好きな絵を探しに〜東京国立近代美術館「TORIO展」〜
5月21日から東京国立近代美術館で開催されている「TORIO展」に行ってきました。TORIOというのは、パリ、東京、大阪の3都市のこと。
この3都市にある美術館(パリ市立近代美術館、東京国立近代美術館、大阪中之島美術館)それぞれが所蔵している貴重な作品が集結している美術展なだけあって本当に豪華でした!フェスでアーティスト達が人気曲を惜しみなくやってくれるような、有名な作家の作品目白押しで誰でもたのしめる感じ。
キャッチコピーが「見て、比べて、話したくなる」というぐらいなので、誰かと「これが好き」「あれがいい」なんて話しながら見にいくのがいいかもしれません。私はひとりで行って、もちろんひとりでも十分たのしめるんですけど、どうせなら誰かと行けばよかったとちょっとだけ後悔しました。
110名の作家による作品は、絵画だけではなく、彫刻、版画、素描、写真、デザイン、映像など、その数なんと150点あまり。テーマやコンセプトから7つの章に分けて展示されていました。その中から個人的に印象に残った撮影可の作品を各都市3点ずつここで紹介します。
from大阪
マグリット『レディ・メイドの花束』1957年の作品。「現実と非現実のあわい」というテーマより。過去の絵画を参照している絵が集まっていました。
ボッティチェリの「春」で描かれている女神を再現しているんだそう。マグリットの絵も見れるなんて。確かに元になった絵を確認すると「春」に描かれている人物ですね。一目見てマグリットと分かる個性もすごい。
ダリの『幽霊と幻影』1934年頃なので割と初期の作品なのでしょうか。今年でダリは生誕120年を迎えるそうです。女性の小さな後ろ姿はよく見るとかなり細部まではっきり描かれていました。
ダリの絵画は「夢と幻影」がテーマ。
原勝四郎の『少女像』1937年の作品。「こどもの肖像」というテーマで少女の絵画が各都市から1展ずつ展示されていました。その中でも印象に残ったこちらの絵、細かく人物を描いているわけじゃないけれど、きっとこのまんまのお顔をしているんだろうなと想像できるのがいいなと思いました。
fromパリ
これは誰の作品かわかりますか? パリからやってきた『夢』という名の絵画。1927年の作品らしい。大きなウサギのような動物の上に人間が仰向けになって乗っている。地面と空が逆になっているところからも夢を彷彿させるようなシチュエーションですね。
ダリと同じく「夢と幻影」のテーマに入っていました。こうやって同じテーマから絵画3つの共通点や相違点を探すのもたのしかったです。
(正解はシャガール)
マグリットと同じ「現実と非現実のあわい」というテーマから。
ヴィクトル・ブローネル 『ペレル通り 2番地 2の出会い』 1946年の作品。今回この絵が一番気に入りました。アンリ・ルソーの『蛇使いの女』にブローネルの創作物「コングロメロス」描かれているようです。アンリ・ルソーの元アトリエに住んだ時に描いたんだとか。奇妙で最高だなあ。
今回は絵画だけではなく、写真や映像、このようなオブジェもいくつか展示されていました。テーマ「日常生活とアート」より、ジャン=リュック・ムレーヌ 『For birds』。2012年の割と新しい作品です。密閉されたガラス(?)がパンパンに詰まっていました。隠されたメッセージはあるはずですが、見ていてきれいだったという単純な理由でお気に入りに入れました。薄っぺらくてすいません。
from東京
ラストはここ、東京国立近代美術館のコレクションから。
佐伯祐三がフランス滞在中に描いた街『ガス等と風景』1927年。
「都市のグラフィティ」がテーマになっています。大阪からはバスキアの大きな絵画が展示されていました。
佐伯祐三は「立てる自画像」が有名だったはず。今回の美術館の常設展「MOMATコレクション(TORIO展のチケットで入れる)」でいいなと思った絵画も佐伯祐三だったので私は彼の絵が好きだということが分かりました。
こちらはテーマ「戦争の影」より、北脇昇『空港』1937年の作品。
日本が戦争を盛んにしていた頃ですね。楓の種子が飛行機、ひまわりの花がらのようなものはターミナルなんだそうです。北脇昇の他の作品もMOMATコレクションで見れます。
東京国立近代美術館は戦争画(主に第二次世界大戦)を何点か展示しているので、涙なしには鑑賞できません。巨大なキャンバスで描いた、藤田嗣治の戦争画も常設されています。
こちらはTORIO展を飾る最後の作品になっていました。テーマ「カタストロフと美」より、畠山直哉『「津波の木より」 2019年10月6日 岩手県陸前高田市』。
カメラマンの畠山直哉氏は陸前高田市出身の写真家で、東日本大震災の被災地で樹木を撮影したシリーズのうちの1枚だそうです。
右側の枝は津波による被害で大きな傷を負い枯死しており、左側の枝には葉が繁茂し、成長を続けているというもの。同じ時間を刻みながら、半分は死に、半分は生きている。個人的には樹木のたくましさに感動したのですが、受け取り方は色々あっていいんじゃないかなと思いました。
その後
「TORIO展」の後に「MOMATコレクション」もしっかり見て、3時間余りの鑑賞。外に出ると日が落ちる寸前でした。そんな感じで満たされて帰宅したのですが、なんと、美術館の玄関に日傘を傘置き場に置いてきてしまったのです。美術展を見た翌日、カバンの中に傘の鍵が入っていてようやく気付いたのでもちろん時すでに遅し。
美術展に行く前に道端で100円を拾って、ラッキーと思いながら荷物のロッカーに使用して自分のものにしたバチでしょうか。「走れ正直者」を見習うべきでした。
美術館に電話したらありがたいことに保管してくれていたので取りに行くけどさ、時間と交通費考えたらめちゃくちゃマイナスだわ(いや、100円は拾っちゃうよね?)。家で8回ぐらいため息漏らしたよね。
この日の思い出が日傘を忘れたエピソードに上書きされそうでしたが、それ以上に素晴らしい展示だったのでぜひ足を運んでみてください!