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他人の関係
逢う時にはいつでも
他人の二人
(金井克子『他人の関係』より)
二月二日の円坐の余韻が消えない。
びーんと低い鐘の音が、いまだに鳴っているみたいに。
そこにいた、いろんな他人の言葉が思い出される。
妻にかけられた他人の言葉の中に、自分を何度も重ねた。
自分とは違う捉え方に「そう聞こえるのか」と思うこともあったし「自分もそう思っていた」と思う言葉もあった。いずれにしても一人だけ、身内だけではかなわない豊かさがあった。
その他にも、自分では決してしない表明のしかたを見た。関わりづらかった人が突然親しく感じることもあった。思わぬ人が思わぬタイミングで発言する場面もあった。それらは誰にも促されず、自然に湧き上がってきた。
その日、その場に集まっていた人たちは、人生がうまくいっている人もいれば、いっていない人もいた。声のかけようもない、自分がいままで培ってきた幸福論ではまったく届かない場所にいる人もいた。
そして、誰一人欠けてもあの場にはならなかった。
あの体験から教訓めいたことを抽出することはできる。
でも、それは実際とはほど遠いものだ。
また体験したいとは思わないし、できるとは思わない。
そろそろ別のことがしたいし、別のことが書きたいような気もするのだけれど、心はまだあの場所にいて、あの日のことを書きたがっている。
あれは、なんだったんだろうなあ。
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