
社交ダンスの基本中の基本(新しいレベルに進みながら繰り返し練習すること)
「福頼氏のブログ」からの転載です。
三つの落とし穴
社交ダンスを習う人の前には、三つの落とし穴が待ち受けています。
この落とし穴に落ちたら、一生懸命にやればやるほど悪い癖が付いて
自ら上達の道を閉ざしてしまいます。
* 落とし穴の第一は、足を動かすことを覚えようとすることです。
足は体を運ぶ道具として動かしているのですから、足を使って
体を運ぶことを覚えなければなり ません。
* 落とし穴の第二は、体を柔らかくすると誤解することです。
上手な人の踊りは柔らかく見えますが、それは、真っすぐな体を壊さずに運ぶという条件を満たした上で、柔らかく見える滑らかな動きを作り出しているからです。
ピンと張りのある体で作り出す、「滑らかで継続的に変化する動き」を、
「体が柔らかいと誤解」する人が少なくないようです。
常に、全身に必要な緊張力が保たれているのです。
ダンス用語では 「トーンを保つ」 と言います。
* 落とし穴の第三は、実はこれが一番厄介なのですが、
自分は立つ事ができる、歩くことができると思い込んでいることです。
確かに何十年もの間何不自由なく立ち歩きをしてきました。
それゆえに、最初に述べたように、
日本人の立ち方歩き方がダンスの立ち方歩き方と
異なっていると聞かされても、それを深刻な問題として意識することができないのです。
体重は拇指球から爪先までで支える
鏡の前に、鏡でなくても自分の姿が映るものならなんでも結構ですから
その前に横向きに立って、映った自分の姿を見ながら、両足の踵を上げて爪先立ちになってください。
ほとんどの人の体は、先ず前方に動いてから高くなったでしょう。
座って生活する日本人の体は、立ち上がっても股関節に曲がりが残り、体重は土踏まずから踵までにかかっています。
拇指球からつま先まで (ボールと言います。トーはもっと前です。)
に体重をかけて立っている人はほとんどいません。
このままの体では、ダンスを上手になることができません。
「踵を上げなさい」と言われたら、真っすぐな体がそのまま
スッと高くなるような立ち方が必要なのです。
練習 バウンス運動
「ボールやトーで支える力、足のバネ、足の裏は空気圧の高いタイヤのように。」
*壁に向かって立ち、両手を壁に当てておく。
*少しもたれかかるようにして腰を壁に近づけ、股間節を伸ばして両足の親指で体重を支える。
*両足のインサイドエッジを平行に保ち、体重が外側にかかりやすい人は足を左右に離しても
よいから、体重は決して外側にかけない。
*軽く踵の上げ下ろしをしてバウンスを繰り返す。
サンバの音楽に合わせると調子よくできます。
一曲終わるまでは足が持たないでしょうから、無理にがんばらないで、
少し疲れたら片方の足で 1,2 と、体重を置き換えて 3,4 と左右交互に二回ずつ、足を取り替えてやるほうが良いと思います。
べた足を排除する
日本人の普通の歩き方では、
片方の足を膝と股間節を曲げて前方に運んで置き、- - - その足の上に後ろの足で押し出した体を乗せますから、
前足の真上に頭と上体は乗っていても、- - - 片方の足と太腿と腰は後ろに残っています。
運んだ足が踵から先に床に着いても、
そのまま足の裏全体が床に着いてしまう足の踏み方をべた足と言います。
べた足のままでは、
ボールルームダンスの特質である振り子のような動きを作ることはできません。
プロの上級選手なら 「お尻が落っこちている」 と言えば通じます。
**前進する足の踵を床に着ける時には足首と膝を引き締めて床に置き、- - - 必ず踵で体重を受け取ります。**
足の裏が平らに床に着いた時には、必ずその足にお尻が乗っているように、
普段の歩き方を変える練習をすることが必要です。
初めのうちはギクシャクするでしょうがちっともかまいません。
ダンス体操二番の練習が効果的です。
とにかく、「踵とお尻が、股関節で力の切れ目無しでつながっている」 ことが重要なのです。
「ウエストから下が足だ」と言う人もいるくらいです。
真っすぐに立つ
「頭を直立させ真っすぐな姿勢で立つ」
で始まります。
「ヴァーティカル・バランス・ライン」
垂直な均整の取れた線ということですが、
体のどの部分も垂直な線からはみ出さないように真っすぐに立つ
事の重要性を説いていました。
背骨には三つの大きな湾曲がありますから、
これを意識して、まっすぐに近づける努力をしなければなりません。
日本で聞くことのある 「股間節を曲げる」 など、絶対にありえません。
正座や胡坐で長時間座ることに慣れている日本人には、立った時の姿勢の悪い人が少なくありません。
現在踊っている人には、かなり長く踊っているように見える人でも、
首が曲がって頭が前に出ている人がたくさんいます。
頭が前に出たら、釣り合いを取るためにお尻が後ろに出ますから、べた足の踊りをすることとなります。
座る生活様式で育つために、立ち上がっても股関節に曲がりが残るのは、
