神輿は盛況も神社は苦境?
「わっしょい、わっしょい」。新型コロナウイルス感染拡大の影響で6年ぶりの開催となった深川神明宮(森下)の例大祭。うだる暑さの中、掛け声とともに街中を神輿が通過した。12町会が参加する待ちに待った神輿に参加者からは「久しぶりにまちが一体となった」と喜びの声が上がった。
新型コロナも落ちつき、日常を取り戻し始めている。今年は富岡八幡宮で子どもがお神輿を担ぐ「子供神輿連合渡御」や、亀戸の香取神社など各地の神社で例大祭が開かれ、参加者でにぎわった。
一方で、祭りの主役である神社は苦境に立たされているという。新型コロナの影響で参拝客が減少。地域のつながりもコロナ前と比べると薄くなった。物価高など厳しい経済情勢が続く中、賽銭泥棒も増え、追い打ちをかけているという。
こうした神社の“ピンチ”に地元企業が協力するケースもあった。天祖神社(東砂)では、賽銭泥棒によって長年使ってきた賽銭箱が破壊された。新調をすると多額の費用がかかる。宮司の神﨑努さんは途方にくれる中、昨年2月ごろに地元の金属会社に相談した。返ってきたのは思いがけない言葉だった。「賽銭箱を作って寄付します」。そして今年8月8日、金色に輝く賽銭箱が設置された。神﨑さんは「8月末に8年ぶりの大祭が開かれる。直前に直してもらって助かった」と胸を撫でおろした。
賽銭箱には、動かすとブザーが鳴る防犯器具を取り付けるなど粋な付け足しも行っている。作製、設置を行った國井金属(東砂7)は「大変な時こそ地域に貢献したかった」と話す。
祭りの熱狂の裏側には、江東区の「下町人情」があった。地域の希薄化が叫ばれる中、祭りを継続していくには地域の支え合いがますます重要になるかもしれない。