日記 2024.10.28(月) 台所は冬のにおい。
雨の朝。お祭りの疲れがあるようでお母さんも今日はわたしと一緒に7時前まで眠っていた。二人とも目がなかなか開けられない。ぼんやりとしながら起き上がった。お父さんはもう起きてテレビを観ているような音がする。
顔を洗ってお化粧をさっとして朝ごはんの支度。毎日レストランみたいとお父さんは喜ぶけれど、朝も昼も夜もずっと食べ過ぎだとわたしは感じている。食材がたくさんあるからどうにかしようとすると、どうしてもおかずの品数が増えていく。本当はご飯多め、おかずは適度な量に抑えたい。きっと新米と古米を混ぜたご飯が美味しすぎるんだ。美味しすぎるなんて贅沢なことを言うけれど、どうにかこの流れを変えてみたい。
今朝は寒くて朝から台所はストーブを付けた。あたたかい空気が台所に広がり始める。冬のにおいがした。
お父さんはリハビリへ。相変わらずフレーベルの星作りにははまっているが、新しく紙の箱作りも始めている。いろんな箱の折り方を研究中。しっかりとした厚みのあるチラシをいくつかカバンに入れて出かけて行った。
雨降りの日はさてどうしようかと考えながら干し柿をみるとなんと、初回分がほとんどカビが生えてしまっている。焼酎で消毒しただけのものだったからというのもあるだろうし、湿気があったからというのもあるだろう。原因を探りつつ青カビの生えた柿を紐から外してコンポストへと持って行く。からりと晴れないのでしかたないとはいえ、どうしたらいいのだろう。
干し柿のことを考えながら洗濯物を干したりほかの家事をやっていく。冬は洗濯物を台所に干したりするから台所に干し柿を持ってきてみてはどうかと思った。思い立ったらすぐに試したい。物干し竿を台所へ持ってきて柿を移動させる。すこしだけカビがあるものは焼酎で消毒してみよう。割り箸と輪ゴムを使って柿同士がくっつくのを防いでみたり、思いつくことをやってみる。やってダメならしかたないけれど、適当に作ったわけではないからいろいろと試さざるおえない。やれるだけやって、だめならしかたない。
雨で外に出られないのでお昼ご飯の準備をしておこう。小さな里芋の皮を地道にむいてオリーブオイルとニンニクで炒め、ほうれん草を茹でる。少しずつ野菜は消費できているけれど明日また、生協さんで食材がやってくる。
仕事をしながら料理をするお母さんを見て、少しでも楽になればとじいちゃんが提案し始めることになった生協さん。家族が多かったりお母さんが働いていた頃は大いに助かっていたと思うけれど、二人暮らしになりそれでもまわりからたくさんの野菜をもらい過ぎてしまういまの実家での生活には、注文で食材を買うということがすこし無理が出てきているのかもしれない。
お昼ご飯は炒めた里芋にお味噌汁、焼き餅をポン酢ときな粉で食べた。実家の地域では煮たお餅を食べるので焼いた餅の扱い方ってそんなに知らない。焼き餅をきな粉で食べるにはどうしたらいいか分からず検索してみると、熱湯に一度浸けぬらしてからきな粉とからめると書いてある。さっそくやってみると新鮮で面白かった。
雨がやんだ。お母さんのいつもの心配性が今日はなんだか受け入れられない。ひとりになりたくて大根を買いに隣町までいこうか、アケビの蔓を取りに山へ行こうか考える。お母さんに行ってこようかなと伝えたら、案の定運転が心配だからついて行くと言う。それなら買い物よりも森林浴も兼ねて山へ行ってみよう。
軽トラックを初めて運転しアケビの蔓を探しに山へ入る。この間お父さんと行った時に見つけた蔓の場所を目指して進む。お父さんがこの間作って忘れて帰った枝で作った杖を見つけお母さんに渡した。ずんずん進んでこの間蔓を見つけた場所にたどり着いた。お母さんと山へ入ったこと、結果的によかった。雨のあと、曇り空の山の中は薄暗く少しこわい。
山の中のふっかふかの地面からアケビの蔓をはがしとっていく。ぱっと見ただけではアケビの蔓は見つけられないから木の枝に巻きついて上へ伸びる葉を探しそこから地面に向かって目線を落としていく。お母さんはわたしが切った蔓をまとめてくれたりしている。時々歌を歌いながらわたしはここにいるよと山の住人に知らせる。奥へ奥へ、蔓を探して歩いてみる。陽だまりのある場所付近でたくさんの蔓を採取することができた。
こわいからそろそろ帰ろう、お母さんの声が遠くから聞こえた。蔓を抱えてお母さんのいる場所へ戻る。深い山の中、森林浴ができて気持ちが良かった。この場所がすごく好きかもしれない。わざわざ隣町のハイキングコースまで行かなくてもこの場所にきて歩けばいいんだなと思った。
せっかく軽トラックに乗ったし、お父さんがリハビリから帰ってくるまで時間がある。少しドライブしてみようということにしていつもカーカフェをするコンビニの近く、ヤギがいるところへ行ってみる。ニュースで見たのだがヤギを草刈り代行にレンタルできるサービスがあるらしい。ヤギは喜んで草を食べてくれるし鳴き声もうるさくないしお互いにメリットがあるのだそう。確かにヤギのいる場所だけ草がきれいになかったな。斜面など危険な場所は特に需要が大きいと思った。面白いサービスだしもっと広がるといいなと思う。
ヤギのいる場所から狭い道を通り帰ってみる。軽トラック一台がギリギリ通れるくらいの道幅。これは狭い。対向車が来たらどうしようかと考えながら走った。大きな見たことのないキノコを見つけたり、小学校の時の通学路も久しぶりに通ってみたりした。
家に着く頃にはお母さんの心配性も気にならなくなっていた。さっぱりと気持ちが切り替わったようだ。採取してきたアケビの蔓を剪定バサミで処理していく。まっすぐの蔓が多いけれど今回は結構太いものも多い。たくさんあるから太いものはリーフにしてみようと思った。外の空気がだんだん冷たくなってきている。
夕飯は昨日の常備菜を食べ切って、具沢山のお味噌汁を作った。お味噌汁はやっぱり具沢山が好き。たっぷりある野菜が気持ちよく減っていく。ご飯もなかったので炊いた。しかし白いご飯にもそろそろ疲れてきた。玄米ご飯が恋しい。
近ごろお父さんが台所によく立っている。真空にして脱渋した柿で作るシャーベット作りにものすごくはまっているからだ。ブレンダーやゴムベラを使ったり、調理器具もいろんなものを使いこなせるようになってきている。干し柿や脱渋で実家の柿を加工するのは昔からお父さんの楽しみではあるが、きっと台所に立つことも楽しくなってきているのではないかな。少しずつ、いろんなことを試してみてほしい。
明日はみんな予定がないということなので三人で出かけたいと伝えてみた。しかしわたしが行ってみたい場所はことごとく定休日。そんなに遠出じゃなくてもいいかと切り替えお豆腐屋さんでお昼ご飯を食べてコーヒーを飲んで帰ろうかと提案してみよう。帰りにあたたかい靴下を買いに隣町のお店に寄ってもらいたいとぼんやり考える。出発時間だけ決めておく。明日は予定を詰め込まず、気ままな旅を三人で試してみたい。