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NIPH フィリピン研修1・講義編
2024年度に参加しましたT.Aです。埼玉の病院で研修しています。
今回は国立保健医療科学院 地域保健臨床研修専攻科 専門課程Ⅲのフィリピン研修編(特に、研修内容について)をお届けします(順番前後してすいません)。
研修内容
1日目(講義)
熱帯感染症について、微生物学教室の先生方から講義いただきました。フィリピンには、日本では滅多に経験しない感染症が流行しており、とくに低所得者層に大きく影響がでます。それぞれの感染症の特徴や疫学、国の取り組みなどに関して教えていただきました。
基本的に全て英語の講義です。フィリピン訛りの英語で聞き取りづらいこともありますが、どの先生もこちらの理解に寄り添って授業を進めてくださるので、心配しなくても大丈夫です。
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2日目 (午前:WPRO訪問、午後:free time)
午前中に、WPROに訪問しました。土埃がまう雑踏をかきわけ、塀を越えるとフィリピンいることを忘れてしまうような綺麗な建物が現れました。
WPROは、日本を含めた西太平洋地域をまとめるWHO機関です。WPROでは、WPROの概要やReaching the Unreached, Data strategyなどについてご講義いただいた後に、会議場や図書館等を見学させていただきました。
日本人の講義は日本語でしたが、日本人以外の職員の講義は英語です。気合い入れていきましょう。
午後のフリータイムは、フィリピン大学からバンをおかりいただき、フィリピン大学の大学院生の同行のもと、イントラムロスやマニラ大聖堂などを観光してきました。最後はSMモールオブアジアという超絶大きいショッピングモールでディナー、ショッピングを楽しみました。
個人的には、このフリータイムを使ってSan Lazoro病院(感染症専門の大きい病院)も見学をしようと思い、病院と個人的に連絡を取ろうとしていたのですが、連絡がとれず、、、。またいつか訪問してみたいです。
3日目(午前:講義、午後:PGH訪問)
午前中はフィリピン大学の微生物学の先生からご講義いただきました。
午後は、PGH(Philippine General Hospital)の感染症科の先生方とケースディスカッションし、そのまま実際に検討した症例の患者さんのところに会いに行きました。
PGHは1,500床ある巨大病院です。PGHは公的な病院で、PhilHealthという公的保険に加入していれば安く治療を受けられます。フィリピンにはPublic hospital とPrivate hospitalがあり、Private hospitalは治療費が高い代わりに病院が綺麗だったり、さまざまな治療やサービスが受けられるそうです。
PGHの救急外来の裏には所狭しとベッドが並べられていて、入院病床が開くのを待っている患者さんが大量に寝ていました。1,500床もあるのに治療費が安いため全国各地から大勢の人が集まってくるため、常に病床稼働率は100%近いそうです。
手術室やICUなども見学に行きたかったのですが、救急外来と感染症外来のみの見学でした。あらかじめ交渉していれば、その他の施設も見学できるかもしれません。
4日目(Rural Area訪問)
マニラから車で2時間ほど南下したところにある街のRHU(Rural health unit)とBarangayに訪問しました。
Barangayとは、日本でいう小学校区より狭いくらいのエリアの単位です。それぞれにBHU(Barangay health unit)という、簡易な診療所があります。RHUとは、数十個程度ののBarangayをまとめる、日本でいう保健所+地域のクリニックの役割を担っています。RHUでは、地域住民の一次診療に加え、TB-DOTsや動物咬傷の診療や公衆衛生対策を行っています。フィリピンには、BHU(Barangay health unit)が約40,000施設、複数のBarangayをまとめるRHUが約2000施設あり、地域保健を支えています。
一方で、公衆衛生に携わる人材不足も深刻で、PGHの専攻医は数ヶ月のRHU研修が義務付けられているそうです。フィリピンにおいても、途上国の感染症(デング熱や狂犬病)がいまだに蔓延していることに加え、徐々に高齢化、NCDsの波が押し寄せてきています。公衆衛生が医療に果たす役割を再度考えさせられました。
5日目(RITM訪問、修了式)
RITM(Research Institute of Tropical Medicine)は1981年にJICA協力のもと設立された施設で、感染症や動物咬傷の診療の他、感染症の研究や統計データ収集を行っています。訪問時は、最初に講義とケースディスカッションをおこなった後に、施設見学をしながら、ディスカッションした症例の患者さんを実際に観に行きました。
特に印象的だったのが、狂犬病患者の隔離部屋です。狭い部屋の中にはベッドとトイレだけが用意されており、ドアには鉄格子が取り付けられていて、まるで牢獄のようでした。
動物咬傷センターでは、全ての診療を無料で提供しています。毎日数百人の患者さんを診療しているそうです。
HIV診療センターでは、新生児エイズから大人のエイズまで、診断〜治療から精神的サポートまで一元的におこなっており、個人的には日本のHIV診療と相違ないレベルだと感じました。
午後は、フィリピン大学に戻って、修了式を行いました。修了証の表彰のほか、1週間で学んだことの早押しクイズ大会などもあり、楽しかったです。修了式の後は、フィリピン料理やフィリピンのお菓子、フィリピンの甘い飲み物などを用意していただき、パーティーをしました。
