福祉とお金って、両立するんだ。
20代の頃、勤めていた会社に経済産業省の方が講演に来て、ソーシャルビジネスというのを教えてくれた。
社会的課題の解決をビジネスとしてやる。
それまで、お金を稼ぐことは企業、社会のためになることはNPOやボランティアがやるものだと思っていたぼくは、とても驚き、興奮した。
そして「ソーシャルビジネスの世界に飛びこんでみたい」という気持ちが、会社をやめる理由になった。
それから十年経ち。
いくつかのソーシャルビジネスの団体やNPOに所属したものの定着せず、ぼくはいま細々と自営業をしている。
目の前の仕事や生活をなんとかしようとするうちに「社会のためになること」は、あまり強く前に出さないほうがいいと思うようになっていた。
ぼくが社会のために福祉的なことをやろうとすると、採算度外視になってしまうからだ。(単にお金のことを考えるのが得意でないというのもあるのだけれど。)
「福祉的なことと経済的なことって両立しないものだなあ。」
そんな思いと、いろんな団体の現場をみた経験が重なって、ソーシャルビジネスへの情熱は風化していった。
でも今日、鎌倉投信の受益者総会で「いい会社」の講演を聞いて「やっぱりできるんだ」と感銘を受けた。
途中参加だったので、聞いたのは二社。
すららネットとマザーハウス。
どちらも日本国内のみならず、途上国の環境さえも変えていて、しかも、補助金などに頼らず、きちんと利益を出していた。
そこには、福祉的な団体にしばしば見られる「いいことをしているのだから質が低くても許される」という甘えもない。
ときどき行くマザーハウスの店舗は、ほかのお店と比べても、店内の雰囲気、スタッフさんの応対、商品の質ともに素晴らしかった。
すららネットのしている e-Learning 事業は、こないだまで手がけていた児童館の学習支援事業で課題に感じていたことを解決しているように思えた。
子どもたちの居場所として、ちゃんと人と人とのかかわりをしながら、学力も上げる。
それができて、世界にまで広げられていることにとても驚いた。
「いいことはしてるけど、お金がない」とか「お金はあるけど、していることが残念」とか、そんな活動の多い中で、今日聞いた「いい会社」の話は、20代の頃、経産省の方から聞いた話とおなじ感銘を与えてくれた。
どこにも妥協なく「オールクリア」してる。
そのすっきりした感じが気持ちよかった。
もっとも、40代のぼくは、その「オールクリア」の背景に、どれほどの情熱と苦労があったかを多少想像できる。
だから、軽々しくじぶんも、とは思わないけれど、その両立を諦めなくていいんだな、と思った。
それは、しばらく燻っていた火種に「ぽっ」と火がついたような感じで、なんだか気分を上向かせた。