「砂糖病」甘い麻薬の正体 ウィリアム・ダフティ 著 抜粋 ①
「砂糖病」甘い麻薬の正体 ウィリアム・ダフティ 著
かなり古い本であるが過去に抜粋したのが残っていたので加筆・修正して3回にわたり投稿します。一部学問的に現在と変化があるかも知れないが、「圧力」による場合もあるので、読者の判断に任せるという意味でそのままにした。
グロリア・スワンソン曰く、[毒を食べている人たちを見ると、以前はよく激しい怒りが込み上げてきたものよ]と彼女の囁きが聞こえてきた。「でも今では一人一人が自分で気がつかなければならないことだって悟っているの。どうぞご随意に」さあ、勝手にコーヒーに砂糖でも何でも入れなさい、という訳だ。「白い砂糖を食べるといいわ、命が惜しくないならね」。
結局、ヘロインは化学薬品以外の何者でもない。ケシの実から乳液をとり乾燥させるとアヘンになり、アヘンを精製するとモルヒネになり、それを更に精製するとヘロインになる。砂糖もまた化学薬品以外の何物でもない。
サトウキビや砂糖大根の絞り汁を精製すると糖蜜となり、糖蜜を精製すると赤砂糖になり、それを更に精製すると最後に奇妙な白い結晶になる。
だから麻薬密売人どもが乳糖(ラクトース)の結晶で純粋なヘロインを水増しするのは不思議でもなんでもない。此の二つは、グランシン紙を通せば全く見分けがつかなくなり、結局は同じ穴の狢なのだ。
著者ダフィティは砂糖中毒に陥っていた。
約24時間、私は非常につらい思いをしたが、翌朝起きてみると全てが変わっていた。前夜、疲れ果て、脂汗を流し、震えながら眠りについた私は、翌朝目を覚ますと生まれ変わったように爽快な気分になった。穀物と野菜は神からの賜物のように美味しかった。
続く数日間は驚きの連続であった。痔は出血しなくなり、歯茎の出血も止まった。肌の艶もよくなり始め、身体を洗うと以前とは見違える肌合いになった。こんなことはめったになかった。
酒が禁止されると、砂糖消費量は急激に増大した。絶対禁酒主義者はしばしば激しい砂糖常用者であった。彼らはアルコールは唇にさえ触れさせぬと誓いはするが、そのくせ砂糖は唇を通過して腹に収まり、樽ならぬ腹でアルコールを醸造するわけだ。
サトウキビの足跡
近代の砂糖工業生産は、ひたすら、新しい様々な病気を生み出してきた。市販されている砂糖は濃縮され結晶化された酸以外の何物でもない。昔は、砂糖は高価だったので、それを使用することが出来たのは、裕福な者たちだけであり、国全体の経済的観点から見れば砂糖は何の結果も引き起こさなかった。
しかし、今日、砂糖は安価となり、民衆の身を蝕み退化を引き起こしており、今や、広範囲の啓蒙が必要であると主張するときである。砂糖摂取によるエネルギィの損失は、決して回復することは出来ない。
その痕跡は民族の中に刻み込まれているのである。アルコールは何千年にもわたって飲まれてきたが、一つの民族の退化を引き起こすことは決してなかった。アルコールは破壊的な酸を含んでないのだ。砂糖に依って破壊されたものは永遠に失われ、それを回復することは不可能である。
砂糖常用癖と麻薬常用癖との違いは程度の問題と言って良い。麻薬の場合、少量でからだと脳の活動を即座に変えることが出来る。砂糖の場合は多少時間がかかり、純粋な砂糖の液体だとアルコールのように分の問題だし、他の形の砂糖だと年の問題となり、変化に要する時間は様々となる。
脳は人体中でもっとも敏感な器官といえる。気分の高揚と沈滞、正気と異常、冷静と情緒不安定、そう状態とうつ状態、これらのいずれの状態になるかは、われわれが口にするものに大きく左右される。
全身が(脳はその一部に過ぎない)最大の能力を発揮するためには、血液中のブドウ糖量と血液中の酸素量とがうまくバランスを保っていなければならない。
E・M エイブラハムソン博士とA・W・べイゼットは「体、心、砂糖」の中で次のように書いている。「血糖値が通常より低いと…細胞、とりわけ脳細胞は栄養不足になる傾向がある。此の低血糖は食事に依って回復するが…細胞、特に脳細胞が慢性的に栄養不足になると、どういうことが起きるか。その場合、最も弱く、最も傷つきやすい細胞が最初に損なわれることになる」。
