ハネムーンが終われば。
【ハネムーン】新婚の当月、蜜月。新婚旅行、蜜月旅行。
と、いま検索した辞書にあった。でも今日は夫婦関係の話ではない。
新しい環境でも、新しい職場でも、初対面の人との出会いでもハネムーンってあると思う。だいたい数日から数週間は何も起きない平穏無事な日々が続く。初対面の相手のことも、いい面しか見えない。
ところがしばらく経つと、そうでない面も見えてくる。
不便、不満、不都合、不穏。そうしたものが徐々に浮き彫りになって、物事をややこしくする。そして、それに巻き込まれていく。
僕は人と出会うとき「ああ、この人といつか仲違いするのかもなあ」とほんの少し思っている。そして、なってもいないのに「いやだなあ」と思うのだ。もちろん大抵の場合、それは起きないのだけれど、そうなる人もいる。誰がそうなる人なのか、事前に当てられたためしがない。
ここ南畑に来て三ヶ月目。
身のまわりに少しずつ不便、不満、不都合、不穏な話が増えてきた。それをどうしたらいいかと考える時間も増えてきたように思う。理想郷のように見えていた土地にも不完全な部分がある。まあ当たり前のことだ。
思えば、僕たち夫婦も最初はそうだったかもしれない。
付き合いたてはいいところしか見えなくて(いや、そうでもなかったかな)、お互いの不完全さをぶつけているうちに、だんだんと家族になっていったんだっけ。
だから、ハネムーンが終わりつつあるいま、僕はようやくこの土地の一員になってきたんだなと思う。不完全な全体の、不完全な一部として。いろんな経験をしてはきたけれど、ここではちっぽけだ。できることもあまりない。
結局、生きていくっていうのは、こうやって不完全な中に身を置いて、ああでもないこうでもないと揉み合っていることなのかもしれない。理想論や成功談のようにスッキリした瞬間はほんの少ししかなくて、あとは芋を洗うような時間が続く、のかな。
だからもしかしたらハネムーンというのは、他人だった人同士が近づいて、お互いの不完全を分かち合う移行期なのかもしれないですよね。だからこそ、近づいていく高揚感と近づき過ぎてしまった焦りがある。
でも、その接近戦を生きているうちに、思いがけない自由さや安心が得られることを夫婦生活で多少経験したので、その点はラッキーだったなと思っている。めんどくさいんだけど、そうやってしか「自分の居場所」なんてできていかないのかもしれない。
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