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社交ダンス;体のバネ効果と推進力④

「運動理論に基づくダンス上達法」下山 藤樹 著 から抜粋・引用
【  】は私のコメントです。ゴチックにしました。


基本的には、体の筋肉を圧縮すると、その筋肉にエネルギーが蓄積されます。これを体のバネ効果と呼んでいます。

この体のバネ効果を利用してボディを推進すると、ボディは大きく・スピーディな動きになります。

ライズ動作では、圧縮バネを応用し、膝を圧縮し、バネにして活用します。そして、回転動作では、ねじりバネを応用し、上体をねじり(ダンスでは「絞る」と言う)、回転バネとして活用します。


ここで膝をバネにする方法と活用の仕方を説明します。

膝は一定の角度で曲げて、その角度を保ちながら上体の重さで、膝を圧縮します。その結果、膝はバネになります。

ボディ(重心)が軸脚(足)上を通過する過程は
1)体重が軸足ヒールへ載る瞬間
2)重心が足の中央(土踏まず)を通過する瞬間
3)重心が足のトウを通過する瞬間
4)重心から軸足より前方へ移動する

膝を圧縮し、膝をバネにする場合は、軸足にボディが載ると同時に、膝の曲げ角度を一定に保つことが大切です。そして、大腿部の後ろ側の筋肉(ハムストリングス)が上体の重さで圧縮され、膝がバネになります。

ボディ(重心)がトウより前方へ移動するにしたがって、上体が膝に対して前方へ移動するため、膝にかかっている荷重(上体の重さ)が膝に対して軽くなります。

この結果、圧縮されていたハムストリングスが伸張します。この伸張によって、膝が自然に伸張し、ボディはライズされます。

【ボディ(重心)がトウより前方へ行くことが重要です。それにより上体が膝に対して前方へ移動し、自然に伸張するのでボディはライズします。タンゴはライズしないのでトウには行かず、フットワークは全てボール・フラットです】。

注)バネの強さは、圧縮スピード(ロアー動作のボディスピード)と自重(上体の重さ)と各人の筋肉の性質、及び、曲げた膝の角度の大きさに関係します。


膝をバネにする過程で、注意することは、圧縮の過程で、膝の曲げた角度を変えないことです。軸足へ体重が載ってから膝の曲げを継続すると、吸収動作が起こり、ボディスピードが減速すると同時に、膝がバネになりません。

軸足に体重が載ってから膝を更に曲げようとしないこと。自然にしておけばバネになり伸びます】。【ナチュラルターン男性なら右足第1歩はロア済みなので置くという感覚】。

スウィングダンスは、ロアー動作で重力を活用してボディスピードを加速し、この加速したボディスピードと自重とで膝を圧縮し、膝をバネにします。

そして、加速されたボディスピードと膝のバネを推進力として活用し、ボディを推進します。従って、ロアー動作の上手・下手がスウィングダンスを踊る場合の鍵になるのです。


次にタンゴの推進力について説明をします。

タンゴの推進、各フィガーのスタート時に、体にタメを作り、このタメによるエネルギーを推進力として利用し、ボディを推進します。

タメ動作は、ハムストリングスを上体の重さで圧縮しながら、重心を軸足の中央(土踏まず)からトウへ移動します。そして、動脚(前進歩)のトウでボディの移動を抑えます。この結果、ボディは少しロアーし、軸足(ハムストリングス)にエネルギーが蓄積されます。

この蓄積されたエネルギーを推進力として瞬発し、ボディを推進します。

注)瞬発動作は、タンゴ特有の動作です。体のタメと、軸足上での進行方向への重心移動によって、ボディが急発進し、動脚へ瞬間的に移動する動作のことです。

【車のギアをニュートラルに入れてアクセルを吹かした状態にします。そしてドライブに入れて急発進です】。

大切なことは、スウィングダンスもタンゴも、「重力」と「体のバネ効果」とを活用して、推進力を作っていることです。

スウィングダンスは、ロアー動作で自重を重力に委ねながら、重心を進行方向へ大きく移動(動的バランス)しています。それによって、ボディスピードを加速し、このボディスピードと自重とで、膝(ハムストリングス)を圧縮してバネにします。

従って、スウィングダンスの推進力は、ロアーの過程で作り、ボディスピードと膝のバネとを推進力として活用します。

【「ロアの過程で推進力を作る」とは重力を利用してロアすることです】。

タンゴの場合は、各フィガーのスタート時に、自重で膝(ハムストリングス)を圧縮して膝をバネにします。同時に、軸足上で重心を進行方向へ少し移動(静的バランス)します。