「全ての機能が正常に働いている時は、此のバランスは副腎の監督下に厳密に維持される。我々が砂糖(蔗糖)を摂取した場合、砂糖はブドウ糖にすぐに変化しうるものであるので、体内での化学変化過程を大部分飛び越えてしまう」。
「腸に直接収まった蔗糖は、そこで“消化されやすい形になった”ブドウ糖になる。そして次にブドウ糖値と酸素量が厳密なバランス状態にある血液中に吸収されるわけだ」。
こうして血液中のブドウ糖値は激しく高まる。バランスは崩れ、体は危機状態に陥る。
此の危機を最初に記録するのは脳である。次に、砂糖処理に関する全ての化学物質を調整するホルモンが副腎皮質から分泌され、血液内のブドウ糖値を下げる働きを持つインシュリンが膵臓のランゲルハンス島から分泌される。
これらの全ての作用は急激に行われ、所定の結果をもたらす。しかし、早すぎる作用は行き過ぎを生む。ブドウ糖値が低くなり過ぎ、第二の危機が生まれるのである。
このため、膵臓のランゲルハンス島は分泌腺を閉鎖し、副腎皮質のある部分も同様に分泌を停止する。
化学作用のこの逆流を調整するために他の副腎のホルモンが造りださなければならず、この結果再びブドウ糖値は上昇することになる。
こうした全ての変化はわれわれの感情に反映する。ブドウ糖値が血液に吸収されている間、われわれの気分は「高揚」する。急激な気分の上昇である。
しかしながら、ブドウ糖値が低くなり過ぎると、この投げられたエネルギィの動揺は収まる。われわれは気力を失い、疲れを感じ、ブドウ糖値が再び上昇するまで動いたり考えたりするのさえ億劫に感じる。
われわれの貧弱な脳は疑惑や幻覚にとらわれやすい状態になる。われわれは苛立ち、全身の神経がピリピリすることもある。この第一に続く第二の厳しい危機も、結局、ブドウ糖の超過に起因している。
もし、このまま砂糖を摂り続けると、前の危機が終わらないうちに新たな危機が二倍となって始まることになる。こうして蓄積された危機は、ある日途方もなく大きなものとなる可能性がある。
こんな日が何年も続くと、しまいには副腎がやられてしまう。過重労働のためではなく、絶えず鞭打たれるために疲れ果ててしまうのだ。ホルモン製造機能は全体的に低下し、最も適量を分泌することが出来なくなる。バランスを失って機能障害を起こし、これが内分泌循環器系統全体に反映する。
すぐに脳は障害を起こし、あらぬ妄想や幻覚を告げるようなことにもなり、撃鉄を充分引かないうちに弾丸が飛び出すようにわれわれは早まったことを仕出かすようになる。こんなときにストレスが溜まると、それに対処するような健康な内分泌系統がもはやないので、われわれの体はメチャクチャに崩れてしまう。
日々の仕事の能率がだんだん落ちて行き、常に倦怠感に悩まされ、何も出来ない気持ちになる。しかし、全ての人が同じように蝕まれる訳ではない。副腎の強い人もいるし、故ケネディ大統領のように副腎の弱い人もいる。
砂糖濫用度によってシュガー・ブルースもまちまちとなる。だが、体は嘘をつかない。もし、あなたが砂糖を摂ったら、その報いを体に感じることになる。
今は亡き内分泌学者ジョン・W・ティンテラは断固として述べた。「気質を改良し、能率を高め、性格を改善するのは簡単である。その方法はサトウキビと砂糖大根から作られるあらゆる形の砂糖を避けることである」
砂糖黍のフレッシュ・ジュースと精糖は、双方とも不活性なカロリーという点ではそれ程違いはないが、前者は健康な輻射エネルギーを8500ユニット示すが、後者はゼロである。
どうして我々の食物は「強化され」たり、「栄養価を高められる」必要があるのだろうか。何故小麦は精製され、しかる後に栄養価を高められるのか。
それは小麦が精製される過程で多くの生命維持に必要な栄養素を剥奪されるからである。これが進歩の実体である。
