自律神経系のチューニング 〜迷走神経腹側枝の機能評価と可能性〜
迷走神経の歴史
少し長いですが迷走神経が誰が、どのように、どんな内容で医学分野に広まったかの歴史になります。
ローマ時代ってすご…
1994年にステフェン・ポージェス博士が迷走神経の機能の新しい理解を中心に構成したポリヴェーガル理論を紹介するまでは、上記の内容が医学領域の自律神経系に関する一般的な理解。
そして、書籍を読んでいく中で自律神経系の研究の先駆者に対する尊敬と感謝が見え隠れする中で感じるかなりの衝撃的な一文…
「迷走神経腹側枝と背側枝の機能は大きく異なる。」
それをより強く表現したいとの気持ちはわかるが中々のパワーワード…
ローマ帝国時代のブタなどの動物の解剖、現代と違い解剖設備の質、顕微鏡などの機器がない中では当然ではあるとの記載もある。
当たり前や常識という部分や情報に対して、どれだけ向き合えるかというのが重要な視点なんだなというのを再認識させてくれる。
医療系の国家資格を取得するために一般医学の基礎と呼ばれる分野を教科書から学ぶ…
メリットもあればデメリットもあるのかもしれない。
腹側迷走神経経路の評価
自律神経系の一般的な評価というと…
自分が把握している範囲では心拍変動による自律神経系の評価が多く、病院勤務時代は計測しながらリハビリテーションを進めてくのはめちゃくちゃ難しくないか…
正直めんどくさいと思い諦めていた。
それが…
まじか…
『口蓋垂持ち上げテストによる迷走神経腹側枝の機能評価』
注目するのは口蓋帆挙筋の機能。
作用としては口蓋筋の一つで、口蓋帆を上方へ上げる筋肉。
嚥下の際、収縮により軟口蓋を上方へ上げることで、食物が鼻咽頭に入るのを防ぐ働きを持つとされる。
・椅子に楽に座る
・喉の奥が見えるように口を開ける
・口蓋垂の左右にある口蓋舌弓のアーチを観察
*口蓋帆挙筋は迷走神経咽頭枝の運動神経支配のため適切に機能することで口蓋舌弓のアーチが持ち上がる
*片側の口蓋舌弓のアーチが下がっている場合に迷走神経腹側枝の機能不全と評価していく
・「ア」という声を出す時も口蓋帆挙筋が作用する
・「アーーーー」と長く引っぱる音では作用しないので、「ア、ア、ア、ア」短く切った音で口蓋舌弓のアーチが持ち上がるかを観察
実際の評価方法や項目のポイントは上記。
懐かしいけど脳神経検査で口蓋垂や舌の検査とかしたな…
当時はこれがヒトの自律神経機能に関わるなんて全然分からなかった。
脳血管障害による出血や梗塞により器質的な問題を評価するもので…
評価して陽性だったらどうしようもなく、機能そのものの回復というよりは今ある機能を落とさずに環境整備や介護の手助けをもらいながらどう生活していくかを考えていくのが主流だった。
だからこそ腹側迷走神経回路を構成する…
迷走神経腹側枝
三叉神経(第Ⅴ脳神経)
顔面神経(第Ⅶ脳神経)
舌咽神経(第Ⅸ脳神経)
脊髄副神経(第Ⅺ脳神経)
上記の支配するヒトの機能の箇所を評価するのは腹側迷走神経回路の評価につながっていく可能性がある。
先ほどの口蓋帆挙筋の迷走神経咽頭枝の運動神経支配の機能評価も…
解剖において、舌咽神経(第Ⅸ脳神経)と脊髄副神経(第Ⅺ脳神経)神経の両方の線維は迷走神経(第Ⅹ脳神経)の線維の中に織り込まれているとされる。
迷走神経の機能低下は舌咽神経と脊髄副神経の機能低下を引き起こす可能性。
またその逆も然りで舌咽神経と脊髄副神経の機能低下は迷走神経の機能低下を引き起こす可能性も…
楽しみとワクワクが広がる…