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わたしとは誰なのか。
最近知り合った方にドライブに連れて行ってもらった。
それはそれはゆかいなドライブで、かなりの長距離だったがずっと楽しかった。
カーステレオで、高田渡さんとアイオラさんの曲を聴かせてもらった。
どちらもはじめて聴く曲だったが、めちゃくちゃよかった。
二組は曲調も歌詞の感じもぜんぜん違うのに、どちらも心身に染みる感じがした。
そしてふつふつと「自分の音楽ってなんだろう」という欲がかき立てられる感じがした。
二組の曲が終わると、カーステレオからは流行りの洋楽が流れてきた。
その途端に「自分の音楽ってなんだろう」という問いは霧散し、鏡を覗き込むようにしてみていた「自分」の姿が消えた。
『南畑美術散歩』のインタビューで、画家の大庭豊先生がこんな話をしている。
「作品っていうのはコミュニケーションじゃなくて、見る人がそれを鏡にして何を感じるかなんです。自分の鏡なんで、見えない人にはなんにも見えない。ところが見える人には、ものすごい深さを持っていて、自分をどんどん発見させてくれる。」
先の二曲は僕にとってそのような「作品」だった。
けれど、それよりもずっと有名な、誰もが知っている曲は「作品」ではなかった。
わたしとは誰なのか。
こんなにもコンテンツはあふれているのに、それを発見させてくれるものはあまりにも少ない。
そのような「鏡」のような作品を生み出すには、作る人に余計なものが付いていないことが必要なのかもしれない。そんな思いを強くしたドライブだった。
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