真面目な酒愛飲家たちは、麦、麦芽、ホップで造られた純粋なビール以外は飲まないという信念であった。ビールやワインの醸造に砂糖を発酵促進剤として使用するこの技術はソフィスティケーションと呼ばれた。
当時、ビールをソフィスティケーションすると言うことは、粗悪な異物を加え、ビールを台無しにすることを意味していた。砂糖は自然の麦芽とホップにとって粗悪な異物だったのである。
これに対して晒し刑や引き回し刑が当時あった。かってのビールは、今日のような虚偽的時代の色と気泡と人工泡だけのビールより優れた飲み物であった。それは液体状のパンであり、基本的な食物であった。
子供に授乳しなければならない母親たちは朝食としてビールを飲んでいた。だから、ビールに砂糖を加える醸造者は民族の存続を脅かす者であった。つまり、人間の体と脳は砂糖を処理できないということである。人々はこのことを良く知っていたのだ。
砂糖を摂っていた人たち、これらの人びとは特に上流階級や権力者達であった。間違ったことはしていないと考えた者もいた。早晩、兆候が現れ、それがはっきりとした形をとり、警告となった。
彼らの体が何かを告げていたのである。金持ちの家の召使たちは、便器の中の尿が非常に甘い匂いを発するようになったことに気付き始めた。
東洋の賢者たちが書いてあるように、心と体は分離した二つのものではない。女呪術師、賢女、自然療法家たちもこのことを信じていた。しかし、砂糖がヨーロッパに普及するまでには、自然療法家は教会と国家の公然の敵とされ、たちまち迫害の対象とされた。
14世紀に、教会は「医学を学んだことのない女が不遜にも治療を行った場合、その女は魔女であり、死刑に処せられる」と宣言した。
【現代の日本も似通っている。現代医学だけが一般に公的健康保険適用の対象である。アメリカ、中国などは西洋医学以外の治療法を患者が選択できるという。日本の場合、高額なー保険がきかないのでー治療費を支払うことができる場合のみ自然療法は可能である。自然療法家は国家的視点では認知された治療者ではないのである】。
彼らは宇宙の秩序を研究し、彼らの生地の植物の種子、星、動物、鳥、蜂を研究し続けてきたのである。彼らの教師は自然と代々伝えられる伝統であり、聖職者たちによって解釈される聖書ではなかった。
全能の聖職者たちの手から零れ落ちた知識と歴史の全ては、自然療法家から自然療法家へと口伝された。シュガー・ブルースがどういうものなのかと理解していた人々は、地下に追いやられた。人間の体と脳は砂糖を処理できないという事実を告げる兆候と警告への彼らの説明も、彼らと共に地下へ追いやられた。
そして、これらの兆候と警告を再び見出すまでには3世紀が必要であった。結局、熱狂的なキリスト教宣教師たちは、十字架、国旗、角砂糖、コカ・コーラの自動販売機を世界中に広めることになるのである。
マクロビオテックの創始者、桜沢如一の「あなた方はみな三白だ」の砂糖に関する一章。
「西洋の医学と科学は、特にアメリカにおいて甚だしい、一人当たりの砂糖消費量の途方もない増加に、やっと警鐘を鳴らし始めたところです。彼らの研究や警鐘は何十年も前になされるべきものであったもので、今では遅すぎるのではないかと私は恐れています。東洋医学が昔から知っていたことを西洋医学もある日認めることになるだろう、と私は確信しております」。
「それは、砂糖が疑いなく人類史上最大の殺人者であるということであり、阿片や放射能の灰よりもずっと致命的なものであり、特に米を主食としている人びとにとってそうであるという事実です。砂糖は近代工業文明が極東やアフリカに投げ込んだ最大の罪悪であります」。
「子供たちにキャンディを与えたり売ったりする愚かな人々は、ある日、大変な償いをしなければいけないことを発見し、慄然とすることでしょう」。
今日、自然療法家たちは、様々な点で意見を異にするかも知れないが、一つの点で意見が一致する。それは、人体は精糖すなわち蔗糖を処理できないという点である。
