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ステップ&スイング

社交ダンス上達の道しるべ”のブログより

元セレクションダンサーズ所属 元港区立青年館ダンス講師   福頼静致 (フクヨリ セイチ)


 
1955年、日本ダンス界の要請により英国から派遣されて、レン・スクリブナー(1950-1952 全英チャンピオン)が指導と講演のために来日した。

日本を訪れた初の英国ダンス人であって、それまでは乏しい文献と映像などをたよりにしてダンスを踊っていた日本人の目前で、本格的な英国風チャンピオンダンスを踊ってみせた。その素晴らしさに人々はただ圧倒され驚嘆するばかりであった。

彼の単独審査による日本舞踏選手権大会の順位では、プロの上位に地すべり的な変動があるなど、プロに対しても勉強のやり直しを迫る結果となった。
まさに日本ダンス界の夜明けであった。

その後66年と75年にも招いて指導を受けており、わが国のボールルームダンスの急速な進歩に及ぼした影響は、計り知れなものがある。

スクリブナーは競技ダンスの最高峰を極めたばかりでなく、デモンストレーター、教師、審査員、講演者、著述者として偉大な足跡を残した文字通りの巨人であった。

現在踊られている英国式タンゴは、彼によって完成されたと認められている。英国では彼の功績を記念して、スクリブナー杯を設けている。

スクリブナーの没後、彼の書斎に残された著作や講義録、未発表の原稿などが、盟友ブライアン・アレンの手によって一冊の本にまとめられ JUST ONE IDEA と名づけられた。

その 第三章
 基礎理論 

ステップ・アンド・スイング

を要約して記述する。

"スイング"という用語は、ボールルーム・ダンスに携わる人々にとって特別の意味を持っている。一流を目指す人は等しくその意義と、実地への適用方法を理解しておかねばならない。

モダン(現在はスタンダード)部門の各種目(タンゴを除く)が、その基本的な運動理論を"ステップ&スイング"の原理に立脚していることからも、上記の必要性は受容されるだろう。

これらの種目はスイング・ダンスと呼ばれている。

"ステップ&スイング"とは、ウォークの後をボディーのスイングが引き継ぐことをいう。上体のスイングと脚部のスイングは別個の構成要素であるが、前者は支配的、後者は従属的である。

ボディー・スイングを体得したら、レッグ・スイングはそれに感応して自然に実現するものだから、スイングという用語は上体のムーブメントを指して用いることが多い。

"スイング"という用語から、大多数の人は振り子運動を思い浮かべることだろう。

辞書によれば、一点あるいは複数の点で固定され、他の部分が自由に動く物体、例えば ”ドアは蝶番を支点としてスイングする"とある。

ダンスにおけるスイングと同列ではないが、ここでは、ランニングや縄跳びのような直接推進力を受ける運動と、一旦加速された体重を利用して自由に移動する運動との相違を認識してもらいたい。

 
では、 ステップ&スイングの原則は、どのように実技に適用されるだろうか。

基本フィガーを構成する一群のステップの第一歩は前進あるいは後退のウォークであり、それはボディー・スイングへの準備である。

ウォークに続くボディー・スイングが、各グループの残りの部分に足を運ぶのを助けてグループが完結する。

多くのフィガーは複数個のステップ&スイング運動から成り立っている。
ワルツのナチュラル・ターンは、その典型的な例である。
多種多様のライズ&フォール(ノー・フット・ライズを含む)が用いられ、ボディー・スイングも側方や回転の動きを含んで複雑多岐にわたる。

このように多彩な変化にもかかわらず、ステップ&スイングの主題は、寄せては返す波のように繰り返される。それはボールルーム・ダンスを他の舞踏様式から峻別させる基本的な運動様式なのだ。

すなわち、ボディー・スイングとは運動表現の手段として、また、リズム表現を創出する主役として、ボールルーム・ダンスの真髄なのである。

 
前に述べたとおり、ボディー・スイングと脚部のスイングは同調する。
また、 スイングを行うためにはライズの助けが必要である。

ここで注意すべき原則は、脚部をスイングするためには、先ずボディー・スイングを要するということである。

この前後関係を取り違えてはならない。

 

