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【事例】介護が必要になっても自分らしく挑戦を続けられる場「デイサービスSoda」

Client:合同会社28 様
Project Year: 2023〜2024

岡山県総社市の空き物件となっていた作業場をリノベーションした、デイサービス「Soda」の立ち上げに伴走しました。

「受身的に介護されるだけではなく自分の時間を過ごせること」および「子どもからお年寄りまで気軽に立ち寄れる場」を目指し、コンセプトの立案から体験・空間のデザイン、資金調達の一部、広報活動までトータルで支援しました。

Points
① 
次世代の介護のスタイルを実現するためのデザイン戦略
② 従来のデイサービスと異なる個人の思いを起点にした体験
③地域住民と自然と交流が生まれる場のデザイン

プロジェクトの背景

高齢者人口の増加やライフスタイルの変化に伴い、従来の介護のあり方が問い直されています。特に、通所介護(デイサービス)では、人材不足やリスク管理の観点から、標準化された空間での受け身な活動になりやすい傾向があります。

クライアントである合同会社28のみなさまは、この状況に対して個別性を重視したデイサービスをつくりたいという思いをもっていました。スタートアップの限られた資金の中で、その思いを実現するためのコンセプトや体験の在り方を検討するところからこのプロジェクトが始まりました。

アプローチ

本プロジェクトでは、サービスの企画段階から伴走に携わり、ヒアリングや市場リサーチをふまえたコンセプトづくりから、空間やツールのデザイン、開業前の広報活動支援までを実施しました。

従来のデイサービスの課題を「空間や機能としての外的・内的なつながりが乏しく閉鎖的であること」というハード面と「活動内容に個別性を生みづらいこと」というソフト面の2つの観点から再解釈し、限られた人的・金銭的リソースでその両方を解決できるアプローチを模索しました。

次世代の介護のあたり前をつくるコンセプトデザイン
「”やってみよう!”と前向きになれる場にしたい」というクライアントの思いをもとに、まずは軸となるコンセプトをデザインしました。ヒアリングやマーケットリサーチを重ねる中で、従来のデイサービスは、運営の人手不足や安全性に重きが置かれるあまり、標準化された空間での受け身的な集団活動が多いことがわかりました。

そこで「介護が必要になってもやりたいことに挑戦できる場」というコンセプトを企画しました。運営スタッフだけではなく地域住民も巻き込みながら、利用者が自発的に活動をしたくなるような体験と空間のデザイン、ビジネスモデルの整理、ステークホルダーに効果的に認知してもらうためのPR戦略立案を行いました。

“自発的な活動”を自然と後押しする体験と空間のデザイン
利用者の自発性を高めるためには、標準化された空間ではなくリラックスして過ごせるような空間をベースに多様な活動が生まれやすくなるための環境を設える必要があると考えました。

そこで、既存の構造物を効果的に活かしながら、木の素材の温かさに合う落ち着きのあるカラーを取り入れるなど、従来の合理性を重視したデイサービスとは異なる自宅のような内装デザインを提案しました。

また、活動の内容によって空間のレイアウトを分けることで、活動するだけではなく一人になって休憩できるスペースを設け、利用者の心身の状況に合わせて自分らしく過ごすことができる間取りを提案しました。

メインホールと繋がった出入り口となる土間には、地域に開けた本屋・駄菓子屋を併設。利用者以外の地域の方が気軽に立ち寄り、利用者を含めた偶発的な交流が日常的に起こる新しいデイサービスのあり方を目指しています。

施設内で決まりきった日課をこなすのではなく、社会とつながり、日々小さくとも新しい出会いや発見の機会を創出し続けることで、利用者の挑戦への刺激や活力になるのではと考えています。

外観について、当初クライアントは「白い外壁に塗り直したい」という意向でしたが、地域住民にとっても日常的に立ち寄り長く親しんでいただきたいという思いから、正面は既存の古いタイルを残し、町の景観に溶け込み地域と一体感のある色を提案し採用いただきました。

地域住民への認知を広げるPR企画とツールデザイン
当初の改修工事プランを実現するためには金融機関からの融資だけでは不十分だったため、クラウドファンディングの実施をサポートしました。単に資金集めで終わるのではなく、オープン前にSoda立ち上げの思いや特徴が効果的に伝わるよう公開ページの制作ディレクションおよび広報ツールのデザインを実施しました。結果、1ヶ月半で215名の方から478万円もの支援をいただき無事、目標達成となりました。

利用者以外の地域の方にとってもSodaが「地域に開かれたデイサービス」として認知してもらえることを目指し、デイサービスのパンフレットの他、本屋・駄菓子屋スペースのロゴデザインを含むショップカードなどのツールも制作。オープニング直前には地域にひらいたイベントを企画・開催し多くの方にご来場いただきました。

アプローチの効果

オープン前からの広報活動や口コミによって、Sodaはオープン初月からたくさんの方に登録していただくことができました。デイサービスでの活動では、ものづくりや料理などの趣味を楽しみながら、利用者の前向きな気持ちを引き出し、自宅でもその準備を楽しむ方が増えています。

また、併設の本屋・駄菓子屋、オープニングイベント来場のきっかけから地域の子どもたちがSodaのことを知って、時には利用者との活動につながることもあります。

Sodaは地域に開かれた居場所として多様な人が関わりやすい環境をつくり出しています。

プロジェクト概要
Project Year: 2023 - 2024
Client: 合同会社28
Project Team
・企画/デザイン/ブランディング/PR:NINI
・建築改修:藤野彰弘(アース・ゲイン)
・デザイン協力:内田勇希 (fractal)