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安全運転のありがたさ。

時を戻そう。

今週行った名古屋から福岡への引っ越しには、手続きがたくさんあった。
電気・ガス・水道・郵便や転出届あたりは慣れていたけれど、長距離の引っ越しを頼むことも、前日に飛行機で移動することも現地のホテルに泊まることもはじめてだった。

さらに新しい家の手配を赴任先の方でしてくれるのもはじめてで、これはこれでいくつか調整ごとがあった。

僕は一泊二日の短い旅行を手配するときでさえ「電車の時間に間に合うか」「ホテルは予約し忘れていないか」とあれこれソワソワする方だ。今回はそれよりもずいぶんチェックすべきポイントが多かったので、当日まで「大丈夫だろうか」と心配な面があった。

手続きはきちんとした。
抜け漏れもないはずだ。
でも……大丈夫だろうか。

結果的に転居はすべてつつがなく進んだ。
名古屋の家から荷物が運び出されたところで一つ、その家の鍵を郵送したところで一つ、と一つ一つ安心していって、それが最後まで続いた。

無事、空港に着いた。
無事、飛行機に乗れた。
無事、着陸した。
無事、ホテルに着いた。
無事、朝起きれた。
無事、家の最寄り駅に着いた。
無事、大家さんへのご挨拶を済ませた。

空港から新居に着くまでだけ書き出しても、いくつものチェックポイントがあったことに気づく。無事これ名馬というが、本当に無事でよかった。

無事というのは、なにも起きないということだ。
なにも起きないことは、ふだんあまり意識されない。

でも、意識されないというのは、それ以外のことに知恵や力をつかえるということで、大層すばらしいことなのだと思う。

車に乗るときに「安全運転でおねがいします」と常套句のように言われるけれど、安全運転って命を守っているだけでなく、心の安心も守っているのだ。もっと高く評価されていい気がする。

いま、引っ越し先の新居でパソコンのキーボードを打ちながら、この文章を書いている。いまの僕の安心は、先のいくつもの「無事」によって支えられていて、そのことはしばらくすると意識から抜け落ちていくのだけれど、本当にありがたいことだと感じる。

これらの「無事」を支えてくれた人たちは、知っている人、知らない人含めて大勢いる。全員に感謝したいな、なんてことを思いながら、福岡での一週目が終わろうとしている。

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澤 祐典
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