外出自粛中に読んでほしい小説『イリヤの空、UFOの夏』の話
めちゃくちゃ気持ちいいぞ、と誰かが言っていた。
だから、自分もやろうと決めた。
山ごもりからの帰り道、学校のプールに忍び込んで泳いでやろうと浅羽直之は思った。
僕が中学生の頃、ちょうど電撃文庫が人気になっておりまして。電撃文庫というのはライトノベルの代表的なレーベルですね。ちょうどオタクになった頃なので、片っ端から読み漁ってたんですよ。
電撃文庫で代表的な作品といえばやはり『キノの旅』ですかね。主人公・キノが相棒の喋るバイク・エルメスと共にいろんな国を巡る短編連作ストーリーでありまして、これがとても少年心をくすぐったわけであります。
『キノの旅』と対をなして人気だったのが『ブギーポップは笑わない』シリーズ。去年再アニメ化もされた作品ですね。僕が中学二年生の頃、姉の彼氏が家に遊びに来た時貸してもらいまして、まあおそらくイチャイチャの厄介払いをするためだったのでしょうが(笑)あまりに面白くて夢中になって読みまくったのを覚えてます。中学生のオタクはああいうの大好きなんですわ。
キノの旅
ブギーポップは笑わない
その他にもいろんな作品がありましたね。『撲殺天使ドクロちゃん』、『MISSING』、『悪魔のミカタ』、『僕の血を吸わないで』、『灼眼のシャナ』、『狼と香辛料』などなど。挙げればきりがないほどに名作がいっぱいありまして、男の子と女の子のドタバタ、非日常、あるいは冒険譚を描いた作品の数々に僕は酔いしれておりました。
そんな中でも僕が特にハマったのが、この作品です。
イリヤの空、UFOの夏
2001年から3年間、全4巻発売された作品であります。今から20年も前の作品という事実にいささか目眩を覚えてしまいますが(笑)出会ってから一度も色褪せる事なく僕の心に留まり続けている作品です。
カクヨムで期間限定で無料公開されているようなので、良ければこの機会に一読ください。
https://kakuyomu.jp/works/1177354054885579795
この作品を一言で表現するならば、『一夏のボーイミーツガールもの』でしょう。主人公・浅羽直之は夏休みの最終日、こっそり忍び込んだ学校のプールで一人の女の子と出会います。伊里野加奈(いりや・かな)と名乗ったその少女は謎に満ちていて、時々少し怖さを感じさせる。物語が進むごとに彼女との距離が縮まっていくように感じるのですが、同時に逃れられない現実に翻弄される。
この作品を語る上で面白い要素がいくつかあるのですが、僕が一番面白いと感じるのは伊里野加奈という少女の存在なんですよね。
まず、伊里野加奈という名前は偽名です。
明らかに偽名だとわかる書き方を1話でしていまして、本名は一切明かされません。それどころか彼女の仲間であるキャラクター達も、全員偽名で登場します。どんな奴らだと思われるかもしれないので少し話しますと、舞台となる街には米軍基地がありまして、伊里野加奈はその基地から学校に通っております。
伊里野加奈は中学生でありながら、毎日のように誰かに呼び出されて途中で下校してしまいます。無口で学校にいる間はほとんど誰とも喋りません。学生鞄の中にはとてもヤバイもの(読んで確認してください)が入っています。頻繁に鼻血を出します。 手首には謎の球体が埋め込まれております。
「なめてみる?」
女の子はもう、目の前にいた。
女の子と浅羽の顔の間には、もう、銀色の球体が埋まった手首があるだけだった。
「電気の味がするよ」
誰もいないはずの夜の学校が、誰もいないはずの夜のプールが、星の光が、見知らぬ女の子が、何もかもが、現実の出来事とは思えない。
謎めいていて、少し怖い少女・伊里野加奈。
しかしそんな少女に主人公・浅羽直之は惹かれていき、なんとか仲良くなろうと努力する事で物語は進んでいくわけです。
巻数は4巻とライトノベルにしては少ないですがその分読みやすいですし、ちゃんと完結するので読後感が半端ない。最終巻を読んだ後なんかは切なさと感動で号泣しましたし、今でも最後の一文は心に残ってます。切なさだけでなく笑える部分も多いので、「重いのはちょっと…」という方も安心してください。
例えば3巻の『無銭飲食列伝』というお話では、浅羽直之が所属する新聞部の部員で浅羽に片想いしている少女・須藤晶穂と伊里野加奈が、「取材」と称して街のいろんな飯屋で大食い対決をする話があるのですが、まあゲラゲラ笑えますよ。その中で出てくる鉄人屋という大食い飯屋のモデルになったお店が山梨県に実際あって、一度食べに行った事があるんですが、マジで大飯すぎてヒーヒー言いながらなんとか完食したという思い出もございます(笑)
3月からスポーツやライブや映画などいろんなものが中止や延期に追い込まれて、オタクさん達に置かれましてはやるせない日々を送られている事と思います。僕もそのうちの一人ですが、こんな時こそなかなか手をつけられなかった作品や知らなかった作品に触れてみたり、他の方と「こんな作品があるよ!」と教えあったりしてオタク的教養を深めていきましょう。
僕もまだまだ知らない作品だらけなので、良ければ面白い作品を教えてくだされば嬉しいです。
今回も最後まで読んでいただきありがとうございました。スキを押してくださったり、ツイッターでいいねやRTして下さる事、心から感謝しております。それではまたお会いしましょう。
追記
キミラノ
https://kimirano.jp/special/sp2020marugoto/
でも5/6まで1巻無料で読めるみたいですね。こっちの方が2巻以降探しやすいかもしれません。
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