世田谷区の新庁舎を視察(りょうたろうがゆく)
都内最大の人口を擁する世田谷区で新庁舎の建て替えが進んでいる。江東区でも新庁舎建て替えの議論が始まり、参考にしたいと現地を訪れた。【井川諒太郎】
世田谷区では本庁舎機能の整備を行う第1期工事が2024年3月に竣工したばかり。地上10階、地下2階の構造で、以前の庁舎よりも階数を大幅に増やしている。1階の入口から入ると、巨大なレリーフの壁面が目に留まった。旧庁舎の設計した建築家前川國男(1905~1986年)が描いたレリーフの原画を復元したデザインという。
新庁舎は、前川氏の旧庁舎を「継承」していることが特徴だ。区民らが利用できる「区民会館」では、ホール部分の改修にとどめている。特徴的な構造はそのままにしつつ、音の響きや遮音性能を向上。客席は1200席→933席に減らし、ゆとりある空間を作った。改修にとどめることで、建設費用も抑制できているという。
現地を見て、感じたのは世田谷らしい配慮だ。区民会館には、親子が安心して楽しめる「親子席」を設計した。他の客席とは別の部屋なので子どもたちが遊んでいていても気にする必要がない。10階にある議会の傍聴席にも同様の親子席を設けている。議会がある階層には子どもが遊べるパネルや空間も用意され、家族世帯も多い世田谷らしさの配慮が垣間見えた。
今回の工事は第1期で、今後第2期、第3期と工事が続く。そもそも工事は21年に着工し、当初は27年10月に完成する予定だった。しかし施工業者の大成建設の施工計画の検討不足などで、工事が大幅に遅延する見通しが判明している。庁舎の中で見えているものだけでなく、さまざまな面を研究し、江東区の新庁舎建て替えの参考にしていきたい。
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