人生のヤバみ

人生のヤバみ。

昨日の『listen.』では、15分聞き終わった後、思わず「美しい!」と言ってしまった。

ご本人からしてみれば、ただ15分語ったにすぎない。
けれど、僕には映画『グラン・ブルー』のようなダイビングに感じられたのだ。

自身の感覚を精密に感じながら、過去のいくつかの場面をめぐって、振り子のように、らせんを描くように、しかし真っ直ぐに潜水していく。言葉をぴたっぴたっと当てながら「いや違う」とすぐさまそれを捨てながら、決然と進むフォームはスイマーのよう。

その言葉を辿りながらだろうか、僕はすべての人の前にそれぞれ異なる設定の世界があり、その中で知りうる全精力を投じて生きようとする人の「平凡」のとてつもなさを思った。

「これから15分は、あなたの時間です。」
『listen.』で行う未二観は、この宣言からはじまる。

その刹那、虚空が、やがて、言葉があらわれる。あらかじめこれを話してくださいとか、これを聞きたいですといったことは伝えていないから、まったくのからっぽに第一声が響きわたるわけだ。

その声に次の声が連なって、語りが層を増していく。そこに登場する出来事や要素は一人ひとりにおいて完全に異なる。当たり前のことを言っているようだが、これはとてつもないことだと思う。

その時、その人がなにに関心を持ち、なにを口にすることにしたのか。その結晶がこの15分だ。昨日は「早かった」と言っていたけれど、あっという間にしゃべる人もいるし、ゆらゆらとしゃべる人もいる。その時間感覚さえその人次第。

そのことを僕は「聞くことってヤバイ!」と感じてこんな記事を書き、

それを読んでくれた吉橋久美子さんとこんな会をひらくことにしたのだけれど、

聞くことのヤバみというのは、実はひとりひとりが生きる人生のヤバみなのかもしれない。

普段は言葉の応酬の中で意識に上らないそのヤバみが、15分息を止めて潜水するように過ごす未二観では、ありありと現れるのかもしれないな。

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澤 祐典
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