見出し画像

「本当はこわくない新型コロナウイルス」抜粋② 井上正康著 大阪大学名誉教授

第4章 死者が少なかった日本
このグラフから、(図8)日本での死者数は6月頃に約1千人に達する可能性が予測されましたが、実際には6月29日の時点で972人の死者数になりました。しかし、その後の重症者や死者の増加は非常に穏やかになり、実質的な被害はほとんどなくなりました。  


図8

4月上旬にはそのような状況が分かっていたにも関わらず、政府に感染症対策を助言する専門家会議のメンバーから「何もしなければ42万人も死亡する」との驚愕的な予測が伝えられました。それに驚いた安倍前首相が慌てて緊急時た宣言を出すことになりました。

そもそもこの42万人という衝撃的な数値はどこから来たのでしょうか?
【今朝、これをSNSで見ましたが出先でしたので詳細不明。今探そうとしましたが見つかりません。42万人死ぬ予測の根拠を何度もメールしたが返事なしとのことで税金を使った研究費の在り方を再考と結んでいました】。

これは感染症の数値解析モデルで産出された値とのことでした。スペイン風邪の際の日本人死者数も約40万人でした。この数理解析法では、感染状況に応じて特定の数値を入力する必要があり、その値により結果が大きく左右されます。

この専門家は、当時の日本の感染状況ではなく、死者が多かったドイツでの数値を入力して計算したと述べています。確かに欧米ではスペイン風邪並みの勢いでありましたが、8月31日の時点でも日本の死者数は1334人で欧米の数百分の1以下に留まっており、42万人とは大きく乖離した状況です。

効果が見えないロックダウン
多くの国で国境封鎖やロックダウンが実施されました。その効果に関しては欧米でも評価が分かれていますが、あとから振り返ってみると、効果が無かったとの意見が主流です。

各国の総人口には大差があるので単純に死者数だけを比較しても意味がありません。そこでロックダウンした国としなかった国での100万人当たりの死者数を4月30日の時点で比較してみました(表3)。

表3

ロックダウンした欧米の国々からは、非常に多くの死者が出ていることが分かります。この表でも欧米諸国は高い死亡率を示しており、ロックダウンしなかったスウェーデンでも100万人当たりの死者数が他の欧米諸国と同様に高いレベルになりました。

一方、早期から国境封鎖をした台湾やシンガポールなどの都市国家のみならず、厳しい規制をしなかった日本でも、欧米に比べて2桁以下の低い死者数に留まっています。表3から分かるように、日本を始めとする多くの東アジアの国々でも、同様に低い死亡率になっています。

図9はロックダウンや自粛規制などの予防対策の厳しさと、国別の死亡率を比較したものです。この図から明らかなように、国境封鎖やロックダウンなどの予防対策を厳しく行った国ほど100万人当たりの死亡者数が多くなっていることが分かります。

図9

これらの事実は、新型コロナによる重症化や死亡率には、厳しいロックダウンなどよりも民族や地域による差がはるかに大きいことを示しています。

効果が見えない「3密回避」と「接触8割減」
日本では「3密回避」や「接触8割減」が声高に叫ばれて来ましたが、死者の少ない日本において、世界一「3密」状態の山手線や地下鉄の通勤電車が緊急事態宣言の最中にも止められることはありませんでした。

新型コロナウイルスは「ヒト→ヒト感染」よりも「ヒト→モノ→ヒト」の感染ルートが重要であり、同時期にヒトが密集しなくても、感染者によって汚染されたモノを後から触っても感染することが明らかになっています

日本で「3密回避」「接触8割減」「営業自粛」などと厳しくしてもPCR陽性者数が減らないのは、「感染が人同士の接触密度と相関しないこと」を示唆しています。【それではレプリコン接種者=感染者との接触にも同じことが言えるのだろうか?】。

そこで国別の人口密度と死亡率の関係を比較してみました。(図10)。
この図は、国別の人口密度と100万人当たりのの死亡率を比較したものです。人口密度が日本の4分の1以下のEU諸国同士を比較しても、人口密度と死亡率が無関係であることが明らかになりました。



図10

これらの事実は新型コロナウイルスの感染予防には、「3密回避」「接触8割減」「自粛」などの効果が極めて少ないことを意味しています。

これら全てのデータは、新型コロナのリスクは感染予防策とは無関係に、民族的および地域的な要素が重要であることを示しています。この背景には新型コロナに対する免疫的特性が関与していることが明らかになっています。

土着コロナと新型コロナの交差免疫
日本と東アジアの死者数が顕著に低い理由は何でしょうか。ウイルスとの攻防で、重要なカギを握っているのが「交差免疫」と「集団免疫」です。

東アジアの民族は長い間土着のコロナウイルスと共存しながら生活して来たので、コロナウイルスに対する抵抗力のある集団が多くなっているのです。風邪コロナに感染しながら免疫力を獲得してきたために、同じコロナ仲間の新型ウイルスに対しても、ある程度の免疫力を発揮することが出来ます。このような働きを「交差免疫」と言います。