われわれは砂糖を信じている
伝統的な東洋医学は精神と肉体は分離し得ないと常に主張していた。我々が病とか病気とか呼ぶものは、身体全体が均衡を失っていることの現われでしかない。再び調和を取り戻し完全な人間になるには、完全な食物を食べさえすればいいのである。
日本の伝統的な医者・薬剤師である石塚左玄―19世紀以来、日本が西洋科学および医学の多くの技術を取り入れる中で、かたくなに古来の伝統的方法を遵守したがゆえにー彼はこう呼ばれる(医者・反医者)は、西洋が精神病と呼ぶものは食養生法で治癒できる、という考えを弟子たちに授けた。
ヨーロッパとアメリカで講演、著作、教育活動に携わっていた桜沢如一(石塚の後継者)は次のように書いた。「癌は強壮な体質の人々がかかる極端に陰の病気ですが、精神分裂病は虚弱体質の人がかかる最も陰の病気です」。
東洋医学では、鍼術と同様に、すべては陰陽の無双原理から導き出される。砂糖は極端に陰の食物であり、赤肉は極端に陽の食物である。陰が過剰な砂糖は癌や精神分裂病と呼ばれるような陰の過剰による病気を生むのである。
「虚弱体質」と伝統的な東洋医学が定義するものは遺伝によって決定されるが、胎児が初めの何ヶ月かを子宮の中で生きる間に母親が摂取する食物によって、この体質は部分的に改められる。
頬に密着し、頬との境がはっきりしないような小さな耳たぶは、東洋人にとっては虚弱体質のしるしである。反対に、頬とははっきり分離している大きな耳たぶは、強壮な体質のしるしであり、健全な遺伝体質を受け継いだしるしである。
西洋の診断専門医たちは、頬とはっきり分離している大きな耳たぶは強い副腎のしるしであるとしており、この古代東洋の診断を確認している。
1940年代、ジョン・ティンテラは、「病的精神作用」すなわち”脳仰天作用”において内分泌システム(特に副腎)が極めて重大な働きをしている事実を再発見した。
副腎皮質機能低下症(充分な副腎皮質ホルモン分泌不能あるいは当ホルモン内のいろいろなホルモン間の不均衡)の治療中の二百例から、彼は、患者の主な訴えは砂糖を処理できない体を持つ人びとの訴えとしばしば重なり合うことを発見した。
例えば、疲労、神経の苛立ち、抑鬱、不安、甘いもの切望、アルコール処理能力、集中力欠如、アレルギー、低血圧。結局、シュガー・ブルースである。
ドーラントは精神分裂病は「しばしば青年期あるいは青年期直後に認められ」さらに破爪病、緊張病と関連して「思春期に入った直後に発病する」としている。これらの病気は思春期に発病し、悪化するように見えるが、患者の過去を厳密に調査して見ると、すでに誕生の時点、幼児期、幼稚園および小学校時代を通して病気の兆候が現れている場合が多い。しばしば学校関係者に少年非行や学業不成績を嘆かせる原因となっている。
ブドウ糖負荷試験を施せば、それは両親や医者への警告になるし、一般的な子供の感情的発展における極めて重大な不適応に対して行われる、子供の精神および家庭環境調査に、多大の時間と莫大な金を費やす必要がなくなるだろう。
拒絶症、活動過剰症、学業に対する根深い敵意などが結果に歴然と現れるのである。麻薬中毒、アルコロール中毒、精神分裂病に関するほとんど全ての議論では、これらの病気の犠牲者には一定の体質型というものは存在しないと主張されている。
ただ、唯一の共通点として、これらの全ての犠牲者は感情的に未熟である、というのがほぼ共通した意見である。ティンテラは画期的な医学論文をいくつか発表した。病状の軽減、緩和、治癒は「体全体が正常な機能を取り戻すことにかかっている」と彼は繰り返し強調した。
彼の第一の処方は食餌療法であった。「日常の飲食物の重要性は強調しても強調し過ぎるということはない」と繰り返し述べている。彼はあらゆる形の砂糖を徹底的に禁止した。
ポルトガルのエガス・モーニスは精神分裂病の治療にロボトミーを考案したためにノーベル賞を受賞したが、ティンティラの受賞は医学界のお偉方にとっては迷惑な話だったので、彼らはそれを妨害した。