【男性の腰が少し動く感覚、女性はコンタクトの左脚を男性の右足(脚)スネの外側辺りに付けているとフォローしやすい】。

注意すべきは、スウィングダンスもタンゴも重力を活用してバネを作り、推進力として活用していることです。アマチュアの殆どは、重力に逆らいながら、脚力でボディを推進しています。

地球上(重力場)でダンスをしているという事実を全く無視した踊り方をしています。「ダンスは重力を活用して踊る」という、ダンス上達のキーポイントを常に念頭に置いて、ダンスの各動作を理解することが大変重要です。


ダンスの動作の中で、多用される動作は回転動作(方向転換も含む)です。


この回転動作は、基本的には、ボディで回転します。足で回転するのではありません。
【一般には、回転は上体の意思ある動きにより、下肢が反射的に動くように設計されている。ナチュラル回転なら右肩甲骨や周辺筋肉を後方に動かし、リバース回転なら左肩甲骨や周辺筋肉を後方に動かすと腰から下肢に伝わる=「ケンさん」のブログ】。

【ここでは下山氏は回転前の動作で「絞り」を作り、その絞りを解けば反力で自然に回転すると説明しています】。

【要するに、回転(方向転換も含む)しようと思ったなら、背骨の中心を真っ直ぐ前方に動かしても回転はしない。背骨の左サイドか右サイドを動かすとどっちかに回転するということ。当たり前ですが、殆どの人は足で回転しようとする】。

物理の法則で、人間の体も同じように、重心に沿って力を作用すると、ボディは真っ直ぐに移動します。しかし、ボディサイドを動作点にして力を作用すると、ボディは回転します。

この回転するための「力」を作る方法として、ねじりバネを応用するのです。ねじりバネは例えば、右へねじると、その復元力(元へ戻ろうとする力)によって、左への回転力が発生します。

ダンスの場合も同様で、回転や方向転換する場合は、体の重心線(中心軸)に対してボディを右へねじると、その復元力によって、ボディに強い左回りの回転力が発生します。

【更に左に回転するときは、事前に右にねじっておく。右に回転するときは事前に左にねじる】。【肩甲骨周辺筋がこの役目をする、と下肢は自動的に反射的に動いてくれる】。

【CBMPは何のためにそのようにステップするのか?これは教本に書いてあるからだけでは理解できないかも知れません。誰も今までこの理由を教えてくれる機会はありませんでしたが、ここで考えると、CBMPやCBMは何らかの形で「回転」が絡んでいるのは想像できますね】。

【CBMPにステップすると、それは全部、体の絞りを必要とするからです。そして下山氏の説明通り、その「絞り」を解けば、次の動作が自然に行くからです】。

【これはフォーラウェイ・リバース&スリップピボットでもそうです。ピボットする前に身体を絞っておけば楽にピボットが出来ます。男性は3歩目はCBMPにステップです。もし、CBMPにステップしないと絞りがなく、ピボットを無理な形ですることになります】。

【タンゴのクローズド・プロムナードもそうです。男性も女性も第2歩目はアクロスでCBMPで体を絞ります。その後の3歩目は絞った体を解けばクローズド・ポジションに自然になります。シャッセ・フロムPPでもそうです。要するにCBMP=絞り、と覚えておいても間違いないのです】。


ワルツのナチュラルスピンターンの男性カウント3で足を揃えるときに、ボディに左回りのねじり(絞り)を加えます。そして、3の後半でロアーしながら、ねじりを解く感覚で、右ボディサイドを右へ回しながら後退します。

右ボディサイドの回転を継続しながら後退し、スピンターンのステップ1へボディ移動します。そして、右へのボディ回転を継続しながら、ステップ2を、前進する感覚で踏み、ライズします。この結果、ボディは大きく移動しながら右回転します。

スピンターンは、足で回転しようとすると、バランスが崩れ、そして、動きも小さくなります。

大切なことは、回転動作はボディをねじり(絞り)を加え、この反動(復元力)を利用して回転力をつくり、回転することです。そうすると、動きが大きく・スピーディな回転動作を行なうことが出来ます。

ナチュラルターンやリバースターンの方向転換も、同じようにボディのねじりと、その復元力を利用して行なうと、合理的な動作が出来ます。

体は、ねじると「回転バネ」になり、圧縮すると「伸張バネ」になります。体をバネにして活用すると、スピーディで、大きな動きのダンスを踊ることが出来ます。そして、無駄な力を使わずに合理的な動作をすることが出来ます。

以上です。

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