と釣果効率の記載がありました。
今回の研究ではシングル&バーブレスフックです。
是非Fig. 3をご覧頂きたいのですが、この図は魚が多い池ほどフッキング率、釣果効率が高いことを示しています。

注目すべきは釣果当たりのフッキング率です。
84尾の魚がいる池では、フッキング率は60%弱で、そのうちの釣果はそのうち30%弱、つまり、フッキング後の「バラシ」は50%程度ということなります(これは魚の数が変わってもさほど変化しません)。

前々回のルアーでは、フッキング率は最大50%で、釣果はそのうち20~30%、つまりバラす率は20~30%くらい。
前回の餌釣りでは、フッキング率は60~70%程度で、そのうちの釣果はそのうち60%前後、つまりバラす率は20%以下。

フッキングは餌釣り(タイトラインフィッシングの場合)がダントツで、フライ、ルアーという順です。
同じシングル&バーブレスフックで、バラシを考えると、餌釣りがやはり一番良く、フライが一番悪い結果となっています。
環境、釣り人の熟練度などが同じではないので一概には言えませんが、科学的な評価としては間違ってはいないはずなので参考になると思います。

余談ですが、是非読んでみたい科学論文があるのにオープンアクセスになっていない論文があると萎えますね。
本来なら「隣の釣り人が与えるプレッシャー」について科学的な評価をした論文をご紹介したかったのですが、
全文読めなかったので今回は見送りました。。
いつかご紹介できれば良いのですが・・・・それではまた次回。

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