しかしながら、精神分裂病の原因として砂糖をこの病気に密接に関連付けたティンティラの主張は、医学雑誌にだけは掲載された。しかし、医学界からは何の反応もなく、彼は無視された。専門の領域である内分泌に留まる限り、彼は大目に見られたのである。
アルコール中毒は砂糖によって酷使された副腎と関係があると彼が示唆した時でさえ、彼は放っておかれた。というのも、医者たちはアルコール中毒に関しては悪化させる以外になす術がないと勝手に決め込んでいたからである。
しかし、「アレルギーには、砂糖によって損傷された副腎による一つの種類しかないのに、アレルギーの種類をとやかく言うなんて馬鹿げている」とティンティラが一般雑誌に思い切って発表してしまった時には、もはや黙って見過ごすわけにはいかなかった。
ティンティラは1969年に57歳という若さでこの世を去ったが、彼が死んでくれたお陰で、医者たちは、遺伝学と食餌療法の単純な東洋医学原理である陰陽理論と同様、現実離れしているとかって見なされていた彼の発見を受け入れやすくなった。
今日では、ティンテラが何年も前に表明したことを世界中の医者たちが繰り返し述べている。何人といえども、患者の砂糖処理能力の有無を調べるブドウ糖負荷試験を試みぬ限り、いかなる場所においても精神医学治療と呼ばれる治療を始めてはならない。
いわゆる予防医学はさらに先まで進み、副腎は元来強壮だから砂糖を処理できると考えている人びとに対して、副腎が疲れきったという信号を出すまでなぜ待つ必要があるのか、と警告を発している。
さて、あなたも今手にしている炭酸飲料を手始めに、すべての形の砂糖をやめ、無用な心配を取り除こうではないか。
蜂に罪を負わせろ
トマス・ウィリスは(解剖学者、医者、英国学士院初代会員の一人、英国内科学学士院名誉会員)砂糖と壊血病の関係を、ビタミンCが発見される何世紀も前に直感的に見抜いていた。
砂糖黍や砂糖大根が精製されると、ビタミンCなどの全てのビタミンは失われ、捨て去られる。一方、生の果物や野菜に含まれる自然糖分は体にビタミンCを供給する。
17世紀と18世紀における、フランスの生果物とイギリスの砂糖入りプディングという英仏のデザートの違いは、壊血病に関して歴然たる結果をもたらした。
【今の果物は競って糖分含有を誇示しているのは問題である。果物は決して野菜の代わりにはならない】。
肺結核と現在呼ばれる細菌が原因とされる肺炎について見ると、砂糖を多く含む食物を摂ると、細菌の活動に適した状態を体中に作りやすい、ということが確かめられている。肺結核による死者は今から300年まえの1700年代に急激に増加したが、この増加は特にイギリスにおいて著しかった。
村本登によれば、製糖工場の労働者が最も高い罹患率を示した。日本では、安価で豊富な砂糖の供給地を台湾に見出した1910年に、肺結核罹患率は急激に上昇した。
「臨床講義あるいは食餌療法」は1633年に出版された。著者は医術博士のジェームス・ハートである。自然療法家であった彼は、医者は新しい病気に己の名を冠して名声を得ようとするよりは、食餌療法と健康に関心を持つ導き手となるべきである、と信じた。
【現代では栄養学が何も発言しないのが異常なくらいにおかしい。その代わりに専門外の医者の発言は多いが、彼らの医学カリキュラムでは栄養学は殆んどゼロと言われている。栄養学者が何を遠慮しているのか知らないが、医師もあれだけのエリートなのでその資源を無駄にしないでカリキュラムにしっかり組むべきだ、そして病気にならないように大衆を啓蒙するべきと思う】。
17世紀の砂糖に対する彼の考えは、非常に古風なものであったので、実に正しいものであった。
「砂糖それ自体には排泄促進作用があるが、大量に摂取される場合は身体に危険な効果を顕す。即ち甘菓子、砂糖菓子の類を過度に摂取せる場合、血液を熱し、種種の障害、悪態症(悪液質)、肺病を生み、歯を腐朽せしめ黒ずませ、その上多くの場合、むかつくような悪臭を口腔より放たしむ。従って特に青少年に砂糖を過度に摂らぬように注意せしむるべし」。
