シニアの旅行回数増加による経済効果は大きい「トラベル・ディバイド」の考察⑥
前回は「旅行回数が増えると幸せになり、認知症が減少し、社会的コストが減る」という点についてコメントしました。今回はシニア(高齢者)層の旅行回数の増加が生む可能性のある大きな経済効果について分析します。
まず、国内宿泊旅行について分析します。コロナ前の2019年の国内宿泊旅行の平均回数は全体で1.36回でしたが、70歳代では1.16回、80歳代以上では0.64回に留まりました(観光庁「2019年旅行・観光消費動向調査 年報」)。ここにシニア(高齢者)層の「トラベル・ディバイド」が顕著に表れています。
70歳代以上のシニア(高齢者)層の旅行回数が増加する場合のシナリオを分析しました。70歳代以上のシニア(高齢者)層の平均旅行単価57,973円を基に、70歳代以上の旅行回数が10%増加すると1,502億円、20%増加すると3,003億円、30%増加すると4,505億円という莫大な経済効果が見込まれます。これは70歳代以上のシニア層の人口比率が23%と高いためです(総務省「2022年10月時点の人口推計」)。国内宿泊旅行全体の消費額は2019年で17兆1,560億円という巨大な市場ですが、数千億円の経済効果は非常に大きいと言えるでしょう。
また、シニア層は鉄道好きが多いため、シニア層の旅行回数増加によって、赤字に苦しむ地方路線の乗客増につながる可能性もあります(Sirabee編集部)。地方自治体こそシニア層の旅行回数増加により積極的に取り組むべきではないでしょうか。
シニア層の旅行回数増加による旅行業界への直接的な効果とともに、前回分析した認知症予防効果による社会的コストの減少を考慮すると、『お金も時間もある』シニア層の旅行回数増加に向けた各種取り組みが必要でしょう。「トラベル・ディバイド」の考察③で私たちが指摘した『旅行回数減少の理由は「重い荷物」である可能性が高い』という点から、シニア層が「身軽な旅行」を実現できる体制づくりが必要だと言えます。
次回は、シニア層のインバウンド客が旅行回数を増やした場合の経済効果について分析します。
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