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最終奥義 「寝乳」

赤ちゃんがうまれてから、わが家には次のような「自由へのアルゴリズム」が設定された。

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① 夫婦どちらかが赤ちゃんをあやしている間、もう一人は自由に行動できる(ただし、授乳の要請があった場合、奥さんが出動)。

② 赤ちゃんが床で落ち着いているか、寝ている間、夫婦ふたりとも自由に行動できる。

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ただし、②のふたりとも動ける状態になるのは、一日の中でもまれ。
幸いにして、夜には寝てくれるようになったけれど、日中はほとんどない。

しかし唯一、日中に②の条件を、それも長時間満たす奥義がある。それが「寝乳」だ。

正確には「添い乳」というらしい。
おかあさんも赤ちゃんといっしょになって横になり、授乳する方法。

この方法で赤ちゃんが眠った場合、そぉ〜っと離れることで、そのまま赤ちゃんが数時間寝てくれることがある。その間に僕たちは家事なり、リフレッシュのための外出なりが可能になる。延々と続く子育ての合間に、ぽっかりとできる「自分」の時間。

ただし、どんなものにもメリットとデメリットがあるように、この奥義にも罠がある。

それは「奥さん自身が寝入ってしまうこと」だ。
「寝乳の間にこれとこれとこれを済ませよう」と計画して、この「寝落ち」が起きた場合、わが家の一日のスケジュールは大幅に狂うことになる。奥さんには「今日なにもできなかった…」という無力感が残り、僕はそれをなだめるのに時間を費やすことになる。

とはいえ一度、赤ちゃんと横になったところから一人だけ目をさまし、そぉ〜っと離れるのは、至難の業。なので、夫の僕としては、赤ちゃんと二人で横になろうとする奥さんに「うまくいきますように」と願いを託し、その成否を見守るしかない。甲子園のチアリーディング女子の気持ちと同じだ。

今日、奥さんはその最終奥義を見事に決めた。誇らしげな表情で「成功。」と微笑む奥さん。おかげで、日の高い時間にこの記事を書くことができている。

赤ちゃんは両手をバンザイしながらすやすやと眠っている。起きてちゃだめとは思わないけれど、ちょっとホッとする自分がいる。

そんなふうにして、子どもと暮らす毎日が続いていく。
不自由は増えたけれど、これはこれでずいぶん楽しい。

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澤 祐典
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