今回、新型コロナウイルスに感染していないヒトの約34%で、新型コロナと反応する細胞性免疫のTリンパ球が確認されています。土着コロナに晒されてきた歴史と免疫的経験が、新型コロナによる重症化や死者数を抑制した可能性が考えられます。

「弱毒株→強毒株」の順序が”本土”を防衛した”神風” 図6に見られるように、今回は2019年の末から2020年2月にかけて、日本に新型弱毒株が上陸し、その後に強毒株が入って来ました。

ワクチンでは弱毒化した病原体や死菌を人体に接種します。言って見れば、最初に弱毒株を感染させるような方法です。ワクチンを接種すると体内で免疫力ができ、次に実際の強毒な病原体が入って来ても、その防御力で排除できます。

新型弱毒株がワクチンのような働きをして免疫力が強化され、次に入国した強毒株に対しても有効に働いたと考えられます。一方、欧米や南半球の人々はコロナウイルスに晒された経験が少なく、いきなり強毒株が入って来たことが分かります。(図6)このことが重症者や死者が爆発的に増えた主因だったと考えられています。

図6

*厳しい国境封鎖やロックダウンは有効だったのか?大阪府の6月の「新型コロナウイルス対策専門家会議」でも、大阪大学の中野貴志教授が「データを見る限り営業自粛や外出制限と感染拡大との間に相関関係はない」と明言し、その後の分析でもその正しさが確認されている。

大半が無症状で感染力の強いウイルスを完全に排除することは、実質的に不可能であり、国境封鎖やロックダウンの有効性が世界的に見直されつつあります。

スウェーデンでは、高齢者を集中的にケアし、厳しいロックダウンや自粛をしませんでしたが、その結果は?
スウェーデンでは、基礎疾患のある方や死亡率の高い高齢者を集中的にケアし、病床数を常に3割程度空け続け、医療崩壊を防ぐ穏やかな方針を貫きました。厳しいロックダウンなどで死亡曲線を一時的に穏やかにしても、総死者数はいずれ同程度になると考えたからです。そのため、休校措置、バーやレストランの営業自粛、公園の封鎖などは行いませんでした。

結果的には、米国やEUのスペイン、イタリア、イギリスと同程度の死者を出し、隣国のノルウェーやフィンランドなどより多くの死者が出ました。亡くなられた方々の大半は高齢者施設の入居者でした。高齢者施設の従業員の約30%はパート従業員であり、体調不良で休むと賃金がカットされます。そのために、新型コロナに感染した無症状者のみならず軽症者も休まず勤務し続けて施設内感染を拡大させました。

高齢者に対して人工呼吸器などで治療することのないスウェーデンでは、主にこのような方々が亡くなられました。高齢者施設では従業員からの施設内感染を注意深く予防する必要があるので、従業員は特に感染予防を心がけることが大切です。

スウェーデン政府の情報開示は透明度が高く、主席疫学者が定時記者会見で毎回厳しい質問に答えながら、「次に大きな波が来ても同じ対策を実施する」と国民に方針を説明しています。6月には集団免疫が獲得されたことを報告し、国民の大半はその結果を納得して受け止め、大きな不満は聞こえて来ません。

*感染予防には「3密回避」が重要でしょうか?
潜伏期間が短く、飛沫感染が主な感染経路のインフルエンザなどでは、「3密回避」が有効な対策になります。しかし、ドアノブや便座などのモノを介して感染する新型コロナでは、3密回避の効果は極めて限定的です。図10からも分かるように
総人口や人口密度が日本よりはるかに低い欧米諸国でも、感染や死亡率は逆に高いことが分かりました。日本で叫ばれている「3密回避」や「ソーシャルディスタンスの確保」は、インフルエンザには有効ですが、新型コロナの感染や被害を抑制する効果が極めて低いことが、多くのデータから示唆されています。

弱毒株への適度な暴露は集団免疫力を強化し、逆に過度の自粛などはその獲得にブレーキをかけます。無症状のPCR陽性者の増加に対して過剰反応せずに、自粛要請や3密回避などよりも、有病者や免疫力の弱い高齢者を集中的にケアすることが「次の波への現実的対応策として何よりも大切です。

*「接触8割減」は本当に感染を抑えるために有効だったでしょうか?
大阪大学の中野貴志教授の「K値」による数理解析では、弱毒株によって死者が出た第2波の感染ピークは3月末に過ぎており、4月には激減していました。5月連休明けには実効再生産数が0.3で、感染は実質的に収束いていました。人口密度が異なる都市や田舎でも感染拡大速度に差がないことも判明しております。

クルーズ船ダイヤモンド・プリンセス号の対応で世界的に批判されたことや、「何もしないと42万人死ぬとメディアを騒がせた”8割おじさん”の「接触8割減」などに影響され、政府は重要な事実を無視して緊急事態宣言を5月末まで延長しました。

インフルエンザとの「ウイルス干渉」からも分かるように
休校措置、3密回避、緊急事態宣言、東京アラート、営業自粛などは、”壮大な空振り”であり、ウイルスに対する恐怖心を煽って未だに経済的混乱を深刻化させています

春の新型コロナウイルス収束の本当の立役者は、日本人が獲得した集団免疫力でした。

③に続く





いいなと思ったら応援しよう!