![旅するあなたのうた](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/11025477/rectangle_large_type_2_694edd1bf7ba0bb9b624ad8e85dc4bde.jpeg?width=1200)
すきな歌の話ができることって。
おととい、他のメンバーの到着が遅れていたので、くにちゃんこと橋本久仁彦さんと奥様と僕の三人で食事をした。
くにちゃんは、お気に入りの曲を集めたアイポッドをスピーカーにつないで流した。
井上陽水、世良公則、吉幾三、海援隊、薬師丸ひろ子……。
70~80年代の昭和の歌は、どれもインパクトが強くBGMの「BG(バックグラウンド)」にはならない。でも色鮮やかで、いまの曲よりもずっと楽しい。
中でもかぐや姫の『神田川』は沁みた。
最初のトレモロからグッとくる。
そして、橋本家はあっという間に「三畳一間の小さな下宿」になった。
あなたはもう 忘れたかしら
赤い手拭い マフラーにして
赤い手拭い、横丁の風呂屋、カタカタ鳴る小さな石鹸、二十四色のクレパス。
ちっとも似ていない似顔絵を描いて、そして、窓の下には神田川。
歌詞とともに僕らの目も神田川に移っていく。
「いいねえ」「たまらない」「よくこんな曲つくれましたよね」
そんな感想を交わしているとき、僕たちはいったい何才だかわからなくなった。
くにちゃんと奥さんはずっと若い感じがするし、僕も三畳一間に住んだ経験があった気がしてしまう。年齢や経験よりもずっと、近くて若い感じがした。まるでおない年みたいに。
「なにを話したらいいんだろう」という不安もなく、年上だから年下だからというのもなく。この日いちばん三人で「いっしょにいた」感じがした時間だった。
場面変わってフェイスブックでは、ブルーハーツの話をした。
「本当の声をきかせておくれよ」
「人にやさしくしてもらえないんだね」
「ドブネズミみたいに美しくなりたい」
大半の自己啓発本に書いてあることは、みんなブルーハーツが言っていた。そして、本以上にあのヒロトの声でドカンと胸を撃ち抜かれた。
僕の投稿にしては珍しく、たくさんコメントもついた。
それぞれのお気に入りの歌詞を交わし合って、すきな気持ちが何倍にもなった気がした。
そして、昨日。
僕はKing Gnuという新しいバンドの「白日』という曲にドハマりして、フェイスブックにシェアした。
この曲も『神田川』とは別の意味で、イントロで引き込まれる。
時には誰かを
知らず知らずのうちに
傷つけてしまったり
失ったりして初めて
犯した罪を知る
ヴォーカルの井口さんのファルセットが、歌詞にぴったり。
こんなに新しい歌なのに、こんなに好きになれる曲と出逢えると思わなかった。悔しいぐらい、いい曲だった。
投稿をきっかけに聴いてくれる人がいて、「毎日聴いています」という人がいて。またうれしい気持ちが膨らんだ。
そんなふうに「すき」が重なるのって、考えてみれば不思議なことだ。
「すき」はコントロールできないことだから。
厳密にいうと、同じ「すき」じゃないんだと思う。
その人の、その人なりの「すき」なのであって、僕のとは違う。
だから実際には、すれ違っているのかもしれない。
それでも、重なることがうれしい。
そういえば、両想いだって、そういうものかもしれないよね。
お互いの「あなたが好き」が、奇跡的に重なっているだけで。
そうか、すきな歌の話ができることって、両想いみたいなもんなんだ。
そう思うと、人と人をつないでいる歌は、恋とおなじ役目を果たしているのかもしれないね。
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![澤 祐典](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/2357127/profile_7c5f980edda2561d7f4d4bdb41245e28.jpg?width=600&crop=1:1,smart)