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善意が裏返る


こんばんは。
今日までよく頑張りましたね。明日一日やり過ごせば週末です。楽しみですね。僕は多分休日出勤ぶちかましますけど、あなたはできればゆっくりしてください。

今朝、とても嫌なことがありました。
僕が毎朝通勤で利用する駅では、7時52分、先ず向かいのホームを下りの特急が走り抜け、30秒ほど後に上りの各駅停車がこちらのホームに滑り込んでくるという形になっています。駅ホームの上り側は少しカーブになっていて見通しが悪いことを除けば、何てことない、何処にでもある見慣れた風景です。
でも今朝は違った。
向かいのホームが騒がしかった。通学途中の小学生が騒いでいた。自分が乗る場所からは随分離れているからよく分からなかったが、どうやら子猫がいるようだった。

その子猫が、線路に飛び降りてしまったのだ。

折しもそれは、特急電車が走り抜けようとする直前のことだった。
小学生たちが「やべぇ!」と口々に叫ぶ。僕もあっと思った。
子猫は向かいの線路を渡りきり、こちらの線路に到達した。
その時だった。


小学生たちの対面、こちらのホームから一人のおじいさんが動いた。


おじいさんからは恐らく、遠くから上ってきている各駅停車のみが見えていた。
彼からは恐らく、見通しが悪い線路のため特急が見えていなかった、あるいは加齢により認識できていなかったのだろう。
それは恐らく、真っ当な善意だったのだろう。
おじいさんは子猫に向かって、あっちへ行け、というジェスチャーをした。
それを見た子猫は引き返した。
そこに下りの特急が、うなりをあげて。
僕は見たくなかった。
でも目を背けることが出来なかった。
遠くてよく分からなかったけど、何か、勢いよく噴射したような影が見えた。
小学生たちは「やべぇ、やべぇよ」と騒いでいた。
僕は直後に到着した上りの各停に、呆然と、機械的に乗った。
そのおじいさんが電車に乗ったのか、ホームに留まったのかは、見ていない。

とても嫌な気分になった。
善意が裏返った。
多分、あれは悪意ではなかったと思う。

でもそれよりぞっとしたのは、1時間後の僕に対してだ。

あれだけ嫌な気持ちを抱えていたのに、5分後の急行への乗り換えの時間にはすっかり忘れていて、珍しく座れたことに喜び、Kindleで本を読み、少しく睡眠をとり、職場につきコーヒーを淹れ、いつも通り着席して順調に仕事を始め、そうしてあれから1時間が経過して、ようやく思い出すまで、すっかり忘れていたのだ。



僕は自分が気持ち悪くなった。


こんな話でごめんなさい。

あなたはせめて、良い夢を。

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