新しい動き、入荷しました。

最近になって、赤ちゃんは腕を振り上げ、自分のからだや僕たちの腕をたたくようになった。気がつくと、タヌキがおなかを叩くように、とん、とん、とんとやっている。

何度も、何度も、なにかを確かめるように叩いているのだけれど、見ている僕らには何の確認なのか、分からない。腕が動くことを楽しんでいるのか、たたく感触を楽しんでいるのか。それともただ、おとうさんにムカついているだけなのか。

赤ちゃんは「飽きる」ということがあるのかな、と、ふと考える。
僕たち大人と同じ24時間。寝ている時間も長いけれど、起きているときにはそんなふうに体をとんとんしたり、ゴロゴロしたり、服をはむはむ食べて、よだれまみれにしたりしている。時々泣いて、おっぱいをもらって。

それだけで時間をつぶせと言われたら、僕らには耐えられそうにない。抱っこしている最中だって、ついついスマホを見たくなってしまうくらいだから。

でも、決して同じことの繰り返しではないんだよな。突然、からだを叩きはじめたように、気がつくと、いつのまにか出ていた花の芽みたいに、なんらかの新しい動きが加わっている。ちょっと前は服のはむはむ、その前は口に手を入れてうーうーうなるのが新しかった。飽きているかは分からないけれど、マイブームはあるようだ。

変わる「瞬間」は目撃できないけれど「新しい動き、入荷しました。」には何回も立ち会える。これは赤ちゃんと暮らしてみなければ、知ることのなかった楽しさだ。これからもたくさん見られるといいな。

いま、赤ちゃんは「寝乳」をしてもらって眠っている。その間にも僕ら大人の何倍、何十倍もの細胞がもんのすごい速さで育とうとしている。いつものようにゆっくりと日が暮れていく自室で、猛スピードのなにかがこのちいさい体のなかを駆けめぐっている。

いのちって、なんだかすごいよね。
想像すると、不思議ないい気持ちになる。