「最も貴重な医学文献の一つ」とされる『エーベルス・パピルス』が1872年にエジプトのルクソールで発見された時、「多尿症を駆逐する薬」の処方が数多くなされていた事実が伝えられた。
この症状は糖尿病の一症状に過ぎないにも係わらず、医学史家たちは飛躍を行い、糖尿病と呼ばれるものは優に3000年以上も前から存在していたと結論した。それは今日の精糖を無罪放免する恰好の口実のように思える。
そうでないと誰が言えようか。エジプト人は蔗糖を精製しなかった。だが、ナツメヤシから採れる自然糖はもちろん、蜂蜜は沢山あった。生パンをナツメヤシや蜂蜜で甘くし、菓子が作られた。甘みが加えられたこの菓子は、今日のバクラバに似ている。
これを食べることの出来た上流階級の大食漢たちは、ナツメヤシ糖と蜂蜜を摂り過ぎたかもしれない。しかし、ナツメヤシ糖も蜂蜜も完全食物である。いくら食べても病気にはならない。
それに、何千年もの間、熱帯地方以外では誰一人として、このナツメヤシ糖に出会うものはいなかった。
南アフリカ共和国の糖尿病専門医であるG・D・キャンベル博士は次のように述べた。「ヒポクラテスがなぜ糖尿病の症例を一つも記述してないのか、その理由を説明するのは難しい」デンマークやスウェーデンの砂糖消費記録を見ると砂糖消費量と糖尿病、癌は正比例している。
1880年代からインシュリン抽出方法が発見されるまでの数十年間に、糖尿病患者は実に馬鹿馬鹿しい様々な責め苦を受けて来た。絶食から始まり、脂肪の大量摂取、重曹の注射と進み、穀物類の全面禁止へと走る。
化学者たちは穀物を間違って炭水化物と分類していたのである。
1924年、インシュリン発見にノーベル賞が与えられた一年後、一人の医学教授がインシュリン分泌減少症に相拮抗する症状を発見した。
インシュリン発見直後にこの薬を試みていた医者や患者が、投与量の多少を間違えるのは避けられないことであった。過剰投与は後にインシュリン・ショックとよばれるようになる症状を作り出した。
アラバマ大学のシャール・ハリス博士は、糖尿病患者でもなくインシュリン投与を受けたこともない人々に、インシュリン・ショックの症状が認められることに気付き始めた。これらの人々は血液中のブドウ糖値が通常より低いと診断されたのだ。
糖尿病患者の場合はブドウ糖値は反対に高過ぎるのである。同年、ハリスはこの発見を公表し、血液中の低ブドウ糖値状態はインシュリン分泌過剰症の症状であると宣言した。
この患者たちは、冠状動脈血栓症、他の心臓病、脳腫瘍、癲癇、胆嚢病、盲腸炎、ヒステリー、喘息、アレルギー、潰瘍、アルコール中毒、および様々な精神障害として治療されてきたのである。
しかしながら、ノーベル賞はハリスには与えられなかった。病弊体制にとって、彼の発見は利益ではなく困惑であったのだ。
インシュリン分泌過剰症あるいは低血糖に対して彼が提案した治療法は、包装され、壜に詰められて薬屋の店頭で売られたり、巨額な商いを約束する事業として薬品産業に認可されるような魅惑的な新特効薬ではなかったからである。
この治療法は、非常に単純なもので、それから利益を得ることは誰一人として出来ないし、医者でさえも不可能であることをハリスは指摘した。
その治療法は、体の自己管理であったのだ。低血糖の患者は精糖、キャンディ、コーヒー、清涼飲料水をやめる覚悟をしなければならない。これらのものが病気を起こしたからである。
【飲み物でカロリーを摂ってはいけない。水や日本人が飲む伝統的なお茶は問題ない。緑茶には砂糖を入れず、紅茶、コーヒーに砂糖やミルクを入れる人は考え直した方が良い。また、生一本で飲むことはその物質の純粋な味を嗜むことになる。高級な酒などは典型で、決して混ぜ物にして自分で「調合」しない】。
医者が彼らに教唆できるのは、ただ単に、してはいけないことだけである。
