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ペルセウス座流星群。

真夜中、眠っている間にどたんと大きな音がした。
驚いて目をさますと、赤ちゃんがおっぱいを飲みながらドアを蹴っていた。時刻は早朝3時。妻が寝かしつけをギブアップしたので、夜の散歩に連れて行くことにした。

家を出て「うわぁ真っ暗だ」と空を見上げると、夏の星座が見えた。それで今日のYahoo!ニュースにペルセウス座流星群の記事があったことを思い出した。もう一度記事を確認すると、今しがたの時間にも流星群は活動しているらしい。あわてて家に戻り、遠くが見えるメガネにかけ替える。以前消してしまった星空のアプリも再インストールして出発した。

向かったのはいつも朝の散歩に行く海だ。あそこなら空が広いから星が見やすいはず。午前3時の街はしんと静まり返って信号だけが働いていた。赤ちゃんはきょろきょろあたりを見回していたが、そのうち眠ってしまった。

海に着く直前、視界のやや上から下に筋状の光が走った気がした。流れ星か!気持ちがはやる中、奥まで進んでいくと海に向かってまっすぐ伸びた堤防(突堤)に若い人たちが寝転んでいた。ああして空を見上げながら流れ星を待っているのだ。ごにょごにょとなにごとか話す声も聞こえた。こういうときってどんなに他愛のない話でも楽しいんだよな。青春だなあと思いながら、さらに奥へ進む。

マンションの前を通り過ぎ、松林までたどり着くとあたりは真っ暗。空は広々として、肉眼でもかなりの数の星が見えた。星空アプリによると、右上のあたりがペルセウス座流星群だ。ベストポジション。ぼーっと空を眺め、目が暗さに慣れるのを待つ。

こんな時間に起きているのも珍しいので、ラジオをリアタイ(リアルタイム視聴)することにした。radico を立ち上げると『オールナイトニッポンゼロ』がやっていた。某芸能人が降板した代わりの番組だ。パリオリンピックが特集されていて、パーソナリティがリスナーからの感想メールを読んでいる。こんな時間に起きている人がラジオの向こう側にいることに心がふくらんだ。この時間の海は暗くて危ないと妻は心配していたけれど、僕は空を眺める澄んだ心とあったかい気持ちで満たされていた。

そのとき、夜空を横切るきらめくものがあった。右から左にしゅんと一筋。視野のすこし外ではあったけれど、間違いなく捉えることができた。流れ星だ。暗い夜空が一瞬まばたきをしたようなきらめきだった。きれいだった。

それから二度ほど流れ星っぽいものを見た。「間違いない」が一回、「たぶん」が三回。十分な成績だ。満足して帰ろうとすると、ラジオはエンディングを迎え、オリンピックに出場したアスリートたちの言葉が編集されていた。やり切った声、無念の声、どの声からも充実が伝わってきて、オリンピックを見ていないのにウルっとした。

家に着くと時刻は午前5時前。ラジオは『あさぼらけ』という早朝の番組に変わっていた。赤ちゃんは抱っこひもの中でまだ眠っている。そのままそーっとふとんに置くと目を覚ますことなく眠り続けてくれたので、僕もふとんに入って目を閉じた。素晴らしい夜だった。

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澤 祐典
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