英国式の社交ダンスを身に付けるためには
日本人に共通の最大の障害です。
本物のボールルームダンスを覚えたい人にとっては、何が何でも、大いに努力して克服しなければならない最大の課題です。
ダンス体操を根気よく練習したり、準備運動に取り入れたりして、
一日も早くまっすぐな体を作り上げ、
さらに美しく磨きあげるように努力してください。
競技に参加したくなったころには、最大の強みとなっていること間違いなしです。
ポイズ(姿勢・立ち方)
ダンス用語では外見上の姿勢と体重の置き方をあわせてポイズと言いますが、
技術書には次のように示してあります。
男子
<頭は直立させ真っすぐな姿勢で立つ。
・ボディーはウエストで引き締め、
・体重は足のボールの方向へ前方に保ち、
・肩はリラックスさせ、
・膝はほんのわずかに曲げて保つこと。>
女子は、
<真っすぐな姿勢で立ち、
・ボディーはウエストで引き締め、
・体の上部と頭はわずか後方で少し左側に、
・膝をほんのわずか曲げ、
・体重を足のボールに置く。>
これが技術書の冒頭で示された英国式ボールルームダンスの前提条件です。
コンタクト・ポイント
一般的な日本人の立ち方のように、
体重を拇指球から踵までの間で支えている男女が向き合って組んだ場合には、体の前面の広い部分が接触します。
技術書で明示されているように、英国式で
体重をボールで支えて立った場合には、ボディーの軸がボールの真上にあります。
女子は上体を少し後ろに反らせていますので、みぞおちの辺りが一番前方にありますから、男女が組むと、みぞおちのあたりだけで接触することとなります。
『男女の接触点が点になるか面になるかは、二人の体格による』 と教えてくれたのは、
スクリブナー来日の翌年、講師として招かれた ソニー・ビニック でした。
「英国式の ホールド は K型、アルゼンチン・タンゴ の ホールド は A型」 と言った人がいますが、特徴を捉えたうまい言い方だと感心したことがあります。
日本式ではプロムナードポジションに開いたときの二人の腰の位置関係が
よく問題となります。
英国式では
二人の腰は離れたところにありますから、日本式と異なって、二人の腰の位置関係が問題となることは 全く起こりません。
接触の強さについては、「レター・サービス」 によって示された公式の見解によると
『初めは "きっちりと" と教えられるであろうが、
それが基礎となって、上級者のホールドは、
"着用している衣服が一体の感じであって、ボディーが ではない。"』
ということです。
体の向きは、女子の体の前面の中心を、男子の体の内部の中心に向けておきます。
ジルバ
1945年、日本の敗戦で進駐してきたアメリカ兵が、アメリカ南部で生まれたスイング音楽に
合わせて踊る jitterbug を日本に持ち込みました。
それこそ瞬く間に日本中に広がって名前も日本風に発音されてジルバとなり、
現在も踊り続けられています。
横浜近辺で広がった ハマジル と言う踊り方もあります。
アメリカと縁が深い英国にはもっと早くから伝わっていたと思われますが、英国の教師協会では
足型に名前をつけて制式を整え、ジャイブ と名づけて ラテン種目の一つと位置づけました。
その頃の ISTD は ラテン種目の採用に消極的でしたから、別の教師協会 IDTA のウォルター・レアード が先鞭をつけて、1961年に ラテン 5 種目の技術書を著しました。
日本では彼を招いて講習を受けましたが、日本人が ジャイブ と言う踊りを知ったのはこれが最初で、ラテン種目も盛んに踊られるようになるきっかけとなりました。
ジルバの功罪
ジルバを教える時にジャイブの足型の名前で教える人もいるようですが、
もともとのジルバには足型の名前はありません。
スイング音楽を聴いて弾むような気持ちになったら、
難しい技術は必要でなく
即興で覚えて楽しめるような自由なダンスでした。
私が社交ダンスを始めた1947年頃には、
「社交ダンスはできないけれどジルバなら踊れる」
と言う人がいるほどでした。
とっつきやすいだけに、日本人にとっては、ボールルームダンス上達のためには「功罪兼ね備えた両刃の剣」 と言うことができます。
股間節を伸ばし、ボールで体重を支え、バウンスしながら踊ったら、
日本人に共通のべた足を改善して、ボールやトーで体重を支えるためのトレーニングを楽しく踊りながらすることができます。
弾むような動きが特色ですから、スローとカウントしてもウォークのように動くのは間違いです。
ジャイブの技術書にも書いてあります。
その一方で、日本人の体つきが抱える問題に気づかないまま、
べた足でジルバを繰り返していると
股関節の曲がりやべた足を固定するだけでなく、
ジルバの特徴的な動きから、男子は腰を右に突き出し、女子は腰を左に突き出すという、
ボールルームダンスを身に付けるためには大きな妨げとなる
極めて厄介な癖を身に付けてしまいます。
以上です。