当然ながら、医学界はハリスに猛然と攻撃を加えた。彼の発見は攻撃されるか、さもなければ無視された。
もし彼の発見が外部に漏洩するようなことがあれば、それは外科医や精神分析医や他の専門医たちに不都合な事態を引き起こしかねなかったのだ。アメリカ医師会がハリスに賞を授与するまでには、実に25年の歳月が必要であった。【彼らにとってコーヒーは砂糖を入れるのが普通の飲み方】。【最近話題になる癌が駆虫薬で完治するというのも「不都合な事態」なので広まらないのかも知れない】。
1929年にインシュリン発見者フレデリック・バンティングは、インシュリンは治療薬ではなく一時的緩和剤にしか過ぎない、糖尿病の予防方法は「危険な」砂糖の大量摂取をやめることである、という意見を表明した。
そして、彼は次のように警告した。「アメリカでは、糖尿病罹患率は一人当たりの砂糖消費量に比例して増加してきた。天然の砂糖黍を加熱、再結晶化する過程で、何らかの変化が起こり、精製品は危険な食料品となる」。
インシュリンは糖尿病患者の死を遅らせることは出来るが、それ以上のことは出来ない、という事実をイギリスの統計は明らかにしている。
アメリカの統計によれば、糖尿病罹患率は第一次世界大戦中(砂糖は配給制であった)に激減した。この統計は、また、軍役中(軍隊では市民の手に入らない砂糖が兵隊に供給された)の若者たちの糖尿病罹患率が、第一次世界大戦から第二次世界大戦にかけて着実に伸びたことを示している。
精糖が日本に伝えられたのは、アメリカ独立戦争後にこの地を訪れたキリスト教宣教師たちによってである。初め、日本人は、アラブ人やペルシャ人が数世紀前に行っていたように、精糖を薬として使用した。
当時、砂糖は輸入売薬として重税が課された。その後、1906年までに、日本の砂糖黍栽培面積は45000エーカーを数えた。ちなみに当時の米の耕作面積は700万エーカーである。
非常に興味深いのは、1905年の日露戦争において、兵隊はそれぞれ三日分の乾飯を携帯していたのである。そして、それには塩漬けの魚、乾燥海苔、梅干が付け加えられていた。
ロシアに勝利をおさめた後、多くの日本人は次第に古来の伝統を放棄し、西洋の医学、食生活、テクノロジー、宗教などの考え方を好んで受け入れるようになった。日本人の食物の中に砂糖が次第に入り込み、その結果、西洋の病気が開花し始めた。
桜沢の陰陽論からの糖尿病の説明は食物を摂取すると、消化の過程で食物はブドウ糖(陰の果糖)に変化する。このブドウ糖が血液で膵臓に運ばれると、膵臓はブドウ糖値の高まりに刺激され、インシュリン(陽)を分泌する。
インシュリンは血液で肝臓に運ばれ、そこで過剰なブドウ糖をグリコーゲン(陽の多糖)に変え、その肝臓への沈着を促す。
一方、血液中のブドウ糖が減少すると、副腎皮質ホルモンと脳下垂体のホルモン(ACTH=副腎皮質刺激ホルモン=陰)の分泌が促され、これらのホルモンは肝臓に蓄えられたグリコーゲンをブドウ糖に変え、血液中のぶどう糖値を上昇させる。
健康体では、血液中のブドウ糖値はインシュリン(陽)と副腎皮質ホルモンおよび副腎皮質刺激ホルモン(陰)の相互作用で維持される。
しかしながら、ホルモン分泌が適切に維持されないと、血糖値の揺れ幅はかなり大きくなる。
もし膵臓からインシュリンが過剰に分泌されると、ブドウ糖が過度にグリコーゲンに変化してしまい、血糖値は低下し、そのまま低すぎる状態に保たれる。
インシュリン分泌過剰症とか低血糖症と呼ばれるこの状態は、シュガー・ブルースの第一段階である。この膵臓への刺激過剰は、精糖、蜂蜜、果物などの単糖類の大量摂取、また間接的に薬剤(マリファナを含む)によって引き起こされる。
【マクロビオテック「原理主義者」はあらゆる甘いものはNG、蜂蜜や黒糖を含む】。
反対に、インシュリン分泌が十分でない場合、肝臓は過剰なブドウ糖の全てをグリコーゲンに変化させ得ない。この状態が糖尿病である。