楽しかった研修もあっという間に1週間が過ぎ去り、名残惜しさを感じながら大学をあとにしました。
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ホテル
ホテルはフィリピン大学の近くにあります。
基本的に治安の関係で毎年同じホテルにみんな泊まってもらっているそうです。自分で取るよりも割高で同期から文句もでましたが、ホテルにプールがついていたり、朝食がおいしかったり、みんなでホームパーティーできたり、結果的にみんなで同じホテルに泊まったことでみんなとより仲良くなれました
ホテル周辺は歓楽街(ガールズバー?がいっぱいありました)で、夜は治安があまり良くないです。近くにモールがあって、そちら方面は比較的夜でも歩けますが、反対側は男子でも1人であるくのはドキドキします。少なくとも女子だけで行かない方が良さそうでした。
一度男子メンバーだけで、歓楽街の先のレストランに向けて夜に歩いていましたが、キャッチが話しかけてきたりこわそうなお兄さんがいっぱいいたりしてドキドキしました。帰りはGrab(Uberみたいなやつ)を呼んで安全に帰りました。日本と違い、10分くらい乗っても500円しないくらいで安いので、安全安心に夜出歩く際にはGrabを使ったほうがいいかもしれません。
(余談)
私はみんなより一日早くフィリピンに来ていました。
夜に例の歓楽街周辺をうろうろしていたところ、フィリピン人のガールズバーのキャッチから日本語で話しかけられて、仲良くなってLINEを交換しました。その後、毎晩「どこにいる?」「お店おいで」のようなLINEが来てドキドキしました。特になにかされたり、迷惑かけられたわけでもないですが、やっぱり夜の歓楽街にはある程度警戒していたほうがいいかもしれませんね。
研修前後のすごしかた
私は研修が始まる前の土曜日の16時頃にセブパシフィック航空でフィリピンの入国しました。日曜日は午前中にスラムツアーに参加し、午後はフィリピンに滞在している友人と闘鶏を見に行きました。研修後の土曜日は、朝のんびりして、お昼過ぎの飛行機で帰国しました。
同期の中にはマニラに来る前にセブで南国を満喫している人もいました。限られた時間を有効に活用にしてみてはいかがでしょうか!
スラムツアー
マニラにアジア最大級のスラムがあるのをご存知でしょうか。
マニラのスラムは”Happy Land”とよばれています。”ハピラン”が現地の言葉でゴミ捨て場という意味だそうで、それが変化してHappy Landと呼ばれるようになったそうです。実際、スラムの中では笑顔の子供たちも多く、活気がみなぎっていました。
スラムの住民はほとんどがフィリピンの南部から来ています。マニラ中のゴミをあつめ、それらを分別し、すべて再利用してお金を稼いでいます。ゴミを集める人をスカベンジャー、分別したゴミを回収するのがJunk Shopとよばれるお店です。金属はPHP15-20/kg,、ガラスは2PHP/kgなど、相場がきまっていて、一日中朝から晩まで肉体労働をしても500PHP程度の稼ぎしかないそうです。かなり苦しい生活を送っているのが想像できます。
一番衝撃だったのが、Pagpag(パグパグ)と呼ばれるご飯です。Pagpagはマクドナルドやジョリビー(フィリピンで有名なファストフード店)などの残骸です。それらをゴミ袋の中から拾ってきて、それらを洗って、再度揚げてスラム内で販売していました。「食ってみるか?」と聞かれたので、せっかくきたからと思い一本いただきました。一番美味しい肉がいっぱいついている部分はすでに食べられてしまっているため、骨の端っこの部分の少しの肉と、油の衣だけが可食部でした。スラムの子供たちが近寄ってきて「一袋買ってよ」と話しかけてきました。無邪気な子供たちの笑顔が脳裏に焼き付いています。
一方で、教育や医療はというと、中学校までの教育は無料で受けられる他、スラムの人たちに向けたクリニック・病院は無料で診療・治療を受けられるそうです。最近では、親が仕事を頑張ってスラムから高校や大学にまで進学する子供もいるそうですが、やはりお金の関係で中退する子供も多いようです。
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金銭面
フィリピン研修で使ったお金の内訳です。合計で12-13万円くらいでしょうか。その他、LCCを使わなかったり、研修前後で旅行をしたりすると高くなりますが、だいたいこんなもんかなと思います。
航空券 39,000円
ホテル 1泊朝食付き 3500PHP(フィリピンペソ) × 6泊 = 21,000PHP(=54,000円くらい)
食費 1食 100PHP-1000PHPくらい。7日で3000PHP(=18,000円)くらい?
(お腹いっぱいたべてお酒普通に飲んでも1人1000PHPくらいでした。)PGHから借りたバン:1人500PHP
おみやげ 1000PHPくらい
総括
フィリピン大学やRITMは、感染症においては、もはや日本と同等レベルなんじゃないかというような印象でした。一方で、フィリピンを含む途上国で問題になるのは、経済格差や地域格差によって必要な医療が行き届かない人が大勢いること、あるいは健康格差が生まれていることだと思います。病院に来る前の患者さんの健康にもアプローチできるのが公衆衛生の強みだと感じました。
大学生の頃から国際保健を目指していました。来年からは産婦人科専攻医として臨床を続けます。専門医を取る意味があるのか、国際保健の何をやりたいのか、どこで働きたいのか、結婚はどうするのか、、、。この研修でいろいろなお話を伺って、医師として働く以外にいろいろなキャリアパスがあることを認識しました。今後は、自分の頭で考えて、行動に移していきたいと思っています。
今後、公衆衛生に興味がある人々が、この研修に参加してより良く悩めますように🙏