プッシュ & プル


"ステップ & スイング"原理をより完全に理解するためには、
筋肉の プッシュ & プル (押しと引き) 運動を
肉体的感覚として身に付けなければならない。

ウォークは先ず支え脚の"押し"(推進)から始動する。

それはまず上体を推進し、上体の進行は一方の脚に進行を促す。
支え足の膝は屈曲を必要とし、その結果、始動の段階で上体はロァーする。

進行歩が伸び切って着床したところから"引き"の動作
に移ってウォークが完結するが、

この動作は上体をライズさせる。


日本式では、ほとんど英国式の反対。

* 体重の無い足を前に運ぶことから始動する。
* 支え足を伸ばす。従って始動の段階で上体はロァーしない。
* 進行歩が伸びきって着床したら、"引き"ではなく、前方へ"押し付ける"動作となる。
* その結果、上体はライズではなくロァーする。
* ボディーはスイングしないから、第二歩を改めてステップする。

 
 
 
以上が福頼静致氏のブログからのコピーです。ブログと言っても最近の社交ダンスのブログの「軽い」イメージの記事ではなく、本格的な情報とそれを裏打ちする出所などが豊富であり内容は非常に重厚である。これはケンさんのブログでも同じ。

二人に共通するものはかなり若い時からイギリス人との直接的な接触があったと思える記事内容。それは外国人が柔道に関して、一度は本物の柔道を習いたいと日本の講道館に来るようなものかもしれない。国際的な柔道の試合を見ても日本人の柔道と外国人の柔道では明らかに違う。
 
このことは、日本人の社交ダンスと欧米人の社交ダンスとの違いにも言えることで、根本的にスタート地点がまず違う、ということは、例えばその姿勢から歩き方、あるいは社交ダンスの1歩の定義まで違う。

これら全てを無視してダンスを習っても「外国人の柔道」になってしまうと思う。そもそも西ヨーロッパ人の踊りと言うのは、特にイギリス人が集大成した踊りと言うのは、ぴょんぴょんと跳ねるイメージのダンス。我々アジア人のダンスと言うのは安定した二本足で静かに動き回る盆踊り的な舞踊。この辺りのイメージをイギリス風に変えなければいけないのではないかと思います。

コロナ禍前に金沢八景の横浜市大のエキステンション講座でダンスの科学的探求というような内容の講座を受講したときにも講師の先生は指摘していました。既に分かっているんですが実際にどのように現場にその情報を移行させるかが課題なのでしょう。
 
*福頼氏は既に鬼籍に入っているのでブログは閉鎖されている。私の下手な解説を読むより直接読みたい人は膨大な情報がインターネット・アーカイブ上にあります。
https://web.archive.org/web/20150531011948/http://www7b.biglobe.ne.jp/~seichi/step.html
 
*ダンスの1歩というのは、「中間バランス」から次の「中間バランス」を1歩という。日本人が思っている足をステップした時と音とは関係ない。音がズレていると言われるのは日本式の音の捉え方をしているから。音の中心は両方の足がほぼクローズした瞬間。だからステップしたら直ぐに後ろ足(脚)を引っ張って来る。

この考え方だとよくダンス用語に出て来る<1の終わりでライズ>とか<3の後半でロアー>とかの表現が理解できるし、この表現方法が1歩の開始から中心、終わりと3つに分けた方法を取っている理由がわかる。
 
ひとつ、福頼氏の記事で理解できないところは、回転の際<作用・反作用>、<絞り>などに通じることですが、足を<捻じる>という箇所が理解できないし、また私にとっては実践するのに難しい。

それよりケンさんの記事の<左か右の肩甲骨を動かす>を実践しています。

極端に言えばCBMを如何に強く表現するかと言うことだと思います。上記の記事中に「JUST ONE IDEA」の要約があります。その中でも同じ内容のことが書かれています。簡単に言えば、上半身を使いなさい、ということに通じるんだと思います。

何しろ社交ダンサーの殆どは体にトーンがなくグニャグニャか、ホールドに異常な力が入って崩れないよう努力している。一割ぐらいのダンサーがしっかりとしたトーンと非常に柔らかいホールドで踊っている。これは私の(分かるレベルまで私も来ました)フリーやパーティでの経験上のことです。
 