膵臓が単糖類、蜂蜜、果物、薬剤などの強い陰性の食物を中和するインシュリンの分泌に疲れたり、その分泌活動によって完全に消耗してしまった場合には、血液内に糖過剰状態が打ち立てられる。
血糖値は上昇し、高い状態に保たれる。砂糖、蜂蜜、果物の過剰摂取による膵臓への過剰刺激は、まずインシュリン分泌過剰症、低血糖症を生ぜしめ、次に第二段階である糖尿病あるいは高血糖症を生ぜしめる。
シュガー・ブルースの第一段階である低血糖症を発見する技術は、二十世紀が始まるまで開発されなかった。
桜沢によれば、糖尿病は陰であるから、その治療は陽でなければならず、陰や陽に偏らない調和のとれた食餌療法がその治療法となる。お勧めの食箋は、玄米、北海道カボチャ、などである。
当然ながら、西洋医学のお偉方たちは法螺吹き、偽医者として桜沢を非難した。ハーバード大学の学位もなく鍼術のような珍奇なものを施しているという事実だけで、ある特定の世界では完全に信用を失墜するに十分な理由となった。
その上、西洋医学が間違って、高炭水化物の食物と決めつけているものを、桜沢が高血糖症すなわち糖尿病に対する食箋としていることは、ある人々によれば全く気狂いじみていることであった。
というのも、炭水化物が消化過程で単糖に分解し、血糖値を危険な状態にまで上昇させる、ということは誰もが知っている常識であったからだ。
桜沢は砂糖産業とその継子であるインシュリン産業に対する脅威であった。
彼はそれをむしろ光栄であると考えた。1960年代に彼は次のように書いている。
「インシュリン発見から既に30年が経過したというのに、西洋医学の医者は誰一人として糖尿病を治癒できないでいます。医者たちは、インシュリンを勧め続け、死ぬまでインシュリンという松葉杖を持ち歩かねばならない状態に糖尿病患者たちを陥れてきました」。
「しかし、インシュリン発見から25年後に、糖尿病治療薬としてのインシュリン無効力がやっと公認されました。その間、アメリカのみならず世界中の何百万という糖尿病患者が、この無効力の薬のために莫大な金を払ってきたのです」。
「糖尿病患者は今なお増え続けています。ひとたび糖尿病患者がインシュリンを用い始めると、彼らは死ぬまで医者や製薬会社の懐を温めることになります」。
桜沢は、炭水化物と西洋が呼ぶものを排除した食餌療法は糖尿病患者にとって危険であると主張し、自説を固守した。彼は、西洋の栄養学者に、彼らが機械的に炭水化物と分類している食物の質を区別するよう嘆願した。
精製されてない完全な穀物類を一つの炭水化物源として区別し、それらを典型的アメリカ流食生活に見られる平均的な炭水化物である馬鈴薯、精白パン、精製加工穀物、精製されたテーブル・シュガーなどと一様に取り扱わないでほしい、と桜沢は彼らに懇願したのである。
【今でもこれらを混同している専門家がいる。無知なのか故意なのか、これは塩についても同様である化学塩と自然塩は違うが研究する専門家が入口でこの区別をしない場合がある】。【人間の手で自然から離れ「白くされた」ものは避けること】。
病弊体制が予防医学と呼ぶものは、高価な検査を受けに人間ドックや診療所に定期的に通うことである。このような予防医学によって、癌や心臓病に怯える人々から多額の金を集めることができるのである。
しかし、シュガー・ブルース、低血糖症、糖尿病前期を予防する上で、医学が出し得る唯一の有効な答えは、予防栄養学なのだ。
砂糖摂取をやめること、これに尽きる。シュガー・ブルースの諸症状、低血糖症(発汗、不安、心拍急速、頭痛、飢餓感、一時的な脱力感、発作やこん睡状態が伴う)、糖尿病前期状態、こうした症状に陥る前に、副腎が破壊される前に、砂糖をやめることだ。
30年に亙って、糖尿病患者に対する低炭水化物の食餌療法という宗教を事実上造り続けてきた現代医学は、別のもう一つの発見によって元に戻ることになった。
【マクロビオテックや西式健康法の甲田光雄先生なども玄米やカボチャなど穀物菜食で糖尿病を治している。カロリーは1100である。西洋医学の1600では食べ過ぎと書いている】。
②に続く