簡単に解説して裏打ちをしてみます。
 
*①「"ステップ&スイング"とは、ウォークの後をボディーのスイングが引き継ぐことをいう。

*②上体のスイングと脚部のスイングは別個の構成要素であるが、前者は支配的、後者は従属的である。

ボディー・スイングを体得したら、レッグ・スイングはそれに感応して自然に実現するものだから、スイングという用語は上体のムーブメントを指して用いることが多い」。

 

ユーチューブの動画に<セイちゃんマコちゃん>の投稿動画に同じような解説が載っていました。ワルツのナチュラル・ターンとスローのフェザー・ステップが解説してありました。男性の例では予備歩抜きです。第1歩目右足歩く(ウォーク)、第2歩目広げる(スウィング)第3歩目引っ張ってくる、左足で引っ張る。動画だから分かりやすいかも知れません。

まとめると、

*①スウィングダンスの基本はまず歩く、次のステップはスウィングですから大きく広げるという簡単な動作です。
*②ここではスウィングには2つあるが上体のスウィングの方が優先なんだよ、と説明している。だからホールドを固めてはいけない、崩れないようにガチガチで踊っては上体のスウィングは出来ない。

「従属的」という意味は上体と下肢が独立してダンスの動きを作っているのではなく、まず上体をスウィングしなさい。そしたら下肢は自然に付いて来るという意味だと思います。

 
*③一旦加速された体重を利用して自由に移動する運動との
相違を認識してもらいたい。

 
では、 ステップ&スイングの原則は、どのように実技に適用されるだろうか。

基本フィガーを構成する一群のステップの第一歩は前進あるいは後退のウォークであり、それはボディー・スイングへの準備である。

*③ここでは「いったん加速された」と記載があるので、ダンスの推進力(加速)は第1歩、もう少し譲るなら前半にあると解釈したい。「ボディスウィングへの準備」ということは、「助走」と捉えるとスウィングの前に勢いを付ける必要があるということ。

だから第1歩はノホホンとステップしてはいけない。そのフィガーの命は第1歩の推進力にかかっているのだから。(停止状態からスタートなら予備歩と第1歩が推進力)。

 
*④すなわち、ボディー・スイングとは運動表現の手段として、また、リズム表現を創出する主役として、ボールルーム・ダンスの真髄なのである。

*④ここではウォークを助走として使ったらボディ・スウィングしなさい。それは運動表現であるばかりでなく、音楽表現も司ると理解。下肢だけのスウィングでは従属的だから足りない。本当のスウィングとはボディのスウィングだよ、と理解。
 
*⑤前に述べたとおり、ボディー・スイングと脚部のスイングは同調する。
また、 スイングを行うためにはライズの助けが必要である。

ここで注意すべき原則は、脚部をスイングするためには、先ずボディー・スイングを要するということである。

この前後関係を取り違えてはならない。

 
*⑤ここではボディと脚部のスウィングは同調する、ということ。これはいつも一緒にスウィングは起きるということ、と理解。更に重要なことは、脚部よりボディのスウィングの方が重要だと述べています。これがケンさんの記事にある上肢が動けば下肢は繋がっているので自動的に反射する。また下肢からの動きも上体に伝わる。

だから陸上のあらゆる運動はこの繋がりを保つ形で動かすことが必要だと述べているのです。くどいかも知れませんが、ホールドは固めてはいけない、柔軟に動かす。肩甲骨を動かして下肢に伝えなさい。
 
*⑥ウォークは先ず支え脚の"押し"(推進)から始動する。

それはまず上体を推進し、上体の進行は一方の脚に進行を促す。
支え足の膝は屈曲を必要とし、その結果、始動の段階で上体はロァーする。

進行歩が伸び切って着床したところから"引き"の動作
に移ってウォークが完結するが、この動作は上体をライズさせる。

 
*⑥では日本では「送り足」という言葉はダンスを習う上でよく聞きますが、送り足だけでなく、それよりもっと大切なことは「引き」の動作。

要するにステップしたらその足を使って後方に残った脚・足(これは軸足だった足)を残してはいけない。残さないで直ぐに引っ張ってくる。これが陸上競技のスパイク靴で走るのと同じ運動。

この動作をしないと「日本式のダンス」になってしまう。そして引っ張ってきて足がほぼ並んだ状態が音の中心でそこから後半の動作に入る状態。ワルツのナチュラル・ターンなら<1の終わりでライズ>はこの辺りの動作の説明だと理解。

以上です。
 
 

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